五十七 言い訳
ベースキャンプへ帰り着くと、既に学園の生徒達は引き払った後で、何人かの教員が残るのみだった。
この場に残っている教員や、捜索に出ている教員は戦闘関連の技術を教えている面子で構成されているようだ。
「な、君達は!?」
驚いて駆け寄って来る教師に事のあらましを説明する。
まぁ当たり前と言うか何と言うか、僕とグレンはお説教を受ける事になる。
問題なのは、
教師の目を盗んで勝手に探しに出た事。
力量の分からない敵に挑んだ事。
重傷だったとは言え回復魔法を使った事。
その辺は全て覚悟の上だったから特に文句もなかったんだけれども、グレンは不服そうだ。
そして、何より一番怒りを露わにしたのはファラだった。
「ミアンとグレンの行動の何が悪いんですか?」
「いや、さっきも言った通り──」
「二人が来なければ、私とローセス君は生きていませんでした」
「それはそうかもしれんが」
「結果として私達を助けて、二人も怪我もなく帰って来ました。
私には何が悪いのか分かりません」
しかも、割と冷静かつ理論的に怒っていらっしゃる。
言っている事自体は正しいから先生もどう説明しようか困っている。
そりゃそうだよねぇ……。
とは言え、ファラの気持ちは嬉しいのだけれども、先生の言い分も分かるのだ。
「あの、先生」
「な、なんだ?」
「僕は独断で森に入り、二重遭難になる危険性を認識していました。ごめんなさい」
しっかりと頭を下げて謝る。
「む、うむ……」
「でも、ファラとローセスの二人が戻って来られないのは、何か理由があるからだと思いました。
人探しの魔法を使って探している時に、戦いの気配を掴み、その場に向かいました」
「何故、わざわざ戦場に向かったんだ?」
「そこが戦場なら、二人も近くにいると思いました」
「……そうか。それで?」
どうやらこの先生は冷静に話を聞いてくれそうだ。
「僕の探知範囲にファラとローセスが入ったものの、僕達も敵に見付かってしまいました。
敵を引き連れて二人を巻き込む訳にもいかず、交戦して倒しました。
その後、二人と合流をしたものの、ファラは重傷でベースキャンプに戻って来る事は困難でした。
大怪我を治療する場合の危険は承知の上で、回復魔法を施しました」
「──回復魔法の危険性とは?」
「傷の悪化、肉体の変質、体力の消耗など。
その結果、治療対象が死に至る場合がある事です」
「うむ……そうだな」
教師は目を瞑って暫く考えた後、一つ頷いた。
「ミアン君の主張は理解したし、正しい。
しかし、何の沙汰もない訳にはいかない。
……この理由は分かるかな?」
「違反者に罰が無ければ、軽く考えて違反を犯す者が出るからです」
「ふ、ふふ、その通り。なに、沙汰とは言え表向きの物にしておこう」
最後に僕達へと顔を近付けてこう言った。
「私の立場では大きな声で言えんが……。
良くやってくれた。私は君達を誇りに思う」
「──ありがとうございます」
それだけ言い残して、持ち場へと戻っていった。
一連の流れを聞いていたファラは、一応の納得はした様だが、それでも不服そうだった。
グレンも分かった様で「しゃーねーなー」なんて呟いている。
「ごめんな、俺のせいでこんな事になって……」
「ん?ううん、ローセスのせいじゃないよ。
助けに向かう判断は自分の意思でしたんだから」
「そりゃ、そうかもしれないけどさ」
「うーん……それじゃあ、今度珈琲を一杯、ご馳走してよ、ね?」
そう言うと、ローセスは苦笑をした。
「はは、そんなんで良ければいくらでも。ありがとう」
「あら。じゃあ私も一緒にご馳走するわ」
「あはは。ありがと」
「俺にも奢ってくれよ。珈琲は苦手だから紅茶で」
「は?しょうがないわね」
「なんで俺だけそんな態度なんだよ……」
「うふふ、冗談よ」
うん。皆が無事で、本当に良かった。




