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五十 休み時間


クラスが別れてしまったグレンやファラ、ローセスとも、機会があれば会いに行っている。

授業間にある休み時間は十分じゅっぷんしかなく、Hクラスであるファラとローセスには中々会いには来られない。

Hクラスはトイレの前にあるので、その帰りに少し顔を出すくらいだろうか。


教室に入ってファラとローセスを探すと、大体の場合はあっという間に見つかる。

ファラはその雰囲気と人だかりで、ローセスは身体の大きさで、良く目立つのだ。

パッと見て、見つからない時は、他クラスへ遊びに行っているか、所用で席を外しているかのどちらかである。


「おはよー」

「お、ミアン!おはよう!」


Hクラスに入り、手を軽く上げて挨拶をすると、ローセスは満面の笑みで手を大きく振って返してくれる。

その様は千切れて吹っ飛んで行くのではないかと思うくらい尻尾を振り回す大型犬のようである。


「トイレに行ってたのか?」

「うん、その帰り」

「誘ってくれりゃ、俺も行ったのに」


他クラスに来て連れションのお誘いを掛けるのもなぁ。そもそも、僕はいつも個室に入るので一緒にトイレへ行ってもあまり意味はないし。

そう言えば、ローセスに男子制服で初めて会った時は、他のクロードやファラと同じように、凄い驚きようだった。

というか、今でも納得していない節がある。

まぁ、多分、そのうち分かるだろう。きっと。

寮に入っている友人達は、お風呂で裸の付き合いをしているので、疑う余地はない。


「──ところで今日の放課後に時間があるなら、また特訓に付き合って貰えないか?」


ローセスは、少しの会話の後、そんな事を切り出した。

学園には広いスペースがいくつもあり、大きなものでは数百人単位の模擬戦が出来るくらいのスペースもある。

流石は王国随一の施設を誇る、国立の学校である。

広場のうち幾つかは使用の申請が必要だが、自由に使っても良いスペースも多く、放課後は熱心な生徒達で賑わう事が多い。


「おぉ、熱心だね。今日は暇だから大丈夫だよ」

「楽しそうな話をしているわね」


ファラはいつの間にか、人だかりから抜け出して来たようだ。


「あ、おはようファラ」

「おはよう、ミアン。二人で特訓をするなら、私も混ぜて貰っても良いかしら」

「僕は良いよ。ローセスは?」

「ああ、もちろん、こっちからお願いしたいくらいだ」


僕とファラの近接戦闘力は大体同レベルなので、非常に良い訓練になる。

ちなみに少し差が開いてネヴィス、その下にローセスやグラントが位置している。


「んー、じゃあ、他の皆も誘ってみる?」

「いつも助かるよ。そうして貰って良いか?」

「うふふ、今日こそグレンを袋叩きにしましょうね」

「え、あ、うん、はい」


ファラが綺麗な顔に真っ黒い笑みを湛えている。

顔が一流の芸術以上に整っているだけに、変な凄みがあってとても怖い。

僕とファラが二人で掛かればなんとか良い勝負が出来るくらい、グレンの実力は隔絶している。

学年どころか学園全体でもトップクラスだろうし、学園側が特別に呼んだ剣術の教師と拮抗する辺り、規格外中の規格外だ。

うーん、同年代で比べれば僕やファラも大概だとは思うのだけれどもなぁ……。


「じゃあ、自分のクラスに帰るよ。戻る途中でグレンとグラントにも声を掛けておくね」

「悪いが頼む」

「よろしくね、ミアン。また後で」


Hクラスを出ると、てってこ歩いてBクラスへと急ぐ。休み時間の残り時間があまりない。

さて、グレンは……自分の席でグラントや他の友人と話をしているみたいだ。


「えっと、皆、話し中にごめんね。グレン、グラント」

「お、どした?」


グレンとグラントの周りにいた生徒達は、気を遣って場所を空けてくれた。


「ファラやローセスと放課後に、剣の練習をしようって話をしてきたんだけれども、一緒にどう?」

「ああ、いつものか。行くよ。グラントは?」

「俺も参加するよ」

「おっけー。それじゃ、また放課後に」


約束を取り付けられたところで、丁度休み時間の終了を告げる鐘の音が鳴る。

別れの挨拶だけをして、急いでAクラスへ戻った。


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