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森崎1  作者: ブッチャー
20/28

エピソード1 七海

殴り書きです。読みにくいと思うので、多分そのうち直します。番外編なので、読まなくても本編には全く影響ありません

一番好きな人は誰ですか?


小さい頃は迷わずお母さんと言いました


でも、そう誰かに言うのが少し恥ずかしくなって来た頃、私はある男の子に出会います


その男の子は乱暴で、面倒臭さがりやで、適当で。


いい所なんて一つも無くて


大っ嫌いな男の子でした



ですがお母さんは、その男の子のお父さんを好きだと私に言い、それから私は二人に会う機会が増えます


それが嫌で嫌で、仕方なくて仮病を使ったり、泣きわめいたりし、お母さんを沢山困らせました


そんなある日の事、お母さんと一緒にお風呂へ入るとお母さんは私へ再婚したいと言います


相手は男の子のお父さん


半分予想していましたが、実際に聞かされるとショックで、私は絶対に嫌だとお母さんに告げます


お母さんは一瞬悲しそうな顔をして『七海が嫌なら止めようね』と微笑みました


その顔を見てとても悲しくなり、私は暫く考えさせてほしいとお母さんに言います。お母さんは『ゆっくりで良いよ』と言い、また微笑みました


それから数カ月。その間、男の子や、そのお父さんと何度か会う機会がありました


何度も会う内に、男の子のお父さんの優しさを知り、もしこの人がお父さんになってくれるのなら再婚も悪くない。私はそう考える様になります


だけれど、やっぱり男の子の方は嫌いで、私は会う度に男の子を避けました


そんなある冬の日、ひょんな事から私は男の子の家で男の子と留守番をする事になってしまいます


留守番の間、男の子はずっとムスッとしていて私に一切話し掛けてきませんし、私も私で一切喋りません


そんな余りに気まずい時間に耐え切れず、私はお財布を持って出掛けました


お財布にはお年玉の残りが一万円以上ありましたし、1人で余り知らない町を出掛ける興奮もありました 


その勢いのまま、私はバスに乗り、一番終点まで行きます


周りは見たことが無い町並み。途中動物が放し飼いになっている公園を覗いてみたり、漫画喫茶で漫画を読んだりと、とても楽しかっです 


そうやって遊んでいる内に辺りはすっかり暗くなり、気温も大分低くなります


遊び過ぎてしまった私は、慌てて近くのバス停へと行き、直ぐに帰ろうと思った時に、私はお財布が無い事に気付きました


お金が無くては帰れない。もう家に帰れない 


私はバス停を離れ、泣きながらとぼとぼとと町を歩きました


途中自動販売機の下を覗いて見付けた50円でキャラメルを買います。

それはとても甘くて美味しくて、何故か私は尚更泣いてしまいました



暫くめそめそと歩いていますと、パン屋さんのお婆さんに声をかけられます 


『どうしたんだい? 迷子かい?』 


私は、お婆さんに近くの交番まで連れていってもらいました 


交番では警察官が三人いまして、私を慰めながら家へ連絡し『直ぐに来てもらおうな』とアメを貰います 


それから30分後。私を迎えに来たのは、あの男の子でした 


自転車で来た男の子は、耳を真っ赤にさせ、鼻水をたらし、汗を大量に流していて、とても酷い有様です


そんな酷い有様の男の子は私の顔を見るなり無言で近付いて、おもいっきり頬をひっぱたきます


初めて誰かに叩かれたショックと、痛さで泣き出す私を男の子は無視し、警察官の方々へ頭を下げ、少しお話をした後に私の手を取り外へと連れ出しました 


私はまだ泣いていましたけれど、男の子は無言で自転車を押し、そして警察官から聞いたのか、パン屋さんのお婆さんの所へ行きました


男の子はそこでお婆さんにも頭を下げ、缶コーヒーとあんパンを買います


男の子はコーヒーとあんパンを私に渡し、『食ったら帰るぞ』と言って自分のしていたマフラーと帽子を私に被せてくれました



