六十四 相棒
ギルド試験が終わり、僕とグレンは問題なく合格出来た。
「それではギルドカードをお渡ししますね。
お二人はランク3からのスタートになります。
特例ですが、天狗にならず頑張って下さいね。
……って、貴方達には言う必要はないかもしれないけれど」
受付のお姉さんは笑顔で、ギルドカードを差し出した。
「頑張って下さいね。お二人には期待してますから」
「ありがとうございます」
ランク1から3までは鉄、ランク4と5は銅、ランク6と7は銀、ランク8と9は金。
そして、最高ランクになるランク10はミスリルで出来ている。
ずしりと重みを感じるカードには
名前 : ミアン=サンダーゲート
ランク : ☆☆☆
と簡潔に彫られている。
刻印されている内容は非常に単純ではあるが、彫られた部分を良く観察すると幾何学模様が入っているのが分かる。
この模様でどの支部で彫られた物なのかが判別出来るそうだ。
更にカードは簡易的な魔道具になっていて、魔力の波形が登録されているらしく、他人のカードで身分を偽る事は出来ない。
いそいそとギルドカードを仕舞うと、グレンに話し掛けた。
「えっと、ちょっと依頼とか見てく?」
「そうだな……見るだけ見てみるか」
時間的に今から依頼を受けても達成する事は出来ないだろうからね。
それでも、グレンもテンションが上がっているのか、やはり少しウキウキとした様子でクエストボードの前に立つ。
ランク1への依頼は街中での仕事が殆どで戦闘もない。
一人前の冒険者を目指す人にとっての研修、もしくは日雇いアルバイト的な側面もある。
ランク2からは街の外へ出ての活動と、低位な魔物の討伐もある。
ランク3にもなれば一人前として認められて依頼の幅がグッと増えるのだ。
「んー……最近って、魔物の討伐依頼、多いよね?」
「あぁ、そんな気はするな」
サッと眺めていると、目に付くのはそれだ。
冒険者にとっては危険と隣り合わせではあるものの、仕事としては、やはり魔物退治は花形と言っていい。
でも王都付近はもっと治安が良かった筈なんだけれども。
何しろ人の生活と物流の要だ。
高位冒険者が行き来する事もあって、治安の維持にも力が入っていて、少し遠出をしなければゴブリンにすら遭遇しない。
「ここ何年かの間で、魔物が増えたのは間違いないな」
「あ、マイトさん」
後ろを振り返ると、マイトさんとクラフトさんが立っていた。
「戻って来ないと思ったらクエストボードに首っ丈なんだもんなぁ」
「あー……すみませんでした」
そう言えば二人には酒場で待って貰っていて、試験が終わったら結果報告に行くって話をしていたんだった。
「まぁ冒険者になった時は俺らもハシャいだから気持ちは分かるけどな」
「そうだな……クラフトはテンション上がり過ぎてクエストボードに突っ込んでひっくり返してな。
俺まで巻き添えで怒られて散々な目に遭ったんだ」
「あ、ちょ、おま、俺の先輩としての威厳が!」
「それを言うなら、単純な戦闘力なら二人の方が既に上だからな」
「お……おうふ」
クラフトさんはがっくりと膝をついた。
「あは。僕達には絶対的に経験が足りませんから。
頼りにしてます、先輩」
「おおお!任せてくれよミアちゃん!」
「俺達だけでは不安です。色々と教えて下さい」
「グレン!俺に何っでも聞いてくれ!」
「二人共、あんまりこいつを調子に乗らせては駄目だぞ」
「マイトお前なぁぁぁ!」
「あはは」
出会った時と同じ様に、変わらず二人の息はぴったりと合っている。
本当に仲が良いなぁ。
「……ん?どうしたの、グレン」
微笑ましい気分になりながらクラフトさんとマイトさんを見ていたら、グレンが僕を見て固まっていた。
「──あ、いや、悪い。何でもない」
「そう?」
グレンとも何だかんだで長い付き合いになる。
と言っても約五年だが、生まれ変わってからの大体半分は一緒なのだ。
寝食も共にしているから相手の癖や趣向も筒抜けだ。
「ねぇ、グレン」
「ん?」
「僕達もあんな風になれるかな」
視線で笑い合うクラフトさんとマイトさんを示す。
「ああ、と言うか」
「うん」
「別に競うものでもないが……俺は、今でもあの二人に負けてないつもりだ」
そう言うと、グレンは腕組みをして視線を外した。
あぁこれは本気で照れている時の癖だ。
「そうだね。ね、グレン」
「うん?」
「僕はこれから先、何があってもグレンを信じるよ。
だから、宜しくね、相棒」
こんな事を改めて言うのは少し恥ずかしかったけれど、人生で最高の笑顔と共に言えた筈だ。
今日から七月ですね。
投稿を始めて丸二ヶ月が過ぎました。
時間が経つのは早いものです。




