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八十五 帰ってきた!

紆余曲折はあったけれど、無事にサンダーゲート伯爵領、ロイグに戻ってくる事が出来た。

あの後は捕らえた賊を引き渡したり、デュベル侯爵領のカルイーラに着いてホッグスさんに随分と感謝をされたり。

それから、ジャックさんからは諸々の事に関しての謝罪を受けた。

まだ完全に割り切れていないのか、小声で目も伏せたままだったけれど……まぁ良かったと思う。


カルイーラでホッグスさん達と別れた後は少し道を急ぐために二人で歩いて旅をした。

乗り合いの馬車を乗り継いで移動をするより小回りが効くし、時間を待つ必要がないから、かなり早い。

二人で隣り合って走る分、人工クーラー(仮称)改め、魔力空調を掛ける余裕もある。

誰も見ていないからヘンテコな魔法だって色々と試せるしね。


「うーん、やっぱりロイグの入り口に立つと戻ってきたー!って感じがするなぁ」

「あぁ、分かるな。俺もティーナの村に入るとそんな気がするよ」


よっぽどの事がない限りは、どんな場所であれ生まれ育った所に戻ってくると郷愁にかられるよね。


「ようこそロイグへ。こちらで入場手続きを……は!ミアン様!それにグレン様!」

「ただいま戻りました」

「こんにちは、お疲れ様です」

「おかえりなさい。また大きくなられて!」


この門番をしている兵士の方はもうずっと勤めてくれている大ベテランで、年の頃は50ほど。

僕が生まれる前からずっと街の平和を守ってくれている事になる。


「さて、毎度の事で恐縮なのですが、こちらに記入をお願いします」

「あはは、お仕事なんだからそんなに恐縮しなくて平気なのに。

あ、そうだ、今年から冒険者ギルドに入ったんです。

このギルドカードでも大丈夫ですか?」

「おぉ、そう言えばもうそんな歳になられましたか。

道理で私も歳を取るわけだ……っと、では確認させて頂きます」


僕とグレンはそれぞれギルドカードを取り出して手渡した。

魔力の波形を読み取る魔道具は、ギルドにしかないから提示するだけだけれど。

ちなみに、最近知ったのだがギルドカードを作る魔道具と読み取る魔道具は、聖戦器(アーティファクト)らしい。

ギルドは大昔から存在するって話だし、とんでもない秘密が眠っていそうだ。


「ほお!お二人ともランク3ですか……流石ですな」

「まだまだ。これからも頑張ります」

「ははは、いやはや分かっておりましたが、お二人とも隙がありませんなぁ」


必要な手続きを終えてギルドカードを返して貰い門を潜った。

ロイグの街は人が多く、相変わらず賑やかで、懐かしさも手伝ってこちらの気分も上がってくる。

毎回街並みが少しずつ変わっているところに、少しの寂しさと大きな新鮮さを感じる。


「うーん、デュベル侯爵のカルイーラとロイグって規模は似てるけどさ。

来慣れているからか、ロイグの方が好みなんだよな」

「そっか。僕は生まれ育った街だからそう言って貰えたら嬉しいな」


カルイーラも賑やかだし良い街だと思うけれど、こう、雰囲気が違う。

ただまぁ、じゃあ何が?って聞かれると上手くは答えられないんだよね。


ロイグは領主の城館が少し高い丘の上にあり、その麓から半円を描くように放射状に道が伸びている。

これは昔、領地を与えられたご先祖様が、領主館を中心に街を広げていったかららしい。

ちなみに王都グローミュートは中央広場を中心にして十字に大きな通りがあり、格子状に近い形で街が広がっている。


城館にたどり着き、まずは僕が過ごしていた別館へと向かう。

何だかんだで長旅の後だから、父様に会いに本館に行くには身支度を整えて、先触れを出して貰わなければならない。

別館に勤めてくれている使用人の人達に出迎えられながら、母様の部屋の前に到着した。


──コンコン。


「はい、どうぞ?」

「ただいま帰りました!」

「あら!おかえりなさい」


勢いよく母様の懐に飛びつく。

元おっさんだろとか、演技してるんじゃねぇとか言うなかれ。


「それから、グレン君もいらっしゃい」

「お邪魔しています」

「二人とも疲れたでしょう。

まずはお風呂にして、ご飯にしましょうか!」

「「はーい」」


と、いつもグレンが遊びに来た時の通りに、二人一緒に脱衣所まで来てはたと気付く。

……今更だけれど、そう言えば、一緒には入れないじゃんね……。


「あぁ、うっかり。母様も忘れていたんだろうなぁ」

「悪い、俺も失念していた。ミアン、先に入ってくれ」

「いやいやいや。グレンはお客様なんだから先に入ってよ、僕は──」


二人で押し問答をしていたら、ドアがガチャリと開いて、母様が顔を出した。


「あら?まだ入っていなかったの」

「母様、僕達が二人で入るわけにはいかないなって、今気付いて」

「まぁ、何かあったの?」

「何かって、だって、僕の性別は……」


グレンの方に目を向けると向こうも僕を見ていて視線がかち合った。

一緒にお風呂に入ったら、あの視線が……って、うわわ、顔が熱い。


「あら。あらまぁまぁ。うふふ、そうね。

じゃあミアンはセリーヌに言って今だけシャワー室を借りなさい」

「……?はい」


母様からなーんか意味ありげな視線を感じるなぁ。

少し引っかかるものを感じつつも、別室でセリーヌ達が使うシャワーを借りた。

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