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闘将

 この世界では、魔法使いは貴重だ。 その中でも光属性に含まれるヒーラーは極端に少なく、存在さえ疑うくらいである。次に少ないのが、魔将が使う、毒魔法などの闇属性となる。

 また、属性別、さらに複数属性などに分ければ、場合によってはヒーラー並みに少ない場合もある。

 ビスは、風、炎、氷の三属性を持っている。もっとも、氷はかなり弱い。 ビスの師匠は、五属性を操る伝説の魔法使いだったと言う噂もあるが、ビスは、五属性以上あるのではと疑っている。

 炎や氷の様な温度系の魔法は、基本的には同じで、どちらかに魔力が偏ることで特性が変わるため、便宜上別な属性として扱っている。魔力が多ければ、逆属性側にはみ出し、そちらの特性も使えることになるのだ。そういう意味では、炎や氷の二つだけなら、複数属性とは言えないのかもしれない。

 そもそも、魔法を使えるかどうかは、本人の魔力の有無によるものだ。種族では、エルフは特に有した者が多く、竜人には全くおらず、魔族は人間よりもはるかに少ない。

 魔族は、特徴の一つとして、ほぼ複数属性持ちとなる。他の種族と異なり、魔力の特性では無く、魔力紋という痣が体に現れ、そこに記される魔法属性となるのも特徴だ。とはいえ、魔族自体数が少ないため、魔法を使える者は片手で数えられるくらいであった。



 俺は、王女と話した後、竜人の部隊の情報を待つべく馬車で待機していた。

「俺って飛べないのかな? 思い出したけど、イオルは飛んでたよね?」

 横に座っていたイオルに聞く。戻ってきて、事情を説明した後から、なんかくっついている。

 また、置いてけぼりにされるのが嫌なのかもしれない。それとも、俺を心配してくれてるのか。

「翼のある姿を想像すればよい。 なんのための変身じゃ」

 イオルが、珍しく素直に答えてくれた。ちょっとだけ笑みも見えた様な気がした。

 いつもそういう顔をしていれば可愛いのに。

「こうか」

 上半身裸になってから、やってみた。 鴉の翼の様なのが、俺の背中に現れた。 蝙蝠にしようかと思ったが、蜥蜴のやつとのお揃いがなんか嫌だなと思った。

「そして、ええと……」

 動かし方が解らない。

「やっぱりあほじゃの。 形ばかりの翼程度で、飛べるわけないじゃろ」

 さっきの笑顔だ。 ああ、そういう時の表情かと、無意味に関心した。 でも、笑顔にできたなら、いいや。

「もしかして、おちょくってる?」

「貴様は、少し落ち着け。 気持ちは分かるが、それでは足元を掬われるぞ」

「え?」

 そうか、俺は焦っているのだ。 確かに、まだ馬車に戻って時間はほとんど経っていない。

「わしが飛べんのを見て察しろ」

 蜥蜴が自虐的なツッコミをくれた。

「重力魔法を使うのじゃ」

 イオルが答える。さっきの笑みは無い。

「あ、イオル、そういえば魔法は?」

「使えん」

「俺は元の俺の魔法が使える、なぜ?」

「貴様の背中に魔力紋がある」

「それは? え、背中?」

 上着は脱いでいたので、きょろきょろして見てみるが、自分で見えるはずが無い。

「ほんとだ、ありますね。 かっこいい」

 アナさんが教えてくれた。 俺が魔族なことも含めて、昨日の夜にいろいろと説明しておいたのだ、魔隷紋の件でいろいろ詰め寄られたのもある。蜥蜴が出て来ているのも隠す必要が無くなったためだ。

