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六十 そこで!?


自分のクラスへ向かう道すがら、誰に事情を話しておくかを考える。

なんだかんだで付き合いの長くなった面々には話しておこうかと思うが、あまり広め過ぎるとナトリィ先生の好意を蔑ろにする事になるだろう。


例えばしっかり者のファラやクロード、オウルなどには話しても問題ないと思う。

逆にネヴィスやローセスなんかは会話をしている内に、皆の前でうっかりと洩らしてしまうかもなぁ……。

まぁ、中等部三年で同じクラスになったのはグレンだけだから、それぞれ機会を見てからにしよう。


グレンがガラガラと音を立てて教室の扉を開く。

少しだけ僕達の方へ視線が向くものの、すぐに外された。

まだ新学期になってあまり日が経っていないので、仲の良い子は少ない。

今まで一緒のクラスになった事がある子なんかは、ちょこちょこと挨拶をくれた。

今のところは誰にも気付かれていないようだ。

うーん。悪い事をしているわけではないけれど、隠し事があるというのは、どうにも変な心持ちになるなぁ。


「誰も気にしてないみたいだね」


隣を歩くグレンに小声で話し掛ける。


「まぁ、知っていなきゃ少し雰囲気が違うかな、で疑問に思わないのかもな」

「そうだね……って、あ」

「どうした?」


よくよく考えたら──ファラとクロードには言うつもりだけれども、例え隠そうとしても露見しそうだ。

人は他人にあまり興味を持たないから、多少雰囲気が違っても気にせず流してしまうものだ。

……だからまぁ、世の女子は髪型や服装の変化に気付かれないとプリプリと怒り出すのだが。

あの二人は雰囲気が違うと思ったら、その原因を見つけようとするから、絶対にバレるなぁ。


なんて、一番最初に気付くのは二人の内のどちらかだと思っていた僕の予想は、あっさりと外れる事になる。

授業後の休み時間に特に目的もなく、校舎内をふらふらと散歩していた時に、ネヴィスと行き合った。

手を振り笑顔で此方へ歩いて来た彼女だったが、近付くにつれ怪訝そうな表情になっていった。

そうして至近距離まで近付いたところで


「……ミアン、だよね?女の子だったの?」


と、小声で言われた。これには流石に驚かされた。

ネヴィスは人の変化に敏感な方ではない。

先程の例えで言えば、髪型を少し変えたくらいなら気付かない。


「──え、っと、何故?」

「何でって……匂いが違うもん」

「匂い!?」

「うん。昨日はちょっと男の子よりの匂いだったのに、今日は完全に女の子の匂いがする」


僕の胸元ですんすん鼻を鳴らしながらそんな事を言う。

休み時間の喧騒があり、小声での会話だから周りには聞こえてないと思うけれど、目立っているのでちょっと離れて貰った。


「う、うーん。ちょっと事情があるんだ。

後でちゃんと説明するから、内緒にして貰ってもいい?」

「ん、分かった」

「ちなみに、その匂いって他の人も分かるかな?」

「そうだなぁ……多分だけど、嗅覚の鋭い種族の人だと分かっちゃうかも」

「む、むむ、そっか」


んー、どうしよう。

狩りに使う魔法なんかだと空気の流れを変えて相手に匂いが伝わらないようにするとか。

後は匂いそのものを無臭に変える、とかするんだけれども……常時展開の魔法を増やすのはしんどいなぁ。

香水なんて付け始めたら逆に違和感が増すよね。


「匂いか、匂いね……どうしたらいいかな?」

「うーん。まぁ周りに人が居るならちょっと離れてたら分からないと思うよー。

二人だけになる時とか、近付く時だけ匂いを消したらどうかなぁ?」

「あー、なるほど。ありがとう。助かったよ」

「どう致しまして──後でちゃんと説明してね」


ネヴィスはにっこりと笑って自分のクラスへと戻って行った。

僕は引き攣った顔で手を振る事しか出来なかった。


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