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六十二 いざこざ


次の休みの日、僕とグレンは街に出ていた。

中等部三年……つまり十二歳になるとギルドに加入出来るようになる。

最初の一年くらいは小さな仕事を重ねてギルドの仕組みを覚えるのだが、僕達はミノタウロスやバジリスクの撃破、その他細々とした活躍が認められている。

細かな仕事がなくなるわけではないものの、ギルドの試験で優秀な成績を残せれば、特例として期間を短縮して貰えるみたいだ。


「今日の試験が終わったらさ、買い物をして帰りたいんだけれども、良いかな」

「ああ、構わないぞ。って言っても何買うんだ?」

「えーと、服とか、色々かな」

「ほー、そうか」


母様からの手紙に、何枚か女性用の衣服を買うように書いてあったのだ。

男の振りをする以上は必要ない様な気がするのだけれども……まぁ先達の言う事は聞いておくべきだろう。


冒険者ギルドはクローヌの中心都市だけあってかなり規模の大きな建物だ。

その規模の割に華美な装飾などはされておらず、質実剛健の気風が滲み出ている。

国を跨いで存在し、その独立性を保っているのだから凄まじい機構である。


建物の中に入ると幾つかの目が此方へと向く。ギルド内へは何度か来たが、冒険者達は紳士淑女が多い。

併設された酒場で打ち上げをして陽気になっている人は居ても、基本的に気さくな良い人達ばかりだ。


「おいおい、お子様が何の用だ?」


……とは言え、こういう手合いが全く居ないわけではない。

性質上ちょこちょこと人は入れ替わるし、構成員が善良な人間だけの組織なんて作る事は不可能だろうからね。


絡んで来た男の年の頃は三十手前だろうか。

無精髭を生やし、中途半端に伸びた髪の毛はボサボサ。

ついでに酒の臭いまで撒き散らしている。


「こんにちは。僕達はギルドの試験を受けに来たところです」

「へぇ?そうかそうか。じゃあ俺がお前達の指導員になってやろう。

ありがたく思えよ?ランク6の【鉄拳】のリーガル様がヒヨッコの指導を請け負ってやるんだからな」


早口で捲し立てる男だが、僕達の指導員は決まっていたりする。

ついでに地方ならランク6の冒険者は希少だが、ここはクローヌ王国の王都。

もっとランクの高い冒険者がゴロゴロしているから自慢にはならない。

この人は最近王都に来たばかりのなのだろう。


──しかし、この粘っこい視線はなんとかならないものかね。

本人は意識してなさそうだけれども。


「生憎と俺達の指導員は決まってんだ。悪いな、おっさん」

「んだぁ?……ま、お前はいいや。そっちの嬢ちゃんは俺が見てやるよ」


そう言うとリーガルは僕へと手を伸ばしてきた。

密かに嘆息すると伸びた手を捻り上げて投げ──飛ばそうとするより先に、グレンの手が男の手首を掴んだ。

男が抵抗して拘束を外そうとするものの、ピクリとも動かない。


「指導員は決まってんだよ。俺達の(・・・)、な」


ジロリと男を睨むグレンの目には剣呑な光が灯っている。


「ぐ、ぐう、ぐうぅぅ!は、離しやがれ!」


男からすれば小さな子供に膂力で敵わないのが認め難いのだろう。

拘束されていない方の腕でグレンに殴り掛かろうとするが、僕はその前に男の身体に触れると、電気を流した。

視界を染め上げる白い閃光と共に、パァン!と風船を破裂させた様な音が響く。

かなり強い電撃だが、相手のランク6という発言に嘘は無さそうだし、このくらいの攻撃でなければ効果はないだろう。


「……お前、相変わらず器用な」

「ん?何の事?」

「あんだけの雷撃魔法を使って、俺に余波がない辺りが」

「あぁ、うん」


グレンならあのくらいの魔法は抵抗出来ただろうけれど、影響を与えないに越した事はないよね。


「やぁ、二人とも。災難だったな」


片手を軽く上げて近付いて来たのは、入学試験の為に王都まで護衛してくれた冒険者のクラフトさんだ。

勿論、同じ村の出身で幼馴染のマイトさんも一緒に居る。

今年で二十六歳になった二人は冒険者としてのランクも7に上げている。

何を隠そう、僕達の指導員を務めてくれるのはこの二人である。


「ふふ、そう言うなら助けて貰えると嬉しかったのですが」

「この程度の輩に俺達の助けはいらんだろう」


と言いながらマイトさんは床を舐めているリーガルを一瞥する。

なお、周りの冒険者も僕達の事を知っている人が多いから、あまり心配をしていなかった模様。


「因みにこいつ、大丈夫なのかな?」

「手加減はしたのでじきに目を覚ますと思いますよ」


目が覚めても暫くは痺れているかもしれないが、後遺症等も残らない筈だ。


「無詠唱でランク6を昏倒させる雷撃を撃っておきながら手加減か。

前々からだが末恐ろしいな……ん?」


おや、マイトさんがまじまじと僕の方を見ている。なんだろう?


「ミアン、いつもと雰囲気が違うんだが、何かあったか?」

「そうか?……あぁ、本当だ。何でだろう」


マイトさんの言葉にクラフトさんも同意する。


「え?何か違いますか?」

「えっ」


と、素っ頓狂な声を上げたのはグレンだった。


「グレン、何か心当たりがあるの?」

「いや、えっ、マジで……言ってるみたいだな」


そこで何で頭を抱えるのかなぁ?


──あ。うん、そっか。思い出したわ。あはは。

あまりにも違和感がなくて忘れてた……。

ルビのミスがあったので修正しました。

多い自覚はありますorz

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