「魔族は、人間やエルフと違い、魔力紋が魔法の源じゃ」

「先に教えてくれれば……聞かなかったけど」

 俺は、かなり脱力した、いろいろと思うところがある。

「我を助けた時に、気付かなかったのか? 使えるなら、あんな連中、全員血祭じゃ」

「ああ」

「それに、我の背中にあってもたぶん使えん。魔族では無いのだからな」

「ああ」

「そして、変身できるのもそれのおかげじゃ。 元のお前は変身魔法は持っておらぬじゃろう?」

「そう言えば、俺の属性じゃできない。 魔王の特技みたいなのと思い込んでた」

「それから、飛ぶのでは無く、浮かすのじゃ、そして反発を併用すれば、お前の思ってることはできるじゃろ」

「でも、イオルは、羽出してたよね?」

「そうだったかの~」

 また、少し笑みが漏れる。

「あれって、まさか」

 魔王としてそれっぽく恰好付けてただけなのね。

「そんなことはどうでもよい。 もっと早く気付いておれば、崖から落ちることなど……ああ、マリアが重かったか」

 イオルはそう言って、視線の向きを変えた。 マリアと呼び捨てにした。仲良くなったのか。皆、いい娘達だ。

 幌の隙間から覗いていたマリアデルが、拗ねた様に答える。

「わたし、そんなに重いですか?」

 俺に返ってきた。 計らずしも防具も外されていた重さを、重いと言われると乙女は辛い。

「いやいや、全然。ずっと、軽々と持って歩いてたじゃないですか」

「ずっと?」

 アナが、本題からそれた部分に食いつく。

「ああ、いや、俺がもっと早く気付けば、いろいろ、ごにょごにょ」

「まぁ、良い。 そもそも、ここまでの状況に、我らが巻き込まれる事は想定しておらんかった」

「そ、そうだよな」

 ハーシエル様達の事は、そうとう心配だが、連れ去った以上、身柄は安全なのではと少しだけ希望的に考えていた。

 詳細が知らされていない事もあるが、そう思いたかったのかもしれない。

 王達が連れ去られた時は、ハーシエル様は当人では無かったので、ああいう目にあわされたのだと。

 俺は、竜人を全く理解して居なかった。 そう、世界の秩序を変えるほどの暴漢たちの事を。


 その時、突然、馬車の後部が爆発した。 正確には破壊されたのかもしれない。

 だが、爆風や破片などは、咄嗟の重力魔法で跳ね返せた。さっき聞いて無ければ、咄嗟に動けたかもあやしい。マリアデルも、その陰に居たため無傷だ。

 馬車は、討伐隊の中では、隅っこに止めてあったので、他の冒険者にも被害は無かった様だ。

 巻き起こった土煙や埃が薄れていくと、一人の人影が見えた。人間だろう。 そして男の声で言葉を発した。

「こいつが、魔王が居るって言うから来てみたら、当たりだな。 いい女が、ひぃふぅみぃと」

 俺の陰に隠れる三人を数えている。 魔王と聞こえたが、女が目的なのか? 全くこの世界は。

 だが、女に困っている様な容姿では無い。 エルフから生まれる人間の男は、かなりの美形と言うのを聞いた。そういう感じかなぁ。

「誰だ?」

 敵には違いないだろうが、人間の姿をしている以上、聞いてみる。

 聞いた後で、今の台詞の中に『こいつ』という単語と、親指で胸元を指す動作があった事を思い出した。

「お前は闘将、なんでガーネットを……」

 イオルが答えてくれた。

「こちらの世界のわしですな」

 懐にいた蜥蜴もささやく。

「闘将って、ガラダエグザに移っているのじゃ無いのか?」

 イオルの言葉を引き継いで、さらに問う。

「ふむ、あいつは、ただの助っ人だよ。俺より強いつもりかもしれんが」

 ちょっと考えた様にしてから返答があった。

「助っ人? 魔族には関係無いのか」

「そうだよ。 魔将とは仲良さそうだが、俺はあいつ大嫌いなんだよ。 竜人だぜ?」

 俺に聞かれても。 そして、エルフ産の男でも無かった。

「ほう」

 適当に相槌を返してやった。やっぱり、魔族と竜人ということか。

「もしかして、そのちっこくってかぁいいやつなのか?」

 イオルを指さして『魔王はお前か?』と言う。 自分を闘将と見破った。 いや、知っていたのだ。

「あれは、ただの人間じゃ」

 闘将の胸にあるガーネットが、焦った様に答えた。

「お前は嘘が下手だなぁ」

 それに対して、揶揄する様に言う。

「あぁ、魔王様、すみませぬ。 わしが一言漏らしてしまったばかりに……」

 イオルが竜王城に近づいて来たことで、魔王のかすかな反応を見つけ、喜びのあまり生存を口にしてしまったのだ。

「ほらな。 眼帯だけは強そうだな~、ま・お・う・ちゃん。 でも、なんでこんなところに御出でで?」

 そして、ガーネットは目の前の少女が魔王と肯定してしまった。

「愚か者め」

 蜥蜴がこっちの世界の自分を叱咤する。

「その、闘将が一人でここに何をしに来た」

 この時の俺は、こいつを捕まえて、ハーシエル達との交換に使えないかなと、皮算用をしていた。

「城で待ってても、なかなか、来ねぇし」

 竜王城の守りに残っていたと言う事だろう。

「戦いに来たということか?」

「そうだ。 こんなとこで休んでねぇで進んでくれてれば、こんな手間いらねぇのに」

「こっちは、手間が省けたよ」

「ほほう、お前が俺と戦うの? 確かに、その辺の人間じゃぁ無いね。 顔が魔族みたいだ」

「ああ、俺が戦う。 一対一が、ありがたい。 で、顔は、ほっといてくれ」

 自分も魔族に戻れば、こんなか……お……え?え? 目元って変わらないはず? いやいや、今はそんな事はどうでもいい。

「俺もそれでいい。 終わったら、他のやつら皆殺しにして、その三人をもらって行く。 ん? そっちの竜女はいらんかな」

 負けるとは一片も思っていない様だ。 それに、竜人とほんとに違うのか? まぁ、魔族も人間からすれば同じようなものだった。 何よりも、アナさんを侮辱した様な言葉には腹が立つ。

 そして、その言葉に頭に血が上ってしまった俺は、開始の合図も無く、突っ込んで力任せに殴った。

 受けた闘将が吹っ飛んで行く。 手ごたえはあったが、倒せた気がしない。

 思った通り、闘将は、何事も無かったかの様に立ち上がり、軽く埃を払いながら言う。

「まぁ、これなら、一対一でもいいかな」

 闘将は俺を認めてくれた様だが、こっちは人の姿では厳しいかもしれないと考えていた。本気の攻撃の結果が無傷なのだ。 ガラダエグザと同等、それよりも上かも知れない。闘将というからには、それなりの強さであろうか。 イオルも、闘将を知っていたとしても、強さの度合いなどわからないだろう。

 今は同じ人間の姿だが、魔族になられたら、俺も変わるしかない。

 この大勢の人間達の前で。 そう、爆発騒ぎで、当然、冒険者たちが集まって来ている。

 魔族の姿で勝ったとしても、王女にも報告されるだろう。

 どうする?

 ここまでしておいてなんだが、魔法撃とうかな……いや、前衛の援護無しでダメージを与える程の魔法なんて撃て無い。

 半分は自分で仕掛けた戦いだが、雰囲気に流されすぎた。

 いかんいかん、後悔は後でしよう……


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