5 パトロール中につき
それから数日経った。
私は毎日ご近所パトロールをしていて、おかげで夜がもっと忙しくなったわ。
雅貴のお屋敷訪問を早々に切り上げて、猫が潜んでいそうなところを探っているんだけど、今のところそれっぽい猫っていないなぁ。
だいたいさぁ、そんなハチャメチャをする猫って、どんな猫だろう?
亜希が言うには、お店はちゃんと戸締りしていて、その猫が一体どこから入ったのか分からないんだって。
私としては、よほど狭いすき間でも通り抜けられる小さい猫かも、とか考えているんだよね。
でもさ、私ってこの辺りの猫たちの間では結構な古株で、大体の猫の顔は覚えているんだけど。
その中でそんな暴れん坊な猫って、大きくても小さくても、心当たりがないんだよねぇ。
そんなわけで、いまだに怪しい猫を発見できていない私なのだ。
むぅ~、こういう時こそ、なんか便利そうな妖術とかで一発で探し当てたりできるんじゃないの?
雅貴、早く巻物を読破してくれないかなぁ?
そんな風に考えながら、私はいかにも猫が好きそうな茂みとかに頭を突っ込んでいく。
それを繰り返していると、普段あまり通らない道へ出た。
「あれ、こんなところにも茂みがあったんだ」
私はどうやら目につきにくいそこの茂みを見落としていたみたいで、早速調査だとズボッと頭を突っ込む。
そうすると茂みの向こうにぽっかりと場所が空いていて、そこにちょっと……いやかなり太めな黒猫が寝そべっているのが見えた。
うん? あんなぽっちゃりな黒猫、知らないぞ?
これはようやく、怪しそうな猫を発見したかも!
私はやっと見つけた怪しい猫を、まずは観察しようと耳を澄ませる。
そうするとそのおぽっちゃり猫は、クワァ! と大きな口を開けてあくびをした。
「今日はなにしてやろうかなぁ、でもそろそろ飽きてきたなぁ」
え、喋った!? 普通の猫じゃないの!?
声は子どもみたいだけど、男の子か女の子かわからない感じ。
でもでも、普通の猫じゃないってことはきっと犯人、じゃない犯猫はアイツだ!
私が茂みからそのぽっちゃり猫の前に跳び出した。
「コラぁ! 亜希のウチのお店をメチャメチャにしたのは、お前かぁ!?」
「なんだぁ?」
私が怒鳴りつけると、その猫は驚いたようにキョトンとしているけど、可愛い顔をしてごまかそうったって、そうはいかないんだから!
「よくもあちらこちらをメチャメチャにしてくれたわね!?
みんなに代わってお仕置きしてやるんだから!」
私が地面をタシタシと叩きながら怒鳴りつけるのに、その猫はしかしちっとも慌てたりしない。
「なんだなんだ、このメス猫は?
石動のナワバリを荒らしてやろうと思っていたら、変なのが釣れたぜ」
なんか今「ナワバリを荒らす」とか言ったよね?
ダメじゃん、そんなことしたら!
猫にとってナワバリはデリケートな問題なんだからね!
あ、でもコイツ、石動って言ったよ?
「雅貴を知っているの?」
私が尋ねると、ぽっちゃり猫がムクリと身体を起こす。
「なんだオマエ、石動の式神か?
けど、気配がちぃっと違うか」
ぽっちゃり猫はブツブツ言っているけど、式神ってアレだよね、漫画で陰陽師がお使い係とかをさせているヤツ。
って誰がお使い係よ、失礼しちゃう!
「私、式神じゃないもん!」
私が尻尾をブンブン振りながら叫ぶのに、ぽっちゃり猫は動じない。
「じゃあ、捨てられ式神か。
オマエ役立たずっぽいもんな」
「フン」と鼻を鳴らすぽっちゃり猫め、し~つ~れ~い~!
私に失礼!
誰が捨てられたお使い係だ!?
「ゆるさ~ん!」
私はぽっちゃり猫に飛び掛かる!
私の猫歴は長いんだから、猫とのケンカだってドンと来いよ!
ここいらのボス猫ともナワバリ争いしたことがあるんだから!
もちろん勝ったわ、だいぶ苦戦したけどね!
爪をきらめかせて向かっていく私に、ぽっちゃり猫は「うるさいヤツだなぁ」と嫌そうな顔をすると、そのおデブっぷりからは予想外に素早い動きで横へ飛び退く。
くうっ、避けるなんてナマイキなぽっちゃり猫め!
怒っている私に、ぽっちゃり猫が不思議そうに言ってくる。
「オマエ、なにムキになっているんだぁ?
捨てられ式神なら、ただのあやかしに戻ったんだろう?
だったら仲間同士、仲良く楽しくやろうぜ?」
仲良くとか、なんか余裕そうじゃんか!
ムキー!




