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六十五 やっぱり華があった方が嬉しいもの?


ふと気付いた。

和やかな気分になったのはいいけれど、まだクラフトさんとマイトさんに、性別が変わってしまった事を言っていない。

因みにギルドの方には、試験が終わった後に、こっそり報告をしておいた。

珍しいとは言え、両性だったり、性別が変わる種族が他にいないわけではない為、言い分はあっさりと認められた。


まぁ別室で女性職員にしっかりと事実確認はされたのだが。


さっきの件を内密に話したい、と二人に切り出して、個室のある飲食店に入った。

もう何度目かの説明なので、言葉はすらすらと出てくる。


「そうか、それは大変だな」

「はい、でも周りの方が協力してくれているので、今のところ特に問題はありません」

「俺達も出来る限り協力はするさ」


マイトさんは快く受け入れてくれた。

本当に、僕は人に恵まれている。


「ミアちゃんが女の子に、かぁ」

「あは、えっと、やっぱり変ですよね……」

「いや。寧ろ元々女の子だったんじゃないかと思ってさ」


浮かない顔をしているから、クラフトさんは受け入れ難いのかと思ったら違った様だ。

元はちゃんと男だったんだけど……。


「え、いや、ちゃんと男でしたよ。ね、グレン」

「何故そこで俺に振るんだ」

「だって、ずっと一緒にお風呂に入っ」

「待て、待て待て、確かにそうだが!」


うーん、今更何を慌てているのだろうか。

グレンの顔はちょっと赤くなっている。


「あぁ、うんうん。青少年には少し酷だよなぁ」

「……?何の話ですか?」

「ミアンは頭も頭の回転も良いのに、たまに天然が入るな」

「え、嘘」


天然ボケと言うのは悪く言い換えれば空気の読めない奴の事だ。

昔はちょこちょこ天然ボケと言われ、必死に直したと思ったのになぁ……。

ちょっとショックだ。


「まぁ、それはそれとして。これはしっかり心に刻んで欲しい。

男の感覚は抜け切らないだろうし、元にも戻れるらしいが。

女として冒険者をする期間があるのなら、ちゃんと警戒して身を守れ。

──意味は分かるな?」

「……はい」


女の時は女の身体である事に危機感を持てという話だろう。

同じ様な事を、ナトリィ先生にも言われたけれど、意味するところは少し、違うのだろう。

これは注意されなければ頭から抜ける事が有ったかもしれない。

学園での生活と、冒険者としての活動。双方で気を付けなければならない。


「言うまでもないだろうけど、グレンもフォローをするんだぞ?」

「はい、勿論そのつもりです」

「それならば良し!が、しかし、羨ましいなぁ」


クラフトさんは紅茶を口に付けながら呟いた。


「何がですか?」

「女の子と一緒に冒険なんて、テンション上がらないか?

うちは男同士でムサイったらありゃしないだろ」

「いやいや、女の子って言っても、僕ですから」


僕達もクラフトさん達も、大差ないと思うけれど。

でも、マイトさんもクラフトさんと同感なのか、ゆっくりと首肯した。

基本真面目でしっかり者なのだが意外とお茶目なところもある人だ。


「うむ、もしクラフトが女になったら。

……あぁ、こいつが女になったら俺の手には負えないな……」

「何でだよ!つかお前が女になれ!そしたら」


と言いかけて、「あ、無理だわ」と呟いた。

マイトさんは女の子になってぎゃーぎゃー騒ぐクラフトさんの面倒を見きれない想像をし。

そして、クラフトさんは女の子に冷静な突っ込みを入れられて大ダメージを食らう想像をしたらしい。

今と大して変わらないし、意外と普通なんじゃないかなぁ、と思わざるを得ない。


「グレンも、僕が女の子になって良かったとか思うの?」

「え〝」


おや、意外な反応だ。グレンはギョッとした顔でこちらを見ている。

でもYESでもNOでもなく、「え〝」って酷くないだろうか。


「わ、悪い。でもその、見た目に殆ど変化もないし、正直今までとあまり変わらないと言うか、何と言うか」

「あー」


なるほど、確かに同じ状況でそんな問い掛けをされたら、僕も答えに窮するかもしれない。

嬉しくないと言えば、今の僕と居たくないと言う事になって、嬉しいと言えば男に戻ったら嫌だ、と言う事になってしまう。


「ごめん、僕の方こそ変な質問をしちゃったね」

「お、おう。まぁ気にするな」


そもそも環境が変われば元に戻れる可能性が高いわけだし。

あまり気にしても意味がないか。


打ち合わせもそこそこに、二人と別れて街に出た。

うん、気は進まないけれど当初の予定通り、買い物をしなければね。

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