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森崎1  作者: ブッチャー
19/28

十八人目:保健室の悪魔

一時間目終了。俺の体調もボロボロだった


「………………ハァ」


頭がガンガンする


「一也、保健室行った方が良いよ?」


「……そうするか」


此処にいると、うるさくて堪らないし……


横を見ると、クラスメートに囲まれ質問責めにあっている相馬


相馬は困り顔で一つ一つ質問に答えている


「ふぅ。……じゃ行って来る」


「付いて行こうか?」


「いや大丈夫だ。先生へのフォロー頼むな」


ふらふらと立ち上がり、ふらふらの教室を出る


保健室は西校舎一階。果たして無事、辿り着けるかどうか……


なんて考えつつ、あっという間に保健室へ


「……失礼します」


保健室のドアを開けると、スラリとした長い脚を強調する短パンに、胸の形が出るTシャツ。それにコートのような白衣を着た女性の姿


この仕事舐めてますってな格好をした女性は、うちの学校の養護教諭で芦谷 桃花


苦手なタイプの人だが、生徒には意外と人気があるらしい


「ん? おう、森崎兄か! 久しぶり」


「そうですね」


「どうした? 珍しく体調悪そうじゃないか」


「ええ、ちょっと風邪引いたみたいで……」


「ふむ。ちょっと私の前に座れ」


芦谷先生の前にあるキャスター付きの丸椅子にすわると、椅子をグイッと引き寄せた


「ち、ちょっと、先生!」


「立つの面倒臭いんだよ。どれどれ」


大股を広げ、めっちゃ近い距離で俺の胸や喉や頭を触る


「あ〜熱あるなこりゃ。ほれ体温計」


「最初から体温計出して下さいよ……」


「そりゃ無理だよ。私は病人をからかうのが趣味だから」


「からかうなよ!」


「冗談よ。ほら股に挿せ」


「脇だろ! 何でいちいちエロいんだよ!」


芦谷先生から距離を取りつつ、脇に体温計を入れて鳴る迄しばし待つ


コンコン。ノックの音だ


「あいよー」


「失礼しま……に、兄さん!?」


ドアを開け、部屋へ入って来たのは体操着姿の七海だった


「どうして兄さんが!?」


「頭が痛くてな。風邪みたいなんだよ」


「風邪……兄さん体調悪かったのですか?」


「ああ、少しな」


「私、全然気が付きませんでした……」


七海はしょんぼり呟いた


「たいしたことない。で、お前こそどうしたんだ」


「え!? わ、私は……」


「つきのものだろ? お前は可哀相なぐらい重いからな」


「あ、芦谷先生!?」


「……つきのもの?」


《熊が出たぞ〜》


《つきのわぐまだぞ〜》


「…………何だか良くわからねーが、大変だな七海」


「し、知りません!」


なぜか七海が顔を真っ赤にした後、ピピピと体温計が鳴った


「………………」


体温計を取り出して見てみると、38,8度


「どれ貸してみそ」


体温計を渡すと、芦谷先生は渋い顔をした


「お前なぁ、この熱で学校来るなよ」


「え? に、兄さん、そんなに酷いのですか?」


七海が慌てて芦谷先生に尋ねる


「39度近いよ。……昼休み車で家に送ってやるから、ベットで寝とけ」


「ああ、悪いけどそうさせてもらいます」


「薬飲むかい?」


「いや、寝てれば治りますよ」


よろよろと立ち上がると、直ぐに七海は横へ来て俺を支える


「ありがとな」


「兄さん……体凄く熱い。私、何で気付かなかったんだろ……」


「気にするな」


ベットに到着し、倒れ込むようにして寝転んだ


「布団冷てぇ」


白く、小さな穴だらけの天井がグラグラ揺れて気持ち悪い


「兄さん……」


「今より調子悪くなったら直ぐ言えよ。……森崎妹、茶でも飲むか?」


「……はい、頂きます。

兄さん、ゆっくりおやすみなさい」


七海が離れ、俺は目を閉じた


こめかみがズキズキ痛く、関節も鈍い痛みがある


