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森崎1  作者: ブッチャー
3/28

三人目:レディース

「いいライブでしたね!」


「ああ! まさかあそこでローリングソバットとは思わなかったぜ!!」


スカルクラッシャーのライブが終わり、俺達はファミレスで遅めの夕食を取っていた


夕食後も俺達の興奮は中々醒める事が無く、会話は益々盛り上がっていく


「やっぱ、ライブは最高だな! 臨場感や一体感がハンパない」


「はい!」


その後も数時間話をし、気が付けば深夜の1時過ぎ



「終電……いっちゃいましたね」


駅のホームで理名はポツリと呟く


「……ああ」


迂闊だった


「……どうします?」


「どうしますと言われてもな……」


「ど、何処かに……泊まりましょうか?」


理名は顔を伏せ、僅かに震える声で言った


「理名……お前」


「せ、せんぱいが行くって言って下されば私は……」


「そんな金あるのか?」


「え? えっと……」


理名は自分のサイフを拡げて確認する


「三万円程あります」


「いいなー。俺、余り金無いんだよ。俺はファミレスで寝るからさ、お前はビジネスホテルにでも泊まってきな」


「え? あ、わ、私、お金出します」


「ライブおごってもらってんのにホテル代まで出させられねーよ」


「な、なら体で払って下さい!!」


そう言った後に、理名は顔を真っ赤にさせる


「…………ぷ、くく! あはははは!! お前、それ最高! で、俺はこう言えばいいのか? それだけはご勘弁をお代官様! あはははは」


「ア、アハハハ……はぁ。やっぱり先輩と七海先輩は似ていますね」


残念そうに、だけど何処かホッとした顔で理名は笑った


「ま、兄妹だからな。それでな、理名」


「はい?」


「成り行きじゃ無く、もっといい感じの時に泊まろうな」


その後、咳込む理名の背をさすり、落ち着いた所でキスをする


「……いじわる」


拗ねたように呟いた後、理名は俺の手をギュッと握った


「さて、どうするかな」


「さっきのファミレスで時間潰しましょうか?」


「あいよ。ところでお前、家の方に連絡しなくて良いのか?」


「……き、今日は」


「ん?」


「お、お泊りって……」


「……はは」


「わ、笑わないで下さいよぉ」


ファミレスへ向かい歩いている途中、そんな感じで甘ったるく話していると、少し離れた所で争う様な声がして来た


「ん、なんだ?」


「どうしたんですか、先輩?」


「いや、ちょっと……」


耳をすませると、女の怒鳴り声


「アァ? カンベンだ? 舐めてんじゃねーぞ!!」


「おいおい、この後は公開蹂躙プレイだろうが? 今から泣き入れてんじゃねぇよ!!」


……穏やかじゃねぇな


持ち前の好奇心がズブズブ沸き上がる


「……先輩?」


「ん? ああ、ファミレス行こうぜ……ダッシュで!」


俺は全力で駆け出す


「せ、せんぱ!?」


「俺を捕まえてみろ〜」


必死に追ってくる理名から適当な距離を守りつつ、ファミレスへと着いた


「ハァ、ハァ、ハァ。せ、せんぱい……」


「良くやったな、理名。もう俺がお前に教える事は何も無い」


「な、何かを教わったんでしょうか、今……」


「……ああ! 財布だぜ、落したぜ、うっかりと」


「え?」


「探してくるから、ファミレスで待ってろ」


「は、はあ……私も」


理名が何かを言う前に、俺は全速力で先程の場所に戻った



「確かこの辺だったな」


車道。右には電灯が無い暗い小道がある


「オラァ! はいずり回れよブタが!!」


「向こうか」


俺は小道の方へ行き、声の方へ歩く


そして公園。数台停まっている単車


公園には赤い特攻服を来た女が、4、5人たむろしていた


「あ? 何だテメェ!?」


公園の入口。見張りらしき女が俺に声をかけてくる


「野次馬」


「テメェ人間じゃねーか! おちょくってんのかコラァ!?」


その怒鳴り声に、公園内の連中も俺に気付く


「どーした、真知子? つか誰よそいつ」


「あ、リーダー。何かコイツ野次馬とか言ってんスけど!」


「野次馬? …………馬じゃねーじゃん」


「り、リーダー。野次馬ってのは見物人みたいなもんで……」


「なら最初から見物人って言えよ!」


横から教えてくれた、ポニーテールの女をバキッと殴るリーダー


「す、すみませんでした!」


後ろで腕を組み、直立不動のポニーテール


「とんだ馬鹿集団だ」


俺は止める入口の女の手を払い、公園内へと入った


公園内には女が5人。一人は裸にされ、しゃがみ込んだまま泣いている


「テメェら……テメェらの血は何色だ!?」


「な!? その台詞はあのお方の……な、何者だてめぇ……」


「俺は森崎だ。悪党に名乗る名は持ち合わせていねぇ……」


「こ、コイツただ者じゃねっスよリーダー!」


「……ああ、アタイの勘がビシビシと伝えてくるよ。コイツはヤバいってね」


「わりぃけど、今日の俺は女でも手加減しねーよ?」


生スカルを見たからな


「くっ! リコ、真知子、ミーコ、江里!!」


「イエス、リーダー!」


女達は俺を囲むように、集まる。数は五人、手には木刀等の凶器


「やっちまえ!」


女達が一斉に襲い掛かって来た!


先ずは後ろのポニーテールに!


「ローリングソバット!」


「グハァ!」


次は右の真知子!


「ジャーマンスープレックス!」


「ゴハァ!」


左のブス!


「ムーンサルトアタック!」


「ぬぐあ!?」


上空の……上空!?


「南斗獄屠拳!」


「ひでぶ!」


最後は正面のリーダーだ!


「電気アンマー!」


「あ、ヤダァ、ダメ! ああん!?」



僅か数分の戦い。それが終わった後、立っているのは俺だけだった


「……また、無益な争いをしてしまったな」


戦いの後は、いつも虚しい


「あ、あの……」


裸の女が怯えた声を上げた


「ふ」


俺は着ている上着を脱いで女に着せる


「何かあったら俺に連絡しな」


赤外線通信で携帯番号を交換していると、背後から声が掛かる


「お、おい、てめぇ……」


「……まだやるのか?」


「ア、アタイとも交換……しろよ!」



番号交換を終え、俺はファミレスへと戻る


「いらっしゃ……い!?」


「ああ、待ち合わせだから」


「は、はぁ」


理名は……お、窓際の席か


「待たせたな理名」


「あ! せんぱ……」


嬉しそうな笑顔のまま固まる理名


「……どうした?」


「せ、先輩、ふ、服……」


「ん? ……あ」


窓ガラスに写った俺の姿は、上半身が裸の変態野郎だった


「…………理名、一枚服貸して」


「む、無理ですよ!」

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