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魔法陣

 宰相らにお願いを伝えた後、図書室に向かった。図書室に着くと安心してその場に座り込む。その場は本当に緊張した。以前はよく行っていた場所であるが母がいなくなってからほとんど近づきていない。なんとか思いは伝えられたのでよしとする。


 私の意見を聞いて法務大臣のアーサー以外は驚いていたようである。


 恐らく摂政の叔父に話を持っていくのだろう。叔父は表情筋が死んでいるから感情が読みづらい。しかし、義兄の息子である私たちを大事にしてくれている。

 確か番外編に叔父幼少期の話もあったがよく覚えていない。ショタは趣味じゃないんだよね。でも、前日の友人がなんか言っていた気がする。

 とりあえず、家庭教師はいらんと宰相に伝えたが否定されたら以前の様にサボろうと思う。


 「あれ?」


 考えごとをしていたら無意識に一冊の本を手にしていた。何気なく本を開く。中身を見て気持ちが高まるのを感じた。手にしたのは魔法陣の解説書である。この世界には魔法が存在する。全ての魔法は魔法陣を使い使用する。

 王族であれば魔法陣を学び発動させることができる。なんで王族だけなのかよくわからないが、我が国の王族ではない主人公は魔法を使用していないから使えないのだと思った。


 この魔法というのが不便な設定であったため頻繁に使うのは才能があるごく一部の人数だけだ。


 魔法は魔法陣の書いてある石板に手をかざして発動させる。その石板が非常に扱いづらいのである。石板は城にあるが重くて持ち運ぶのに苦労する。才能があれば石板なしに魔法陣を浮かび上げて発動つること可能だったはず。

 

 とりあえず、簡単な魔法陣からやっていみる。


 本棚の前の床に正座し、目の前に本を大きく広げた。石板がないから、代わりに本に載っている魔法陣に手のひらをのせた。


 「えーと、水が出るイメージでとぉ」


 水が思いつかなかった。

 窓の外を見ると、桶に水が溜まっていた。花にあげるのかなぁ


 「それでいいや」


 桶の水を思い浮かべて見た。なんか紙が湿った気がするが手汗の可能性もある。もう一度イメージしてみる。先ほどど変わらない。


 やはり石板じゃないから難しいかなぁ。


 魔法陣につけていた手を見ると手汗がすごかった。手汗、そこまで汗っかきだったかな疑問に思いながらにおいを嗅いでみる。もしかしたら発動している可能性を期待したのである。


 「汗のにおい」


 現実は厳しい。


 もう一度、水の魔法陣を眺める。魔法陣ってアニメや漫画でしか見たことがなかったがとても綺麗な形をしている。なんとなく、魔法陣を指でなぞってみる。異世界ファンタジー好きとしては魔法や呪いとか心惹かれる物がある。それに聖獣とか召喚できた最高である。


 しかし、現実は手汗だ。


 「あ、水」


 魔法陣を繰り返しなぞっていると魔法陣の中に水という文字が入っている事に気づく。よくよく見れば魔法陣は丸の中に古代語が書いてあるのだ。

 古代語は漫画にでてきた言葉だ。私はすぐに古代語に飛びついた。前世でいくら漫画の古代語を覚えても何の価値もない。しかし、ヲタクは覚える。長い詠唱呪文も覚える。キャラクターの誕生日も覚える。残念な事にトーマス騎士団長の誕生日も年齢も非公開であった。だから、トーマス騎士団長初登場の日を友人と共に祝っていた。勿論、友人の好きなキャラの誕生日も祝う。


 今回はアニメではなく、文字で書かれている漫画であるから古代語の意味は分かっても発音できない。この文字はこの意味と言うように覚えているため書けるが読めない。


 「やってみよう」


 本から指を話、顔の前で『水を出す』と書いて丸で囲ってみる。すると魔法陣が浮かび水が勢いよく出てきた。余りの勢いに驚いて動けない。


 「わぁー」

 

 焦り混乱していると水が突然なくなった。

 私の前にあった魔法陣が消え、同時に水もなくなったが私自身はびしょ濡れである。あたり一面濡れている。本も濡れている。


 呆然としていると、足元に魔法陣が浮かび上がり濡れていた自分自身は勿論の事あたり一面乾き元通りになっていく。訳が分からないままその光景を見ていた。全てが元に戻った所でため息と共に人影が現れる。


