二十一 戦闘試験2
グレンの番が来た。思った通り、試験官はあいつだ。
やっぱり何事か話をしているみたいだけれど、話し声は聞こえない。
魔法で風でも操っているのだろうか。後でグレンに聞けば良いと思って、暴くのは止めておいた。
「試験を始めよう。どこからでもおいで」
僕の時とは偉い違いだ。
二人の立ち合いは静かに始まった。じりり、じりりとお互いの間合いを取り合っているようだ。
そして動き出してからの応酬は速い。
遠くから見ていても視認が難しいほどの速さで剣が打ち合わされる。
しかし……動きと剣速自体は先程、僕が最後に放った斬撃の方が早い。
それなのに、対する試験官は非常に受け辛そうにしている。
一合、三合、十合……まるで、そうなるのが決められていたかのように、試験官の選択肢がなくなっていき。
──グレンの切っ先が試験官の首元でピタリと止まった。
「うむ、こりゃ参った」
試験官は苦笑をしながら両手を上げた。
うーん、胸が空く思い……なのだけれど、これはこれで釈然としないなぁ。
まぁ結果良ければ全て良しか。
二人はまた少し会話をしているみたいだ。
さっきみたいに言葉が届かないよう細工をされているらしく、内容は聞こえない。
グレンが少し照れたような、誇らしげな笑みを浮かべている。
あら珍しい。
「お疲れ様、見事だったね」
「おう、サンキュー」
「ところで、えーと、何を話してたの?」
「んー……君は将来剣神になれる、とかなんとか」
グレンはぽりぽりと頬を掻きながら答えた。
なるほど。随分と持ち上げられたようだ。
剣神というのがどれほどのものかは分からないけれど、グレンならこの世界で並び立つ者が居ないほどの剣士になれるかもなぁ。
「ところで、最後の試験って何になるんだろうね」
一日の休みを挟んで、最後にもう一日試験がある。
その内容は、戦闘試験終了後か、試験最終日に明かされる事になっている。
今まで聞いた話だと、鬼ごっこ、かくれんぼ、と遊びのようなものから
ある議題についての討論や、一つのものを皆で工作する……なんてものまで様々。
ちなみに開催をしなかったなんて年もあるようだ。
「剣で解決ができるものが良いな」
「ふふ、グレンらしいね」
面白いやつだ。本当に脳筋である。
まぁグレンはよく考える脳筋で……うーん、それは脳筋か?
と疑問に思わないでもない。
「ミアンはどんなんがいいんだ?」
「僕は……魔法で解決できるものならいいなぁ」
おう、グレンの視線が生暖かいぞ。
「逆に、グレンって苦手な事はあるの?」
考える脳筋グレンは意外(失礼)にも、頭の回転と閃きは良いし、魔法の扱いも上手い。
剣の扱いに比べればそれらは一歩も二歩も劣るのだけれども、剣の扱いが特化し過ぎているだけだ。
「あー、俺なぁ、社交界?って苦手意識があってさ。
貴族の集まる場所とかお腹が痛くなりそうだ」
「なるほど。ふふ……ちなみに僕も貴族なんだけど?」
「ははぁ〜、ミアン様〜。なんて、畏まって欲しいか?」
「お、おおぅ、見てよ、凄い鳥肌!」
「そこまでかよ!」
なんてお互いに笑い合っていたら、背後から人が近付いてきた。
この気配は……。
「良いですね、それ」
僕等の試験を担当した、試験官だった。あー。
「お疲れ様です。今日はありがとうございました」
「お疲れ様でした。あー、ところで何がいいんですか?」
おいばか脳筋グレン、やめろ。それは地雷だ。
……いや、会話を聞かれていた時点で遅かったか。
こいつの言う、良い、は大体良くないのだ。そんな気がする。
「ははは、それは後でのお楽しみ、という事で」
「はぁ……そうですか」
「さて、もうそろそろ戦闘試験も終わるよ。
次の試験内容が発表されるから、集まってね」
「はい」
おう、今日中に発表されるみたいだ。
多分グレンのあまり好きではない試験が、ね。
視点の切り替えってしたくないのですが、主人公が周りからどんな風に見られているか
を描写するのに視点の切り替え以外の手段が思い付きません……笑
現在六十二話途中までで視点の切り替えはないのですが、あった方が分かりやすいんですかね?




