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八十 道中特に問題はないけれど

馬車には御者台と、四つ角にそれぞれ見張り台があって、そこに立って警戒に当たっていた。

高級乗合馬車ではないのでガタゴトと結構揺れがあり、ちゃんと手摺りに掴まっていないと、車体が小石を踏んで跳ねた時に落ちそうだ。

立つ場所にはちょっとした腰掛けがあって座ってもいられるし、日除けであるサンシェードまで付いていて至れり尽くせり……と言うわけではなく。

サンシェードに関しては熱中症を防ぐ意味もあるだろうが、何もなければ強い日光で視野が狭くなるからなのだろう。


なお、これは余談なのだが……。

竜車の時同様、分かりやすく馬車と表現はしているものの、今回車を引いているのは牛に似た獣である。

六足牛と呼ばれ、文字通り六本の足でとても力が強く、タフなのだそうだ。

トップスピードこそ出ないものの、重い荷物を運ぶのに重宝し、以前竜車を引いていた地走竜より随分安価だとか。


季節が夏なだけに日差しは強く、気温も高いが、湿度は低くてカラッとしている。

以前を思えば、この世界の夏はかなり過ごしやすい。

それに魔法があるので日の熱を遮り、自分の周囲から熱を奪う事でエアコンの効いた部屋の中にいるくらい快適である。

ところが、グレンは火力に特化した火系の魔法しか使えないのでとても暑そうだ。

出がけに魔法で作った氷の塊は渡しておいたが、それも随分小さくなっている。

そろそろ昼の休憩にするらしいのでもう一度作って渡そう。


依頼主である商人、ホッグスさんが道の脇、整備された開けた場所に馬車を止めた。

撫でられて目を細める牛、可愛い。


「この辺で休憩にしましょう。皆さん疲れたでしょう」

「いやー、すげぇありがたいです」


グレンの服は汗でびっしょりと濡れていた。

多少通気性の良い素材を使ってはいるが、防具を着込んでいる以上どうしても暑くなる。

防具に魔法を刻んで適温に保つなども出来るのだが……難易度が高く、僕は習得していない。

ちょっとした火を付ける魔道具くらいなら作れても、【周りの温度や体温を感知して適温を維持する】のは難しいのだ。

魔法ならリアルタイムで調整出来るんだけれども。


「凄い汗だね……大丈夫?」


顔や首に流れる汗を拭いながら、水をグイグイと飲むグレンに近付く。

新陳代謝が良いのか、彼は他の子達と比べてもよく汗を掻く。


「あぁ……でも、今まで帰りの乗合馬車の中であちーって笑ってたのがアホみたいだな」

「あはは。ちょっと冷やそうか」

「頼んでいいか?一家に一台、ミアン様々(さまさま)だな」


ありがたやありがたや、なんて拝んでくる。なんて調子の良い奴だ。

けれどまぁ、もしも僕も逆の立場なら同じ事を思うかもしれない。使う魔法は人工クーラーみたいなものなのだから。


「ゔおあ゛ぁー」

「グレン、おじさんっぽいよ?」


そのダラけた様子が面白くてつい笑みが零れる。

まぁ、気持ちは分かる。


「おい、それ魔法か?」


声を掛けて来たのは一緒に護衛任務を受けた冒険者ジャックさんだった。


「はい。まぁ、生活魔法のアレンジ、みたいなものです」


微風を起こして身体を冷やす、なんて魔法は使う人は多いのだけれども、身体の周りを冷気で覆って風を起こしているので暑さに対しての効果は抜群だ!


「ふーん、なんか面白そうだな。俺にも掛けろ」

「はぁ、いいですけど」


別に掛けるのは掛けるからあまり近付かないで貰いたいなぁ。

空気の循環をしなければならない関係上、どうしてもその人の匂いがしてしまう。すぐ近くで掛けると結構強烈だ。

グレンはいつも一緒だからか平気だし、ファラ達も抵抗はないのだけれども。


「おぉ!?何だこれ。悪くねーな!」

「……喜んで貰えたようで何よりです」

「お前、ちょっとは役に立ちそうだな。それに……。

ま、俺がパーティー組んでやろうか?」

「いえ、もう相棒がいますので」


即答でお断りさせて貰う。

それにしても、目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものだ。


「あぁ?」


尤も、彼は自分の感情に些か素直過ぎるところがありそうだが。

不機嫌と不可解を足して二で割ったような表情だ。

断られるとは思ってなかったのだろうか……こんな誘い文句でパーティーを組む人はいない気がするけれども。


「いや、え?なんて?」

「お断りします、と。僕はグレン以外と組む気はないので」


もちろん、学校の皆とはパーティーを組んだりする。

ただ今それを言うと拗れそうだから黙っておこう。

グレンにアイコンタクトを取ると口角を上げていた。

なんか、最近はよく迷惑を掛けるなぁ。


「は?組んでやるって言ってるんだから黙っ、と」


と凄んで近付いてくるものの、グレンが僕の半歩前に出た。


「センパイ、依頼主の前で揉めるのは不味くないですか?」

「あぁ?……ウッゼ」


ジャックさんはホッグスさんがこちらをチラチラと窺っているのを目に留めると、舌打ちをして去っていった。


遠くに行ったのを見計らって人工クーラー(仮称)を停止したら、凄い勢いで睨まれてしまった。

遠くにいる人や移動している人に掛け続けるのってちょっと神経を使うんだよね。

魔法にだけ集中していれば良いなら出来ない事もないんだけれども。


「ありがとう。と言うか、なんか、ごめんね?」

「気にすんな、俺も助けられているし、お互い様だろ。

お前は色々出来るから有名になったら引く手は数多だな」


いやいや、引く手数多って言葉はそっくりそのままお返ししよう。

グレンほど意思疎通が図れて頼りになる前衛はあまりいない。

将来の事はまだ分からないけれど……長く一緒にいられたらいいな。

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