「なぁにしてんの?」


 軽い調子で現れたのは王族特有の美しい顔を持ち、常に目を細め笑顔でいる法務大臣のアーサーであった。後ろでしばった長い金髪の髪が揺れている。水が突然消えたのもあたりが元通りになったのも彼の顔を見た瞬間納得した。


 アーサーは所謂チートである。


 魔法陣を学ぶ王族は石板の魔法陣を発動させられる。更に才能があるものは魔法陣を呼び出し発動するとこでできる。アーサーはその上の魔法陣を作る事ができるのだ。魔法陣同士を足したり引いたりして新たな効果をもたらす。

 アーサーがそれをできるのを知っている人物は少ない。


 「今の水、ルカがやったのかい」

 

 何も言わずに目の前に立つアーサーを見上げていると笑顔で私を見つめて問う。どう答えていいか分からずにアーサーの顔見る。


 「うーん。黙りは困るだよね」


 アーサーは私に近づくとしゃがみ、座っている私に視線をあわせる。漫画で見ている時は余り感じなったが本当、美しい顔をしている。

 

 でもタイプじゃないんだよね。


 まず、長髪の男が好ましくないし筋肉が少なすぎるだよね。そもそもこの人、魔法チートだからそれに頼りすぎて筋力ないのではないかと思うが違うという事を思い出す。騎士隊長並みに強いんだこの人。魔法もできて、剣術も素晴らしく頭も良い完璧なチートとキャラだった。


 「そんなに僕の顔が面白い?ルカも似たようなものじゃない」


 ケラケラと笑うアーサーを見て余りに見すぎてしまったと反省して下を向く。そうだ、魔法陣の説明を求められているんだった。本当にどうしていいか分からずこの場から逃げたくなる。

 

 なんだか頭ボーっとしてきた。疲れを感じる。


 「別に責めてるわけじゃないんだよ。まぁ顔は見たければいくらでも見ていいよ」


 「見るなら、トーマス騎士団長がいいなぁ」


 ぼーっとする頭で思ったことが口でた。


 「えっ」


 思わず、言ってしまった言葉にアーサーの細い目が大きくなり青い瞳が見えた。まずいと焦った。


 「あ、いや、私は、その」



 「トーマス騎士団長がいいとはなにかな?」


 アーサーは笑顔だが目が怖い。アーサーと叔父のオリバー摂政は過保護で私の人間関係を凄く気にする。オリバーはそこまで問い詰めこないがアーサーの尋問から逃げるのは困難。


 「それとさっきの魔法陣もとても気になるね。さっきから黙りだから改めて聞くね。トーマス騎士団長と何かあったの?魔法陣はいつから発動できるの?」


 アーサーは先ほどから一度も私から視線を外さない。それがとても圧を感じ、私の目は挙動不審にキョロキョロと動く。アーサーは絶対に見逃してくれないのを知っているから覚悟を決める。


 「トーマス騎士団長は、とても強いので格好いいと思います。それだけです」

 

 嘘ではない。


 もしかしたらアーサーは私がトーマス騎士団長を恋愛対象として見ているのではないかと心配しているのかも知れない。

 

 しかし、それはない。

 

 私はトーマス騎士団長のファンである。彼が誰かと付き合っても結婚しても応援できる。副団長となら大歓迎であるが現実だと不倫になってしまうので妄想で我慢する。

 

 「個人的に会う事があるの?」


 「いいえ。城内で偶然見かける程度です」


 私の説明に満足言っていないようであるが、とりあえず追求は止まり安心する。

 

 「まぁ、トーマス騎士団長の話はわかったよ。騎士として全てを備えてる彼に憧れるのは分かるよ。僕の顔よりというのは引っかかるけどね」

 

 顔は好みがあるから、仕方ない。美しい方がいいとは思うが美形なら誰もいいと言う人は少ないと思う。大体、顔って性格が現れると感じている。アーサーの顔には腹黒いな所がにじみでている。


 トーマス騎士団長は真面目なんだよ。

 

 心の中で悪態をついていると、アーサーは次の話にうつった。


 「じゃ魔法陣について聞かせてよ」


 仕切り直すように私の前から横に座り直す。

 私と同じように床に座ったのだが、いいかと心配になる。それを察し「座るとこはどこでもいいよ」と言って魔法陣の説明を急かされた。


 私は仕方なく、前世の話を含まない説明を方法を考える事にした。


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