閑話休題
長く続いてしまったファンタジーから、本題である現代へと戻りました。次話からまた何人目、と言う感じで進めて行きます
ファンタジーの方、めっちゃ中途半端な感じですみません。引き続き書いていきますので、宜しくお願いします
朝、コンコンとドアをノックする音で目覚める
目を開けると、視界に入るのは木やコンクリートが剥き出しの天井や空では無く、白いクロスを使った綺麗な天井。久しぶりに見る俺の部屋だ
……本当に帰って来たんだな
「……兄さん?」
「ああ、起きてる」
「そうですか」
どこかホッとした様な声で七海は言い、朝食の準備をすると部屋の前を離れていった
「……ふー」
本当、帰って来たんだな
もう一度確認し、俺はベッドから起き上がった
「あ! おはよ、お兄さん!!」
リビングへ入ると、先ずニアが声を掛けてきた。昨日の泣き顔は消え、良い笑顔だ
「おう。おはようニア」
「おはようございます、主様」
続いて舞さんが俺へ丁寧なお辞儀をする。俺が居ない間、七海を支えてくれた舞さんには感謝の言葉しか出ない。昨日は随分怒られてちまったけどな
「おはようございます、舞さん」
挨拶を返し、体感では約一年振りとなるリビングの白いテーブルへと座る
「…………」
やっぱ何か落ち着くわ
「お待たせしました兄さん」
キッチンから七海が出て来て、俺の前に皿を置いた。アジのひらきに、ノリと玉子とみそ汁。そして米
「……たまんねぇな」
ずっと食いたかったメニューの登場に思わず声が漏れ、俺は餓えた犬の様に、がっつき飯を喉に押し込んだ
「に、兄さん。そんなに慌てて食べたら……」
「うめぇ! マジうっぐっぐ! ごほ、ごほ!」
「あ、み、水を持って来ます!」
「ごぼ! ごふ、ごふ……ふぅ〜。……は、ははははははは!」
「に、兄さん?」
「あ、主様……」
「お、お兄……さん?」
急に笑い出した俺を、三人は心配そうな顔で見たが、心配する事は無い
「はは、大丈夫だ、ちょっと嬉しくてよ」
嬉しくて、やっぱちょっと悲しくて。でも
「……みんな」
ここが俺の場所だから。俺はここで頑張って行く
「じゃあな、みんな」
んで……ありがとう
※
「久しぶりね」
「ん? ああ、そうだな」
不審そうだった七海達を何とかごまかし、朝ズバを見てから学校へと来た俺はクラス中の質問攻めにあう。ようやく落ち着いたと思った頃、クラス委員の宮永がめんどくさそうに話し掛けてきた
「十日も休んで……、大変だったのよ色々」
十日つか、俺的には一年だけどな。勉強とか覚えてねぇよ……
「聞いてる? 森崎」
「ああ。わりぃ、心配掛けた」
「別に心配はしてないわよ。ただクラス委員として、長期休まれると迷惑なのよ。一応、七海さんが欠席届け出してくれていたけど」
「七海が?」
「ええ。七海さん毎朝教室に来て、多分あんたを探した後、私や先生に欠席届けを出していたわ。可哀相なぐらい落ち込んだ様子で。ちゃんと、あやまんなさいよ」
「そうか……」
たかが十日とは言え、七海に取っては始めて俺と離れた時間だからな。あいつにとって俺は最後の家族だ。俺まで居なくなったらと、随分悩んだだろう
「分かった。改めてきちんと謝る事にする。ありがとうな、宮永」
「…………」
「……どうした?」
何故か宮永は、ぼーっとした表情で俺を見ている
「え? あ……べ、別になんでも無いわ」
「ん? 変な奴だな」
「……あんた、そんな感じだったっけ?」
「はぁ?」
「なんか凄く大人びている様な……」
「…………」
まぁ、実際は一歳上だからな
「気のせいだろ。たった十日で変わるかよ」
「そう……よね」
どうにも、ふに落ちない顔をしているが、朝のホームルームを知らせるチャイムによって、解散となった
「……ふぅ」
あいつ結構鋭いからな。気をつけよう
※
予想通り一年振りにする授業は訳が分からず、睡魔と戦っている内に四時間目を迎えた
四時間目は体育。女どもだけが使用を許される更衣室へ、クラスの女子は行き、俺達は教室内でストリップだ
「大丈夫? 一也」
前の席の優太が、心配そうに聞いてくる
「あ? なにがだ?」
「だって十日も休んでたじゃん。だから大丈夫なのかなって」
「ん……ま、大丈夫だ」
七海が何て説明して欠席届けを出していたのか分からないので、俺は曖昧に頷きながらシャツを脱ぐ。すると、教室内でどよめきが起きた
「……なんだ?」
どよめきは、どうやら俺を中心に起こっているみたいだ
「な、なんだって、こっちこそなんだよ、その身体……」
その中で、丸山が俺に尋ねてくる
「は?」
自分の身体を見てみるが、特におかしな所は見当たらない
「なんかおかしいか?」
「おかしいか、じゃねぇよ! なんだその細マッチョぶりは!?」
「あ? ……あ」
そういや向こうの世界に行く前はあんま筋肉無かったよな。……師匠から受けた地獄の特訓のお陰でこんなんなったが
「お前は何処の軽量級ボクサーやねん! 脂肪摘出手術でもしたんか!」
なんでか関西化した丸山に苦笑いをしながら、どうごまかすかを考えていると、朝から今までずっと喋らなかった新之助が怒鳴った
「喝っ!!」
「うわ!? な、なんだよ新之助」
「……男子十日も会わずんば肉体改造も起きる。騒ぎ立てるな」
いつも無駄に熱い新之助が静かにそう言うと、その妙な迫力からかクラスの連中は何も言い返す事が出来ず、気まずそうに着替えを再開する
「サンキュー、新之助」
結果ごまかしに協力してくれた新之助に礼を言うと、新之助は、ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。朝から薄々気付いていたが、どうやら俺に対して怒っている様だ
「新之助は十日も七海さんを悲しませた一也に怒っているんだ」
「ゆ、優太!?」
「でも、俺も怒ってるよ一也。俺らに何も言わないで、いきなりどっか行くのは無しだ」
「あ、ああ。悪い」
珍しく、と言うか俺が知る限り始めて見る優太の真剣な顔に気圧され、素直に謝ると、優太はニッコリ笑い
「うん、許す。じゃ早く着替えよう。ほら、新之助、いつまでも拗ねて無いで。しつこいと七海さんに嫌われるよ」
「な、七海さんは関係ない!」
「…………はは!」
やっぱ、学校。悪くねぇな!
「おら、着替たぞ。さっさと校庭行こうぜ!」
「こ、こら、命令するな一也! 俺はまだ、許して」
「行こう、一也。じゃ後でね新之助」
「お、おい! ま、待ってくれ〜」