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異世界での騒ぎ

 おれがミーシャさんの後について行くとそこにはマリクさんと数人の町民がいて何やら話し合っていた。


「領主様、急がねぇと子供達が……」


「うむ、すでに捜索隊は向かわせている」


「領主様! 俺達も捜索に向かいます! じっとしていらんねぇ」


「わかった。俺も共に行こう。ラシャ!」


「はっ、ここに」

 マリクさんの元に褐色の肌をしたすらりとした美形の男性が現れる。


「俺は皆と共に子供達の捜索に向かう。何人か兵士をつけてくれ。留守はラシャとミーシャに任せる」


「はっ! それではミーシャと共に町の防衛に当たります」


 ラシャさんはマリクさんの右腕でエルフ族には珍しい褐色の肌を持つ男性だ。普段はキャッスル領の運営を文官として手伝っているが、武人としても強者でいざという時はこのようにマリクさんの代わりをするそうだ。


「頼んだぞ!」


「旦那様シンタロウ様をお連れ致しました」


「よし、ミーシャありがとう。ミーシャはラシャと共に町の防衛に当たってくれ。詳しくはラシャと話してくれ」


「かしこまりました」


「ラシャ」そうラシャさんに話しかけるとミーシャさんはラシャさんとどこかへ向かった。


「シンタロウはこっちだ! 急に呼び出してすまなかったな」


「何やら騒がしいですね。何かあったんですか?」


「うむ、緊急事態だ。実は町の子供達が盗賊に攫われてな」


「盗賊に! 無事なんですか?」


「多分奴隷として売るだろうからとりあえず今のところは大丈夫だと思うがすぐに救出したい。そんな事情があってシンタロウを呼んだ。お前のあの腕前ならうちの兵よりも頼りになるだろうと思ってな。何とか手伝ってもらえんか? 何なら捜索だけでも構わん」


「もちろん手伝いますよ! 何処に攫われたかわかっているんですか?」


「いや、わからんが馬に乗って街道沿いを逃げた。そんなに時間は経っていないからまだ遠くへは行っていないはずだ」


「なるほど街道沿いに馬の足跡を追えば追いつけるかもってことですね」


「そうだ。 よし! 皆急いでいくぞ。街道沿いに足跡を追う! 先行隊がマークしているはずだからそれを追うぞ!」


「はっ!」


「シンタロウ馬には乗れるな?」


「もちろんです」


 おれもマリクさんと馬に乗り子供達の捜索に向かうことにした。



 町から街道へ出て急いで足跡を追う。先行隊がマーキングしてくれているので追跡はかなり楽だ。十分ほど走ったところで川が見えて来た。川の手前でしきりに地面を観察している集団に出会う。


「先行隊だな。もう追いついたのか」


「これは領主様!領主様自ら来て下さるとは」


「うむ、大事な子供達に何かあっては許せん。それより追跡はどうした?」


「はい。困ったことに川に入ったらしく足跡が消えてしましました」


「魔力でも追跡していたんだろう?」


「はい、それも攪乱するための魔法を使われたらしく痕跡が四つありまして……」


「むむ、そんな魔法が使えるという事は敵にそこそこ使える魔法使いがいるという事になるな」


「左様で。今はその四つのうちどれが一番可能性が高いか調べているところでございます」


「全部追ってみたらどうだ?」


「それができたらいいのですが魔力の痕跡をたどれる者が二名しかおりません」


「なるほど、しかしこうしていても埒があかんな」


「あの」


「どうしたシンタロウ」


「おれどれが本命かわかりますよ」


「何? 本当か?」


「はい、気の乱れを感じますから。これは川の上流の方へ向かっていますね」


「どうだ?」


「はい、四つのうちの一本は川の上流へと向かっています」


「でかしたシンタロウ! 皆! 上流へ向かうぞ」


 この世界で『気』という概念は存在しないらしい。おれにはマリクさんからも町民からも魔物からも気の流れを感じることはできるが、この世界の人には気が感じられないらしい。


「シンタロウ! ぼーっとするな行くぞ!」

「すいません」

 危ないここはもうすでに敵地だった。油断しすぎだなおれ。


 しばらく川を上流へと進むと途中で川を出て山の方へと向かっている足跡がはっきりとついていた。


「よし! ここで一時休憩だ。先行隊だけ様子を確認しに行ってくれ。残りの者は戦闘に備え準備をしていてくれ」


「領主様俺達は?」

 町民達が不安そうな顔でマリクさんを見ている。勢いでここまで来てしまったが戦闘と聞いて少し冷静になったんだろう。


「賊とは俺達が戦うからここで待機だ。アジトを制圧してから呼びに来る。子供達を迎える時にお前達がいた方が子供達も安心するだろう」


「へい、わかりやした」

 町民達は少し安心した様子でうなずいた。


「シンタロウはどうする? ここからは人を手にかける必要があるかもしれないぞ」


「問題ないです。おれもそういった経験はすでに」


「そうか」


 忍者の修行でそういった修行もあるので初めてでは無い、がしかし慣れることは無いだろう。あれは親父と一緒に外国の組織を潰した時だったな。正直言って今でも夢に見ることはあるが、そいつがしたことを思い出し心が弱音を吐かない様にしている。


 親父に相談したこともあるが親父は珍しく優しい目をしながら「それはお前が人である証だ。気にするな」そう言いいながら頭をなでてくれたっけな。そういやあの一度だけだったな頭をなでてくれたのは。