それを無視して、強引に睡魔を呼ぶ


そしてそれは成功し、俺はいつの間にか夢の中へ入っていった



「…………兄さん」


「大丈夫だって。何かあっても私が居るしさ」


「……はい」


「そんなに心配ならマスクして添い寝でもしてやればどうだい? 美少女の添い寝だ、どんな良薬よりも効くだろ」


「っ!? あ、芦谷先生!」


「冗談よ。……しかし添い寝か……くく」


「……芦谷先生?」


「いや何でも無いよ。くくく」


「?」


……………………。



「………………」


つん


「うっ」


つん、つん


「ぬぅ…………ん?」


脇腹に妙な刺激があって、俺は目を覚ます


なんか左横に違和感が……


「おはよ」


「あ、はい。おはようござい…………い!?」


横には芦谷先生の姿!?


服を着てないのか、布団を被っていない肩や腕の素肌が見える


「さっきはよかった。意外と強引ね……」


「!?!?」


「どうしたの? ……ダーリン」


芦谷先生は俺の耳元で甘く囁いてって!


「……マジかよ」


熱で記憶が無いとは言え、責任取らねーと……


「芦谷先生。俺、責任取るからして欲しい事、何でも言ってくれ」


七海や理名に殺されるかも知れないな……


「…………ぷっ! くく、あははははは!!」


「な、なんだ?」


「あ〜面白かった。よっと」


芦谷先生は胸を右腕で隠しながら立ち上がる。下はちゃんと短パンを履いていた


「おら、見るな。着替えるから」


唖然としていた俺は、慌てて振り返る


「……くく。どっきり成功ってね」


「どっきり!?」


思わず再び振り返り、芦谷先生を見ると、頭からシャツを被っている所だった


黒い下着が見え、俺は急いで視線を逸らす


「ちょうどお前以外誰も居ないし、お前は熟睡してるしで、少しからかいたくなってな」


「んな下らない事するのに服まで脱ぐなよ!」


しかも病人相手に何考えて生きていやがる!!


「リアリティを出したくてな。びっくりしたろ?」


「びっくりなんてもんじゃねーよ……」


高校生活が終わったと思ったっての


「さて、もうすぐ昼休みになるから帰る準備しな。

少し顔色も良くなってきたし、家でガンガン食って寝れば治るだろ」


白衣を羽織り、もう一つのベットに腰を下ろして脚を組む


しゃくだが、何気ない動きの一つ一つがいちいち決まっている


「……じゃチャイムがなったら教室にバック取りに行きますよ」


「ああ、私は校門っとこに車まわしておく。さて、チャイムが鳴るまで後10分あるし、茶でも飲もう」


熱いお茶を飲み終えた頃には、チャイムが鳴り響き、俺は教室へと戻る



「………………うん」


少しは楽になっているな


購買へ向かう餓鬼どもを避け、階段を上がり教室へとたどり着く


「あ、お帰り一也。大丈夫かい?」


席に座ると、優太が心配そうに話かけて来た


「ああ、なんとかな。俺、帰るからさ先生に言っておいてくれ」


「分かった。お大事に」


バックに必要な物だけを詰め込み、担いでふらふらと立ち上がる


「さ、さよなら森崎君」


優太との会話が聞こえたのか、相馬が小さな声でそう言った


「ん? ああ、またな相馬」


「うん。……お大事にね」


心配そうな相馬へ軽く手を挙げ、廊下へ


「あ! ……きーさん!」


「ん?」


廊下に出ると、聞き覚えのある声がした


振り返るとニコニコ笑顔で手を振りながら、こちらに小走りで向かって来る女


「森崎さーん!」


「……鵜飼?」


「森崎さーん!」


「あ、ああ」


「森崎さーん!」


「お、おぉい!?」


鵜飼は止まらず、俺の目前に来て……


「森崎さ、っあう!?」


やっぱりこけた!!


「オグシオ!?」


鵜飼の頭はお約束の如く、俺のKOK……めんどくせぇ! チ〇ポだ! チ〇ポにクリティカル!!


