6 ピンチ!
だいたい私は式神でも猫でもないし、あやかしに戻ったってなに⁉
「私はあやかしと人間のハイブリッド生物よ! だからアンタなんかと仲良くはしないの!」
全身の毛を逆立てて言い返す私に、ぽっちゃり猫が「なに?」と驚いてから、唐突に「あ!」と叫んだ。
「もしかしてオマエか!?
噂に聞いた、石動のガキの『誓約』の相手っていうのは!?」
「なんでアンタが、『誓約』を知っているのよ」
ぽっちゃり猫の言葉に、私はそう問い詰める。
なになに、この話ってばあやかしにも広まっているの?
自分のことを知らない連中が噂しているのって、結構気味悪いんですけど!
今度雅貴に、そのあたりのところを聞いとかなきゃ!
こんな風に私がプンスカしている一方で、ぽっちゃり猫はなにがおかしいのか、お腹を抱えて笑っている。
「こりゃあケッサクだ、アイツはこんな役に立たなそうな猫なんかと『誓約』しやがったのか!」
だから、私は猫じゃなくってハイブリッドだってば!
ぽっちゃり猫との会話にイライラしてきた私だったけど、向こうは私との会話に飽きてきたみたい。
「まあ、なんでもいいか。
邪魔するんならやっちまえば」
ぽっちゃり猫がそう言って、尻尾をピーンと伸ばしたんだけど、その背中がムクッと盛り上がったかと思ったら、なんと背中に羽が生えていた。
ふぁ!? あの猫、羽が生えたよ!?
でも羽小さっ!?
ぽっちゃり猫の巨体に、明らかに羽のサイズが合ってない。
飛ぶのもなんか重たそう。
ねぇ、そのサイズ感で大丈夫?
私が思わず心配しちゃったのに、あっちも気付いたみたいで。
「む? オマエ、今なんかオレサマのことをバカにしただろう?」
声に出さなくても、こういうのは伝わるものらしい。
ぽっちゃり猫はイラっとしたみたいで、全身の毛をブワッと膨らませて威嚇体勢になる。
「バカにするヤツは、こうだ!」
ぽっちゃり猫が叫んだ直後。
バリッ!
「うきゃっ!?」
大きな音がして、目の前の地面に雷が落ちた!?
え、今空は晴れていて、雷雲なんてないよ!?
でもこういうの、前に似たようなことがあった覚えがある。
そう、雅貴のお屋敷のあの神社っぽい建物で床が爆発した時で、あれは雅貴の妖術だった。
ってことはもしかしてこのぽっちゃり猫、妖術を使うの!?
そう言えば、自分であやかしがどうのとか言ってたじゃんか!
そんなことに今更気付いちゃったよ!?
ヤバいよ、私ってば悪戯しているのはてっきり普通の猫のつもりでいたから、そのあたりを全く考えていなかった。
けど普通の猫じゃないってことは、そういう可能性もあったんだ!
でも、だからってなんだ!
こちとら猫歴もそこそこ長いんだからね!
あのハトに比べれば、コイツの怖さはまだまだよ!
「ウニャー!!」
再び私は爪を出してぽっちゃり猫に飛び掛かった。
アイツ、飛ぶのが重たそうだから私のジャンプで届くんだよね。
そして私は爪を一閃! あ、爪がちっさい羽に引っかかった!
羽が傷付いて飛べたくなったのか、ぽっちゃり猫は墜落して、ドデン、と地面に尻もちをつく。
「こんのぉ、やりやがったなぁ~!?」
「やりやがったはこっちのセリフだい!
亜希の苦労とか、アンタに悪戯された人たちの大変さを思い知れぇ!」
私はそう叫んで、ぽっちゃり猫にまとわりついて爪でガリガリ、牙でガブガブして攻撃を繰り出す。
空を飛べないぽっちゃり猫は、ただのぽっちゃり猫でしかない。
しかも私がまとわりついているから、あの雷攻撃も繰り出せないだろうって計算よ!
フフン、私頭イイ!
こうなると、単なる猫同士のケンカである。
しかも、私が優勢!
自分が負けていることが、ぽっちゃり猫は悔しいようで。
「ちくしょう、こうなったら諸共だぁ!」
そう喚いたぽっちゃり猫が、絡まり合ってケンカしている私たちの上に大きな雷のバチバチを出現させた!
うげっ、これ自爆攻撃ってヤツ!?
私は慌ててその場から逃げようとするけど、ぽっちゃり猫ががっちり組み付いて放さない。
は~な~し~な~さ~い~よ~!
私はアンタの自滅に付き合うシュミはないんだから!
私とぽっちゃり猫が離れるのとくっつくのの攻防で「グギギィ!」ってやっている内にも、雷がバチバチを増していく。
うわぁ、当たっちゃう!?
どうしよう、雷のせいで自慢の毛並みがパンチパーマみたいになったら⁉
そんなことが頭の中をよぎった時。
パァン!
空中で雷がはじけた。
「うぎゃん!?」
私はその大きな音に、反射的に身体をすくませる。
「なんだ、今の?」
そうすると何故か、ぽっちゃり猫の方まで驚いていた。
ちょっと、なんでアンタまで驚いているのよ?
私とぽっちゃり猫の間に、微妙な空気が流れていると。
「ここでなにをしている?」
そこに、ここのところですっかり聞きなれた声がした。
って、ちょっと離れたあそこにいるの雅貴だよ!




