第10話 絶望の崩壊
「サタン…真に必要なものはなんだと思う?」
唐突に問われたサタンは首を傾げた。
「何故それを問う?」
アザゼルは笑いながら、
「死を直前にすると、人はどうやら走馬灯というのを見るらしくてな、思わず死を覚悟して聞いたまでさ。」
「ふん、第八位の下級の悪魔にはやはり人間への慈悲が存在したか。ジルを討ち、人間に同情したのか?」
アザゼルは少し驚き、再びサタンを睨んだ。
「フンッ!そのような事あるまい。」
二人は相対し、目と目を見合っている。
敵の一瞬の隙、それだけでなく敵の感情、さらには敵の焦りまでも見ている。
何をしようとも。
勝てる気がしないが。
やらないよりはマシだと思う。
唯一効果のありそうな攻撃。
「サタン、お前の望みはなんだ?」
再び問われたサタンは今度は多少の動揺を見せた。
少し俯き加減になっているのは何故だ?
「アザゼル、貴様には関係の無いことよ。」
アザゼルは確信した。
この攻撃に効果のあることを。
「答えられないとは。第一位の悪魔であろうともそのような何か望みはあるまいか?もしくは…その望みが潰えたとでも?」
サタンは再び動揺した。
効いている。
いや、それだけではない。
焦りと感情に悲しみを感じる。
「アザゼル…貴様のせいだ…」
急激な怒りを感じ、アザゼルは飛び退いた。
先程よりも距離が取られている。
長いようにも感じている戦いだが、まだ夕日は落ちていない。
紅の、夕空。
遠くからは角笛の音らしき音が聞こえる。
サタンは先ほどのあと、何もしてこない。
何があったんだ?
「…クックックックックッ…」
急にサタンは笑い始めた。
「何がおかしい?」
「…いや。貴様の死が見えてな。」
「?!」
「ノヴァの死ぬる時より決まっていたことだ。悪魔は元は第七位までのものだったはずだ。」
「つまりこの俺は…」
悪魔に第八位など、存在しない?
そんなわけはあるまい…
いやしかし天使契約は確かに第七位までしかないが…
となると俺は、一体、何だ?
「まぁよい、なぜなら第八位は悪魔の恥、ここで殺すのだからなぁ!」
むしろ逆効果だったか。
何を考えていたのか、サタンは。
だが。
これが、死か。
一直線に奴は俺に向かって拳を突き出している。
貫通、声も出ずそのまま死に至る。
そこまで見える。
ノヴァ。
しかし起こったのは死ではなかった。
サタンに叩きつけられ、急転直下、地の底まで叩きつけられる。
地球と呼ばれる狭間を超えるスピード。
地獄への入口。
地獄門は開かれる。
そして、本来悪魔の産まれる場所、地獄へと辿り着いたのである。
一瞬何が起こったのかが分からなかった。
死しか頭の中にはなかったので、何も分からなかったが。
たった今思い出す。
サタンと再び相見えることになった。
そうだ、悪魔は地獄でしか、死ねない。
アザゼルはあたりを見回した。
全体的に黒と紅に染まり、闇がすぐそこに控えている。
人々の悲鳴も聞こえる。
先の黙示録により、地球上のほぼ全ての人間は死滅した。
「これだけの罪を犯しておいて…」
「悪魔に罪はあれども罰などないのだ。」
その通りだ。
人を殺す、不幸に陥れるなどといったことはするが、罰などない。
それがいわゆる仕事なのだから。
だとすれば、なおさら悪魔はなぜいる?
世界の均衡を保つためか?
ならば神は天使だけでよいのではないか、と考えたりしないのだろうか。
均衡のために人を不幸にするというのは一体?
「サタン、お前にこの世界への答えはあるか?」
「どういう意味だ?」
「疑問に思わないか?この世界の全てに。」
「何を言っている?そんなものはあるまい。」
もはや話にならぬ。
もう少し、もう少しだけなら。
戦える。
刹那。
互いに交差し、敵の元いた位置へ。
互いにしばらくの静止。
…くっ。
アザゼルの体は、倒れた。
同時に。
サタンの体も、倒れた。
唯一効果のありそうな攻撃、それは相手の結界の隙をつくこと。
普通に考えれば思いつくだろうが、ここまでの戦いだと、もはや本能での戦いなのだ。
そのためには彼の心に隙を作り、結界への注意を散漫にし、こちらに惹き付けなければならなかった。
二人は倒れている。
ただまだ互いの闘志は消えていない。
アザゼルは立ち上がった。
その目には、怒りだけでなく、悲しみも背負っていた。
ノヴァ…。
サタンはその体が光に包まれていた。
「どういうことだ…?」
光が晴れると、サタンは、ルシフェルに変わっていた。
「何?!」
第一の天使悪魔契約。
第八位には、そのようなこと予想もできなかった。
…うっ?!
体に、痛みが走る。
彼らは千年の眠りにつく。
千年が流れた。
フェルサー帝国とアレザズ帝国が、そこにはあった。
ゼファーは千年前の今のアザゼルと同じように、立ち上がった。
to be continued
どうも、龍崎です!
大変遅れて申し訳ない…
ようやくゼファーに話は戻りますw
しばらくは今までの分を取り戻すため、早く書こうと思います!
見てくれていた皆様に、大変な迷惑おかけしました!
ぜひ、次回も見てくれればな、と。
それではぁー