「う、うぉお……」


俺はひざまづき、チ〇ポを押さえる


「あいたた……どうしたの森崎さん?」


「お、お前……な」


「そこ痛いの? さすろうか?」


「じ、冗談じゃねえよ」


伸ばしてくる手を避け、俺は辛うじて立ち上がる


「あ……森崎さん泣いてる痛い? 平気?」


オロオロとしている鵜飼の頭をポンと叩き、手を差し延べた


「だ、大丈夫……だ。ほら立てよ」


「うん!」


鵜飼は俺の手を取り……グイッとおもいっきり引っ張りやがった!


「うお!?」


「ふぇ?」


よろめいた俺は、鵜飼を下敷きに倒れる


「あぅ〜」


「わ、悪い!」


鵜飼を押し倒した形になってしまった俺は、慌てて右腕に力を込め、体を起こした


「大丈夫か、鵜飼」


「はぃ、大丈夫です〜」


とぼけた声を出す鵜飼を若干心配しつつ、立ち上がらせる


「森崎さんの胸、凄く硬いですね。私の胸潰れちゃいました」


鵜飼は自分の胸を両手で下から軽く持ち上げ、そんなふざけた事を、デカイ声でおっしゃりやがりました


「鵜飼、お前なぁ」


「うん?」


キョトンと首を傾げる鵜飼を見て、俺は諦める


「はぁ……ま、悪いのは俺か。すまなかったな」


「? 森崎さん、私になにか悪い事したんですか?」


「何かって……いや何でもねー」


鵜飼が気にしてないなら別にいいか


「ところで何か俺に用事でもあったのか?」


「あ、はい! これ約束のお礼です」


そう言うと、鵜飼は手首にぶら下げていた巾着袋を俺に渡した


「ん? ああ、お握りか」


袋を開けると、アルミホイルに包まれた拳大のお握り


「ありがとよ。んじゃ」


「はい! どうぞ食べてみて下さい!!」


家に帰って食おうと思ったんだが……


「……分かったよ」


アルミホイルを剥くと、真っ黒い海苔に全体を包まれた丸いお握りだ。そして


「超でけぇ……」


普段の俺なら喜んで食うが今の俺には少し厳しい


「森崎さん?」


「分かった、分かった。じゃ頂くよ」


無造作に一口


「……ふん」


塩がいい具合に効いていて中々美味い。もう一口


「…………ん? んん?」


なんだこの不毛な食感と味は……


「……鵜飼。なんでお握りの中にお握りが入っているんだ?」


「具を敢えてお握りにしてみました! 二重むすび。お握り好きの森崎さんにピッタリです!!」


「…………お前なぁ」


「ふぇ?」


「……これからは具は梅干しとかにしとけ」


きょとんとしている鵜飼にそう言って、俺は無理矢理お握りを喉に流した


「ごちそうさん。んじゃ俺帰るわ」


「早退? 調子悪い?」


「風邪だ」


「風? 風林火山?」


「お前なぁ……。病気だ、病気」 


「風邪という病気は無いらしいよ?」


不思議そうに聞いてきやがる。悪気は……


「んん?」


無いんだろうよ


「とにかく頭いてぇから帰るわ」


「うん……気をつけてね」


ぶんぶん手を振る鵜飼に別れを言い、俺は校舎を出た

  



「遅かったなコラ」


鵜飼と別れ、出た校舎。俺を待っていたのは、中指を立ててガンを飛ばしてくる芦谷先生だった


「すみません、ちょっと野暮用が」


「お前の野暮用ってのは、廊下で女を押し倒す事か? 随分趣味が良いんだな」


「なっ!? 何でそれを!」


「保険教諭を舐めるなよ? 生徒の事なら痴話からチ○ポのサイズまで何でも知ってるわ!」


「威張れる事じゃねーだろ……」


益々頭が痛くなってきた


「……じゃ、家まで送って下さい」


「ああ。校門の前で待ってろ」



んで来た校庭。少し待つと軽自動車に乗った芦谷先生が来た


「ほれ、乗れ」


「はい。……助手席で良いですか」


後部座席にはダンボールが山積みになっていて、座れそうにない


「ああ、悪いな。昨日会社やってる友人から大量に買い物してな」


了承を得て、助手席に乗り込む


「会社ですか、凄いですね。どんな物を……」


振り返り、ダンボールに書かれたEOSの文字を見て、俺の言葉は止まる


「知りたいか? ならダンボール開けてみろ。なんなら使ってみるか? 一緒にな……くく」


「いえ、いいです。永遠に忘れます」


「何だつまらん。……さて、シフトレバーをっと」


芦谷先生はそう言い、左手で俺の股間についているシフトレバーをって!


