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四十一 入学式2


国王陛下が元の席に戻り、進行役の教師がまた口を開いた。


「新入生歓迎の言葉。在校生代表、三年Dクラス フェンネル君」

「はい」


呼ばれたフェンネル先輩は、静かにしっかりと通る声で返事をして出てきた。

二つも年上になるとやはり、少し大人びて見える。そう言えば昔は年上の先輩の言う事は絶対だったっけ。

特に中学に上がり、部活動を通じて上級生とよく交流をするようになってからは、どこか、先輩は自分とは違う超越者のように思っていた気がする。

自分が上級生になって、あぁ先輩もただの人間で、迷うし間違えるし、不安を持ったりするんだと理解したものだった。

フェンネル先輩は少し強張った顔で壇上に上がり、それでも堂々と新入生歓迎の言葉を読み上げた。

手に持った原稿を読み切った時に、少しホッとした顔をしたのだけれども、下級生達にはきっと分からないのだろう。


「では続いて、新入生の宣誓。新入生代表、一年Hクラス ファラ君」

「はい」


ファラはまさに威風堂々という言葉がぴったり当てはまるほどの様子で壇上に上がる。

壇上で振り向く時に、長い髪がふわりと流れたのですら、意識して動かしたように見える。

見目の麗しさといい、立ち振る舞いといい、役者が違うなぁ。

これは別にフェンネル先輩が悪いのではなく、ファラがおかしい。

原稿などは一切持たず、一度として言葉を噛む事も、言い淀む事もなく、最後まで話し切ると、一礼をして壇上から降りていった。

やっぱりちょっと化け物じみている。

もちろん中身は普通の女の子だとは分かっているのだけれども。これで六歳とは末恐ろしい。


在校生と新入生の言葉が終わった後はそれぞれのクラスの担任の教師が紹介された。

Aクラスの担任はもちろんランドバーグ先生なのだけれども、周りは畏まった礼装の中で、服装はジャージのまま。

うん、彼もある意味、恐ろしい人物である。


すげー度胸だ。


他のクラスの生徒達も呆気に取られてぽかんとした顔だ。気持ちは僕もよく分かる。

けれど、他の教師達は眉を顰める程度なので、いつもの事なのだろう。

担任になる先生は、割と若い。二十代から高くて四十代だ。

やはりクラス担任というのは体力を使うからだろうか。

教鞭をとっていた友人も大変そうだったからなぁ。


「以上を持ちまして、王国歴一三二二年度の入学式を閉会致します」


入場の時と同じように、拍手に送られながら大広間を後にした。

そう言えば、僕からでは父様と母様は見えなかったなぁ。

本当は新入生代表になって良いところを見せたかったのだけれども……まぁファラには完敗したので致し方があるまい。


---


一度教室に戻り、翌日から授業が始まる旨や、朝のホームルームが行われる時間、必要なものを確認して本日は解散になった。


僕とネヴィスとオウルは、グレンとグレンの友人であるグラントと合流して、五人で昼食を取る事にした。

学生食堂自体は、試験の時に開放されていて利用をした事がある。

美味い早い量が多い、と学生に嬉しい三拍子が揃っているのである。

ちなみに安くもあるのだけれど、在学生は学生証を提示すれば無料で利用が出来るので省く。


「今日からクローヌ学園の生徒かぁ。未だに実感できないよ」


そうポツリと言葉を零したのはオウルだ。

アシンメトリーで片目に掛かるくらいの長さの紺藍色の髪と瞳。

その外面の印象に反する事なく、物静かな性格だ。


「あぁ、あたしもです……」


自信なさげに答えたのはネヴィス。大人しそうな性格をした二人は、価値観も合うらしい。

難関校に合格したという結果がある以上は、二人とも既に光るものを持っている筈なのに、自信はあまりないようだ。

自分の得意分野を磨いて、確たるものにできれば、自らに自信を持つことができるのだろうけれど……。

まぁ、もう少し時間が必要なのかな。


「確かに、試験の会場を見た時は人の多さに驚いたぜ。

これだけの相手と競うのか、ってな」


そう話すのはグラント君。体格は平均より少し大きいくらいかな。


「そうだよね。僕もライバルの多さにびっくりしたよ。

合格発表の時は緊張したなぁ……ま、誰かさんには笑われたけれどもね」

「くく、涼しい顔をしてる割に耳が小まめに震えてる様子が面白くてなぁ」


おいばか、耳の事を他の人の前で話すな。


「へぇ、なんか、ほんとに意外です。なんでもできそうな感じがするのに」

「魔法試験の時はあんだけ目立ってたしな」

「そんな目立ってたのか?んー……印象に残ってんのは自由演技で踊り始めた奴くらいか」


目立つためにやったのだから、こう言われるのなら成功なのだが、何か気恥ずかしいな。


「だから、こいつだろ」

「はぁ?ん、んー?……おぉあ!?」


僕を指差すグレンに、驚いて仰け反るグラント。

流石にリアクションが大袈裟だと思う。


「あ、そうそう。あたしもびっくりしました。

今日の自己紹介の時に、男の子だったんだーって知って」


話の見えていなさそうなオウルは、訝しげな表情で首を傾げていた。


「え?えっと、どういう事?」

「あー、ミアンはさ、魔法試験の時に派手な演出で目立ってたんだけれどもな」

「試験の時は私服で、女子だと思ってたんだよ。

今は男子制服を着ているからな。全然一致しなかったぜ」

「──へぇ、そうだったんだ。なるほど」

「えーと、あれは別に女の子用の服ではないよ?」


僕は頬をかきながら答えた。

まぁ母様が魔法試験の衣装にと用意をしてくれた服は、ヒラヒラとした飾り付けもあって、見栄えが良かったのは否定しない。

でも、パンツスタイルだったし……って。

おいこらグレン、含みのある視線を寄越すな。最終試験は別だ。


昼食を食べ終わっても、他愛のない雑談は暫く続いた。

お互いに顔と名前を覚えられたし、初日から知己ができたのは喜ばしい事である。


これからの学生生活が楽しみだ。

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