帰りの自転車は家まで一時間以上も掛かり、私は男の子がどれほど急いで来たのかを知ります


『ご、ごめ……ごめんなさい』


『……無事ならいいよ』 


家に帰るとお母さんに酷く怒られましたが、男の子が『俺が意地悪して、家出ろって言ったから』と言い、お母さんと私にごめんなさいと謝りました 


それを聞いて私は何だか凄く悲しくなり、お母さんや男の子のお父さんが慌ててしまう程、泣いてしまいます


そんな私の頭を男の子は困った顔をしながら、泣き止むまでずっと撫でてくれました


それから私達は打ち解け合い、嫌いだった男の子は、いつしか私の大切な家族へと変わっていきました


乱暴で、面倒臭さがりやで適当な男の子


でもとっても優しくて


いつも、どんな時でも私を守ってくれた人


強くて、優しくて、暖かい人


私の大切な家族


大好きな人



一番好きな人は誰ですか?


今、を誰かにそう問われたら、私はきっとハッキリ答えられます


私の一番好きな人は……




「……兄さん、起きてますか?」


そう声を掛け、私は兄さんの部屋をノックする


この瞬間、この瞬間だけはいつも緊張してしまう


今、私はどんな顔をしているだろう?


笑顔? 呆顔? それとも切なそうな顔?



今日もまた一番最初に兄さんと会える


今日もまた兄さんを起こしてあげられる


いつか必ず失われる権利だけれど、もう少しだけこの権利を独り占めしたい


この時間だけは兄さんを独り占めしたい……


「……兄さん、朝ですよ。お部屋……入りますよ?」


『返事がない時は部屋に入って起こしてくれ』


そんな兄さんの言葉を言い訳に、私は兄さんの部屋へ静かに入る


「兄さん? ……あ」


まだ寝てる


「兄さん、朝ですよ。起きて下さい」


兄さんの側で声を掛けて、ちょっとだけ揺すってみる


「ん、む…………」


兄さんは嫌そうな顔をして枕を抱き、また寝息を立てた


眠いのかな、兄さん


起こしたくない。寝かせあげたい


寝顔……ずっと見ていたい


「…………はっ!?」


駄目です! 学校に遅刻してしまいます!


私は頭を振り、強く兄さんを揺さ振る


「兄さん、朝です! 起きて下さ、きゃ!?」


兄さんの大きな手が、私の小さな体をギュッと抱きしめ引っ張った


力強い兄さんの腕に敵う筈も無く、私は抵抗すら出来ず兄さんの胸に抱かれてしまう


「に、兄さん……」


困った振りをして、実際に出たのは媚びた甘え声


自分でも恥ずかしくて、呆れてしまう


「ん…………む」


「…………ふぅ、はぁ」


激しく鳴る鼓動を、熱くなってしまう呼吸で無理矢理整えて体に力を入れ、兄さんの体から強引に離れる


「……いい加減にして下さい! 兄さん!!」


多分赤くなっている顔をごまかす為に、強い口調で怒鳴る


「うわ!? な、なんだ?」


兄さんは慌てて跳び起きてしまう。……ごめんなさい兄さん


「なんだ、じゃありませんよ。いつまで寝てる気ですか?」


私がそう言うと、兄さんは目を擦り伸びをした


「……何時だ今?」


「もうすぐ8時になりますよ」


兄さんの寝顔見ていて遅くなったなんて絶対に言えない


「な!? 朝ズバが!」


「見ている暇なんてありません! 早く起きて顔を洗って着替えて下さい!!」


「わ、分かったよ……今日の生電話はみそ汁にタワシを入れる嫁の話しだったのに……」


残念そうに言う兄さん。明日は絶対に早く起こそう


「……ほら兄さん、早くしないと」


「分かった、分かった。とにかく着替えるからリビングで待ってろ」


「はい、分かりました」


コーヒーでも容れてあげよう


「……あ、そうだ」


部屋を出ようとする私を兄さんが呼び止める


「はい?」


そして振り向いた私に、兄さんは優しい笑顔で


「おはよう、七海」


と言った


「…………はい!」


おはようございます。大好きな兄さん!

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