第一話「消えないで」
こんな未来、誰も望んでなかった
誰も
みんな消えちゃった。
楽しかった思い出も、つらかったのも何もかも、消されてしまった。
無くなった。
泣きながら自分の体を貫く彼は物語の主人公
私はただそれを見るだけ。
観測者が干渉できるのはエンドに入る前まで
生きているのに何もできない
死んだような扱いになってるのかな
それすらわからない
今日も同じ物語が絶望の最後を迎えた
その日は雨が降っていた
涙は地面を濡らして川を濡らす、俺はそんな世界を窓から眺めた
今いるのは人気のない山小屋、俺の家。
町には行けないためこうやってひっそりと生きていかないといけない
何故かって言われれば…
ちーたん、チトセ・クロスティアっていう少年は普通の子供ではなかった
彼は戦鬼っていう物理に特化した赤い目の種族。
なのに魔法が強いんだよね、最強の戦鬼の血を受け継いでいるのに。
これくらいなら同種族に何かされる程度だったしちーたんも抵抗できたんだけど
もう一つあったんだよね、ちーたんには。
再生能力
それは本来傷が治りやすい程度のものだった
だけどちーたんは「即死以外」の傷を治せた
そうなると色んな学者さんがその少年を求めた。
実験材料ってやつ?許せない
そのせいでいまこうやって山小屋にすんでるんだよね
何件目かは分かんないけど…
あ、そうだ自己紹介してなかった
観測者、ムーン・ライト、ムーンちゃんってよんでね!アイドルもしてるんだよ~
一応ね、ちーたんの友達でもあるんだ
なんで観測者になったのかとかは追々話すとして
話してるうちにちーたんが家でちゃったよ!!
雨なのに外に出るなんて…まぁどうしてなのかは分かってるけど
お父さん探し、してるんだよね。
荷物もそれなりにあったしもしかしてあの家とはおさらば?
さてじゃあ観測者の仕事しちゃおっか。
この物語をかえるのはムーンちゃんじゃ無くて、ちーたんだから
雨の中寒さの残る森を歩く少年はふと「本」を見つけた
木の根本に立てかけられている藍色の本
「…忘れ物か、捨てられたのか」
この雨なのにあまり塗れていないのが気になるが特に興味もないのだろう
そのまま通り過ぎようとする
まって、その本を読んで!!
観測者としてのムーンちゃんはちーたんに見られない
だから急いで本を持ち上げてちーたんの前まで持っていった
で、また同じようなところに置く