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生徒会からの呼び出し

 昨日の騒動の所為でおれは少し疲れていた。授業も終わり、早く帰って休もうと支度をしているとエリスに呼び止められた。

「シンタロウ、あなた何かやったの? 生徒会があなたの事を呼んでいるわ」


「生徒会?」


「うん、授業が終わったすぐに来るようにって。私も一緒に来るように言われているわ」


「ちょっと今日は疲れていて早く休みたいんだがな……仕方が無い」



 すこしだるいなと思いながらも、エリスと一緒に生徒会室にやってきた。

 エリスが少し緊張した面持ちで扉をノックする。

「失礼します。一年A組エリス・グエンドリン・キャッスルです。シンタロウ・カトウを連れてきました」

 すると中から落ち着いた品の良さそうな声が聞こえてくる。

「どうぞ」


 入室の許可が出たところで少し緊張しながら生徒会室に入る。生徒会室はコの字に机が並べてあり中央奥に二人、右に二人、左に三人座っていた。


 右の一人はこの間あったマルコのお姉さんのタチアナさんで左の三人はソフィーにメイさんとミトさんだ。

 中央奥の席の二人のうち一人が話し出す。


「エリスさんご苦労様。さてあなたがシンタロウ君ですね、よく来てくれました。私は生徒会長のデメトリア・ライン・グランツ。国王の娘と言った方が分かりやすいかもしれないですね。王女と言ってもかしこまらなくてもいいわ、ここでは一生徒ですから。それでは皆さん順番に自己紹介をお願い」


 会長の横に座っていた女性が話し出す

「はじめまして、あたしは副会長のジュディ・フリーズ・グランツ会長とは従妹よ。よろしく」

 そう言うとにっこり微笑むがなんだか嫌な予感のする微笑だ。子供が新しいおもちゃを与えてもらった時のような……。


 次に右側のドワーフと思われる女子が話し出す。

「うちは書記のルシール・バル・マージア。ドワーフだから幼く見えるけどあんたより先輩だからね! 敬意を払う様に!」


 次はマルコの姉さんだ。

「シンタロウさんこの間はちゃんと自己紹介していなかったわね。私はタチアナ・ファノ・グスターよ。よろしくね」


「さてシンタロウ君、今回なぜあなたが呼び出されたか心当たりはありますか?」

 会長が静かな口調でおれに問いかける。


「いえ、まったく」


「本当に? 少しも心当たりは無いですか? ソフィーの事と言われても?」


「すいません。やっぱりおれには何のことかわかりません。ソフィーの事と言われましても……。ソフィーと話はしますが、ただのクラスメートですし」


「なるほどね」


 今まで座っていた会長が静かに立ち上がり、

「では立場を変えます。シンタロウ・カトウ、王女として問います。ソフィーについて知っていることを話しなさい」


 王女としてと言われたら跪くしかない。おれはこの国に忠誠を誓っているわけではないがキャッスル領の人達、つまりは今ここにいるエリスに迷惑がかかるのは避けなければならない。

 おれは素早く跪くと「特に申し上げることはございません」とだけ答えた。


 会長から感じるプレッシャーにおれは内心驚いていた。これほどのプレッシャーをかけてくる相手と対峙したのは数えるほどしかない。会長はおれと同じ十代のはずだがさすが王女と言ったところか。他の生徒会の面々もなかなかのプレッシャーをかけてくるが会長ほどではないな。そんな中で何故かソフィーだけか涙目でおれの事を睨んでいた。


 沈黙がしばらく続いた後、優しく肩に手を置かれた。見上げると先程のプレッシャーを発していた、同じ人物とは思えないほどの優しい笑顔で会長が「シンタロウ君素晴しいですね。あなたなら大丈夫」と言い何やら太鼓判を押されたようだった。


 会長が笑顔から真面目な顔に戻るとやさしい口調で話し始めた。

「あなたを試す真似をしてごめんなさいね。安心して、ソフィーが聖女かもしれないというのはここにいる全員が知っているわ」


 周りを見回すと皆笑顔でうなずいている。ソフィーだけは相変わらず涙目でこちらを睨んでいるが。


「ソフィーそろそろ睨むのを止めてあげたら、シンタロウ君困っているわよ」


「ですが、お姉さま!」


会長がソフィーの耳元で何やら耳打ちする。

「ただのクラスメートって言われたのがそんなに嫌だった?」


「い、いえ、そ、そのような事は……」

 会長から耳打ちされたソフィーは顔を真っ赤にし何やら否定した。


 副会長がおれの近くまでくるとニヤニヤしながら言った。

「ま、そういうわけで、シンタロウ君に釘を刺すために呼び出したっていうワ・ケ。あたしはこの前の放課後に、スパーダ家のリード君達に何をしたのかの方がが気になるけどネ」

 まさかあれを見られていたのか……。


「いえいえ、あれは話し合いをしていただけですよ?」


「とりあえずそういう事にしときましょうか、ウフフフフ」

 残念ながらおれの嫌な予感が当たったようだ。これからは副会長の視線にも気をつけなければ。


「それじゃこれでお開きにします。シンタロウ君ご苦労様。エリスさんもありがとう。あとシンタロウ君くれぐれもソフィーの事は内密にお願いしますね」

 そう言いながらおれにウインクする会長は年相応の可愛さがあった。



「失礼します」

 おれとエリスは生徒会室を後にした。


「あーすごいプレッシャーだったな」

 おれは体を伸ばしながら言う。


「あそこにいた方々は王家の方や、四大貴族の方々ばかりだから、普通の学生とは色々違うかもしれないわね」


「まーとにかく、今はちょっとゆっくりしたい気分だよ」


「それじゃ寮の食堂でお茶でもする?」


「いいね。キャッスルの町を出てから、エリスと二人っきりになることも無かったしな」


「そうね。このところ私も生徒会のお手伝いなんかであまり暇がなかったから」


「よし、そうと決まれば早速行こう」


 その日は久しぶりにエリスとキャッスル領の話をして盛り上がった。

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