「何すんだよ!?」


「おっと悪い、間違えた」 


「つかこの車、ATだろ! シフトレバーねーだろ!?」


「お約束って奴だ」


「いらねえんだよ、んな約束は! 面白くねーし!!」


「たまには女の手も使いたいんじゃないかと思った優しい気遣いと、思春期と子供に対しする心とチ○ポ温まるジョークが分からないとはね。これだから童貞は……さっきヤっとけばよかったか?」


「真顔で言うなよ! こえーな!!」


頭が超いてぇ……


「ふ、大声出して元気になった様だな? これぞ桃花流活性術」


「何も活性してねぇよ! つか早く出発しろよ!!」


「はいはい。んじゃシートベルト着けな」


「ああ……着けましたよ」


「よし、出発」


ようやく出発した車。その変体的な性格には似合わず、芦谷先生は安全運転をしてくれている


「今、お前失礼な事思ったろ?」


「よく分かりますね」


「良い性格してるよ、お前。ま、その素直さに免じて許してやるが……」


芦谷先生の口調が、からかいを含み始めた。こういう時はろくな事言わねーんだよな


「お前、あんな可愛い義妹と二人だけで暮らしてて、よく我慢できるな」


「いや、別に我慢してませんよ。アイツは色々やってくれるし」


「色々!?」


「はい。色々です」


炊事洗濯掃除と、家の事まかせっきりだからな。

 我慢どころかアイツが居なくなったら俺、どうすんだって感じだ


「い、色々か……意外だな。お前達にはそういう雰囲気無かったから、気付かなかったよ」


「そうですか? 俺、アイツに頼りきってますから。頭上がりません」


「……なるほど、妹の方が攻めか。まぁそうかもな」


「あ、でも今はお手伝いさんが居まして、少し楽になってると思います。メイドさんって言うのかな」


「ふーん、おてつ……メイド!? ご奉仕か!!」


「は? ご奉仕っつーか仕事で……つか前見て運転してくれません?」


「あ、ああ、悪い。……し、しかし仕事か。そういう店の女って事か…………その歳で凄いな、お前」


芦谷先生は何故か擦れた声で、恐る恐ると言った風にそう呟いた


「そんな事ないですって、俺は何もしてないし。 

 本当に凄いのは七海です。休みの日なんか朝から頑張ってくれます」


「わ、分かった、分かったよ。…………人は見かけによらないものだな。先生、何だか少しショックだ」


「あ、そうだ。今度遊びに来ませんか? アイツ中々上手いんですよ、料理」


「おまっ!? なんて嬉しい、っじゃない! ふざけた誘いを……料理?」


「ええ」


何で驚いてんだ、この人


「そ、そうか、料理か。そりゃそうだよな、あはははは」


「は?」


「ま、気にするな。食事か。そうだなぁ、お前達が無事に学校を卒業した後、招いてもらうよ」


「そうですか」


「うむ。楽しみが一つ出来た、ありがとう」


キキーっとブレーキ音が鳴り、車は止まる


「着いたぞ。暖かくして早く寝ろ」


「ええ。ありがとうございました」


礼を言って降りると、車は短いクラクションを鳴らして、さっさと去っていった


それを見送り、俺も家に向かう


玄関の鍵を開けて、洗面所へ。リビングではニアが見ているのか、テレビの音がしている


「……はぁ」


頭いてぇ


鏡に映る俺の姿は、酷く衰弱していた


今日はもう寝かせてもらおう


俺はフラフラしながら、部屋へ入って直ぐベッドに潜った


「……今日は疲れた」


ゆっくり休もう

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