「領主様! 敵のアジトがわかりました」

 どうやら先行隊が戻ってきたようだ。


「でかした! して詳細は?」


「はい、この先すこしばかり行った先に洞窟がございまして見張りは入り口に二名で馬の数は十でした」


「少なくとも十名以上はいるか、さらに魔法使いも一名はいると……いぶりだし作戦でいくか」


「煙で中から出すんですか?」


「うむ、人質を取られる危険もあるが狭い洞窟内で戦うよりもいいだろう。見張りは静かにやってしまおう」


「それならその煙にこれを混ぜてみてください」

 そう言いながら懐から取り出した小袋を渡す。


「これは?」


「睡眠効果のある丸薬が入っています。これでを煙に混ぜ敵を眠らせる事が出来れば子供達も安全に救出できるでしょう」


「これもニンジュツなのか?」


「これも忍術の一種で丸薬術です」


「そうか助かる。よし! 早速アジトに向かうぞ」

 おれ達はマリクさんの号令と共にアジトに向かった。



「見えてきたあれがアジトだな」

 目の前の洞窟には報告にあった通り見張りが二名いる。


「よし、透明化の魔法をかけてから見張りを無力化しろ」

 マリクさんがそう言うと魔法使いが兵士に透明化の魔法をかける。


「光よ、姿を消しされ」


 魔法使いがそう唱えると兵士が見る見るうちに見えなくなる。透明化の魔法がかかった兵士はそのまま見張りにこっそりと近づき一瞬で無力化した。さすがマリクさんの兵だな手際が良い。


 透明化の魔法があるんならそれで侵入すればいいって? おれもそう思ったがこの魔法は太陽の下でしか効果が無いそうだ。それに透明化するのはなぜか前面だけで後ろから見たら丸見えで意外に使い勝手が悪い。



 マリクさんが洞窟の入り口に近づき耳を立てている。ここからでも洞窟内で宴が行われているのわかるほど騒がしい。敵はこちらの動きに気が付いていないようだ。


 洞窟の前で焚火を準備したマリクさんが皆に注意を促す。

「よしやるぞ。煙は絶対吸い込むなよ」


 マリクさんが焚火に丸薬入りの小袋を投入すると煙がすごい勢いであがる。


「風よ!」

 魔法使い達が洞窟の奥に向けて風魔法を放つ。


 しばらくすると洞窟の中から響いていた宴の声が聞こえなくなり静かになった。

「しばらく待て」

 マリクさんが皆に指示を出す。



「よし! そろそろいいだろう。突入!」


 突入しようとした所で奥からローブを目深にかぶった者が慌てた様子で出てきた。

「おい! 見張りは何をしている!」


「お、お前はブラックリストのナンバーズ二百十五番! 邪神の信奉者ミハイル! なるほど邪神の加護で効かなかったのか」

 マリクさんが驚いた声を上げる。


「ブラックリスト? ナンバーズ? 二百十五番?」

 おれが初めて聞いた言葉を復唱すると、


「シンタロウは初めて聞いたかこの国には犯罪を犯して逃げた者のリストがあるんだが、中でも特に危険な者が載っているリストがあってそれがブラックリストと呼ばれている」


「リストの犯罪者には一から五百まで番号が振られていてなそいつらがナンバーズと呼ばれていてな若い番号ほど危険だ。二百十五番でも相当危険だ」


「チッ、もう追手がきやがったのか。 仕方が無い相手をしてやる」


「泥よ邪魔者を消せ」

 ミハイルがそう言うと衛兵の近くに巨大な泥の塊が現れ次々と衛兵を呑み込んでいく。


「くそ! 泥か厄介だな。泥に飲まれた兵の救出はお前達に任せた。おれはミハイルをやる!」

 兵にそう言うとマリクさんは魔法剣ヴィブラツィオーネを抜きミハイルに切りかかる。


 しかしマリクさんの一撃をミハイルは難なく受け止めると

「クックック、俺が魔法使いだから容易く屠れると思ったか?」

 泥で作った巨大な腕でマリクさんの攻撃を受けている。


「硬ければヴィブラツィオーネも効果が大きいのだが泥が相手ではあまり効果が無いか! シンタロウなんでもいい援護してくれ」


「わかりました。気を逸らすぐらいはできると思います。火遁:火球の術」

 おれがそう唱えると目の前にバスケットボール大の火球が現れミハイルに向けて飛んでいく……。


 火球はミハイルに当たると爆発ししばらくミハイルを燃やしていたがそのうち消えた。

 その場にはミハイル(黒コゲ)が残った。


 おれとマリスさんは唖然とした顔でお互いを見ていた。


「シンタロウ君、キミ「気を逸らすぐらいはできると思います」って言ってなかった? 黒コゲなんですけど……」


「『火球の術』は日本ではピンポン玉ぐらいの大きさの火球が出て当たっても「熱っ!」っていうぐらいのものだったんですが……」


「そうか……まあミハイルも死んではいないみたいだし良かったんじゃないかな兵も助かったし」


「そ、それもそうですね……。それにしても少し色々確認しないといけませんね」

 遁術はあまり得意じゃなかったし丸薬術の事ばっかり考えていたから……。そういえばここに来てから一回も遁術を試してなかったけな。


 しかし存在する気の量が多いし濃いからこうなってもおかしくはないけどまさかこんなに威力が上がるなんてな……。

 他の術に関してもちょっと調べる必要がありそうだな。

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