おじさん令嬢
彼女は悩んでいるようでありギュッと口を結んだ。いきなり自分の事を話せる状態にはならないかと思い私は自分の話をすることにした。もしかしらこの行動が今後自分の不利益になるかもしれないとは一瞬思った。しかし、この令嬢を放置はしたくない。
「私はルカ第二王子としての記憶もあり、前世の記憶もあります。前世は35歳でSEをしていた女です」
オリビア嬢が突然、身を乗り出して「えっ」と大きな声を上げた。それにはルイもビクリと身体を動かした。私も続けようと思っていた言葉が出てこないほど面喰ってしまった。いきなりどうしたというのであろうか。
「SEってシステムエンジニア?そして、性別変わってしまったですか」
彼女の質問に頷くと、「そうですか」と安堵したように表情がやわらいだ。そして自分の状況を教えてほしいと言った。私の質問に答えるならば構わないと伝えると快く承諾してくれた。彼女にはオリビア・クラークという名前と令嬢としての地位をつたえた。私が城に連れてきてしまったことでもう一つ付いてしまったものがあるがそれはまだ伝えないことにした。
確実に混乱する。
オリビア嬢は私の説明を真剣に頷いて聞いていた。続けて彼女自身の事を聞いた。
「俺は45歳の会社員で男です」
おじさん‼
男であることは想定していたが年上は想定外だった。頼りない感じから学生かと思っていた。おじさんに質問をした。どうやらオリビア嬢として知識や記憶は全くないようである。私と違い全くの別人となってしまったようだ。
「あの、俺はこれからどうすればいいのでしょうか」
おずおずと聞いてくるおじさんにこの漫画のタイトルを伝えた。知っているならば話が早いと思ったが目を点にして首をかしげている。どうやらその漫画を知らないらしい。確かに普通も中年おじさんが読む漫画ではないため仕方ない部分もある。
仕方がないため、漫画の話を伝えた。ついでにオリビア嬢が死んでしまう話も付け加える。そうすることでこの世界の生きる目的ができるかと思った。おじさん自身が考えて行動するならそれでもいいかと思った。
しかし、おじさんは私が思わぬ反応をした。
「死ぬ運命ならそれでも構いません」
まさがの諦めモード‼
おじさんは床を見つめている。その姿は本来の勝気のオリビア嬢とは真逆であり、哀愁が漂っている。
おじさんの過去は重いのかもしれないと思いながらルイの方をを見ると手を口に当てて何やら考え混んでいる。私としてはクラーク卿と貧困地域と繋がっている可能性があるため、以前より扱いやすそうであるオリビア嬢を手放すは勿体無いと思うがルイはどう感じているのか。
「わかりました。しばらくはこの部屋を提供しますので今後の相談はまた明日にしましょうか」
今回分かった事を一度ルイの打ち合わせをしたいと思いルイの方を見ると頷いているので同じ気持ちであるのであろう。おじさんに挨拶をして椅子を立ち上がろうとした時、彼は小さな声を上げて。私はそれが聞き取れずにもう一度確認する。
ルイはその声が届かなかったようで首をかしげている。
確かにおじさんという事は共感できなくもないが私自身があまり重要視していなかった。
どうしたものか。
おじさんには「検討する」とだけ伝えて部屋をでた。




