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四十五 休日4


僕とグレンは、帰る旨を伝えて楽屋から出た。

座長と呼ばれていた男性は落ち着いたら必ずお礼をする、と言い残して捜索に集中した。

僕達は帰るとしよう。その劇場まで少しだけ寄り道をして、ね。

それで見付けられなかったら僕達は手を引く事にした。

確証がないままに僕達がスラム街を彷徨うのは流石に無謀だ。


「ねぇグレン。荷物を落とす場所は、何処だと思う?」

「馬車の大きさから通る道はある程度は絞られるが、降ろす場所は……。

人通りの少ない道か、目立たない路地の入り口か、もしくは賑やかな場所で人に紛れるか」

「同感。運び出しの人間と御者がグルだと考えれば敵は最低で二人。

馬車と大道具を途中で放棄する可能性も考えると、早くしないとね」

「あぁ、だな」


人の間を縫うようにして走り抜けながら、お互いの考えを纏めてゆく。

僕はもちろん、グレンも身体の小ささを上手く使っている。

馬は二頭、運ぶ物の大きさ故に幌はなく、白い布が被せてある馬車。

劇場の近くは人通りが多くて馬車も大した速度を出せなかったはずだ。


「グレン、あれ!」

「いたか!」


条件に合う馬車を前方に見付ける事ができた。

この距離と道程で該当する馬車ならば、可能性は高いはずだ。

御者に露見しないよう、慎重に飛び乗って、被せ布の中を確認に向かう。

荷物の影から飛び出した見張りが、僕に対して刃を突き出すが、それを受け止めるのはグレンに任せる。

視界の端で金属が擦り合わされて、耳障りな音が聞こえた。


「当たり、だ!」


タンスの中に隠されていた麻袋。

風の魔法で閉じてある紐を切って開くと、気を失ってぐったりとするリスカータさんがいた。

まずは、この人の安全の確保が最優先だ。

僕はリスカータさんを抱き抱えると、迷わず馬車から飛び降りた。

グレンの方も見張り役を昏倒させて確保し、問題なく離脱したようだ。

襲ってきた相手は決して弱いわけではなかったのだが、この辺りは流石である。

速度を上げて走り去ろうとする馬車は、周りに人の姿が多い事から無理に停止させるのは控えた。

リスカータさんと犯人の片割れが確保できたので良しとする。


「グレン、大丈夫?」

「こっちは平気だ。ミアンも問題はなさそうだな。

リスカータさんは?」

「ん、大丈夫そう」


一先ずリスカータさんを劇場まで送り届ける事にした。

何事かとこちらを窺う周りの目が痛いが、まぁ仕方がない。

楽屋に入って彼女の無事を報せると、座長さんは目を見開き、安堵の涙を流した。

リスカータさんの命に別状はなく、じきに目を覚ますだろう。


「なんと、なんと感謝をしたら良いか!リスカータが無事なのは君達のお陰だよ、ありがとう……!」

「いや……知ってしまった以上は見て見ぬ振りはできませんから」

「ふふ、飄々としてますけれど、グレンは正義感が強いんですよ」

「ちょ、喧しい」


グレンは、腕を組むと床に視線を落とした。

頬が少し赤くなっている。


「ははは。ああ、そうだ、君達に何かお礼をしたいのだが、何が良いだろうか」


僕とグレンは顔を見合わせた。お礼、かぁ。

僕達は幼く、あまり大きな額の金銭を貰うのは少しまずい。

何が妥当なんだろうか。


「んー。グレンに任せた」

「ええ?あー……じゃあ、大人になるまで無料で観劇させて貰う、とかどうだ?」

「お、いいね。僕は嬉しいな」

「もちろん、うちの劇団が続く限りでも構わないよ!

だがそんな事で良いのかね?」

「はい」


結局、無期限で自由に観劇が出来る、という事に決まった。

グレンも想像以上に舞台が面白かったようだ。

一流のプロが集まる劇団の演目がフリーパスってのは嬉しい。

そう伝えたら、座長さんは目尻を下げて喜んでいた。

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