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五十九 説明


朝食を取ってから少し早めに寮を出て、担任の先生のところへ来ていた。

中等部三年の担任は、初等部一年の頃のランドバーク先生とは違って、妙齢の女性教師だった。

話が話だけに、運が良かったと言える。


「ナトリィ先生。おはようございます」

「おはよう、ミアン君、それにグレン君。何か用、かし……あら?」


書類を書いていたナトリィ先生は僕の方に振り返ってから、少しだけ首を傾げた。

普段と受ける印象が違うのだろう。瞳の色と体型と、8:2くらいの割合かな。

明確にここが違う、と分かるのはそれなりに顔を突き合わせている相手くらいだろう。

僕の口から説明をしても良いのだけれども、母様からの手紙をそのまま渡した方が取っ掛かりとしては分かりやすいと思って、手紙を読んで貰うように頼んだ。

目を通し終わったナトリィ先生は顔を上げると、僕の顔をまじまじと見詰めた。


「……ええとミアン君の事だから、たちの悪い冗談じゃ、ないわね」

「はい、もちろんです。どうしたら良いでしょうか」

「お母様の手紙には、基本的に学園のルールに従う旨と、自由に出来るところはミアン君の意思を尊重するって書いてあるわね。

寮の部屋に関しては……」


ナトリィ先生は其処で言葉を止めると、ちらりとグレンを見た。


「ミアン君が選んでくれて構わないわ。

体質を考えると女子寮に移動は難しいから、空いている高等部の個室に移るか、今のままの部屋か、ね」

「僕だけ今から高等部の寮に移動って、目立ちません?」

「ええ、目立つのは間違いないわね。

でも部屋に戻った時、他の人に気兼ねをする必要がないのが利点よ。

後は部屋毎にお風呂がある事かしら。

流石に男子寮の大浴場に入れる訳にはいかないから。

今のままの部屋だとグレン君と一緒で、お風呂は……寮内に小さなシャワールームがあるから、それを使って貰う事になるわ」


うーん……一人だけ高等部は、ちょっとな。このままで良い気がする。

部屋の荷物も多いし、引っ越すのも手間が多い。

浴槽に浸かれないのは目を瞑ろう。

後はグレンに、現状維持で良いか聞かないとね。


「グレン、僕は今のままの部屋が良いのだけれど、どうだろう?」

「ん、ああ、俺は大丈夫……つか、個室っていっても、見知らぬ年上ばかりの男子寮は居辛いだろ」


グレンはコクコクと首を縦に振った。そうなんだよね。

初等部、中等部の間は寮内で年上の先輩とも交流があったから、知り合いがいないわけではないが、人間関係の密度に関しては比べるべくもない。

……まぁ選択肢がないなら何とかするしかないのだけれども。


「不便を掛けてごめんなさいね。

色々な種族が集まるこの学園でも、性別が変わる種族や中性の種族なんて滅多にいないから、別に寮を作るわけにはいかないのよ」


ナトリィ先生は、眉間に少し皺を寄せて眉を八の字にしながら答えた。

敷地的な問題や維持管理の問題、様々な方向から考えて稀に出る事例の為に寮を増設するわけにはいかないよね。


「いえ、こちらこそ手間をお掛けしてすみません。

後は何とかしますから大丈夫です。ありがとうございました」

「ところで、性別が変わってしまった事は、皆に説明した方がいいかしら?」

「え?」


話すべき事は話したかな、と思っていたらナトリィ先生がそんな事を言ってきた。


──あ、そうか。説明しなければ男子寮に居ても目立たないのか。

同室のグレンが知っていて、協力してくれるなら大部分の問題は解決出来る。

実技の時間の着替えがちょっと問題だけれども、トイレに行って着替えるとか。

それで、一年経って高等部の個室寮になったら女になった事を伝えればいいのかな。


「……なるほど、説明しない方が角は立たないかもしれませんね」

「そう?なら一部の教員や学園長だけに報告するわね。

人の口に戸は立てられないと言うし、伝える相手は最低限にしましょう」

「お願いします」


うーん、流石は先生。

視野が広い……と言うか、僕の視野が狭いだけか。

説明しないって言う発想が無かったよ。


僕はグレンの方に身体を向けて、軽く頭を下げた。


「ごめんね。ちょっとの間は迷惑掛けるかもしれないけれど……」

「あぁ、まぁ、気にすんな」


グレンはニッと口角を上げて僕の頭に手を置いた。


そう言えば、あれから僕とグレンの身長差はほんの少しだけ縮まった。

僕が百四十センチメートルまで伸びたのに対して、グレンは百六十を超えたところ。

成長期の早い女の子の中にはグレンに迫るくらいの子もいる。

とは言え、これからグレンの成長期が来たら、どのくらいまで高くなるのやら。


「んー、貴方達なら分かると思うけど……。

男として振舞っていても、身体は女の子なんだって認識はちゃんと持つようにね?」

「分かりました」

「もしも何か分からない事や困った事があったら言って頂戴。私に出来る事なら協力するわ」


この学園の先生方は本当に良い先生が多い。

まぁ、教員数が多いから変わり者や曲者もいるんだけれども。

ナトリィ先生に礼を言って職員室から出ると自分のクラスへと向かった。


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