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十九 魔法試験


筆記試験を終えて、その翌日。今日は魔法試験だ。

試験官の出す条件に合わせた魔法を五分、自由演技でアピールをする時間が五分の、合計十分だ。

なので試験を受けている時間より待ち時間の方がはるかに長い。


「聞いてなかったけど、グレンって魔法は使えるの?」


と、待ち時間を一緒に過ごしている友人に問いかけた。

グレンは本当によく目立つもので、同年代の中では身長が文字通り頭一つ抜けている。

まぁ、もちろん、高いところから視力を強化して見渡す必要はあったのだけれども。

事情があって今日はいつもの髪型ポニーテールではないので再会をした時には驚かれた。


ちなみにグレンに聞いた「使える」の意味は内魔力が主となる身体強化ではなく、外魔力を使う魔法の事だ。


「おう、使えるぜ」

「へぇ、そうなんだ。なんで今まで使わなかったの?」

「切った方が早いし」


脳筋発言ありがとうございます。


「ってのは半分冗談。俺は火を使うのが得意なんだけど、今までの道程だと木に囲まれてただろ」

「あぁ……僕も火の魔法は避けてたもんなぁ」


炎の魔法は燃焼、爆発など殺傷能力は高いのだけれども、周りへの損害が大きくなりがちだ。

今回の試験ではスペースも広く取られている事もあって、何の魔法でも問題はなさそうだ。


「じゃあ、自由演技は火の魔法にするの?」


そう聞くと、グレンはにやりと笑った。


「それは見てからのお楽しみだ」

「さいでっか」

「そう言うミアンはどうするんだ?」

「じゃあ僕も秘密で」


それから暫くは昨日の試験の事などを話した。グレンは意外(失礼)にも筆記試験も得意なようだ。

そうして程なくして僕の出番がやってきた。

受験番号が早いというのは、待ち時間が少なくて便利というべきか、出番が早くて損と言うべきか。


「準備はいいかい?」

「はい」


最初の基礎演技は、試験官の言う通りに魔力を動かし、細かな魔力操作を見られる。


「これは……ふむ、なるほど」


試験官は感心した表情を見せ、満面の笑みを浮かべた。

評価は上々のようだ。


「じゃあ最後に、拳大の魔法でなにか、なんでも良いからあの甲冑を攻撃してみてくれ」


試験官が指を指した先にあるのは、魔法障壁の張られた甲冑だった。

ふぅむ、スタンダードに火球で良いだろうか。胸の前で火球を形作ると、甲冑へと放った。

着弾と共に爆発が広がり、周囲に轟音が響いた。爆煙が晴れて……魔法障壁も甲冑も無事である。

んー、丸ごと吹き飛ばすつもりだったのになぁ。


「……ほう、この歳でこれほどの……うむ。

努力を忘れなければ君は将来、世界有数の魔法使いになるだろう。励みなさい」

「はい、ありがとうございます」

「じゃあ今日は帰って良いよ」


おや?


「自由演技が残っているのでは?」

「ぬ……はは、いや、申し訳ない。基礎演技のあまりの出来の良さに忘れていたよ」

「ふふ、そう言って貰えるなら嬉しいです」

「じゃあ自由演技を見せて貰えるかい」

「はい」


さて、自由演技だ。

僕は母様と相談をして、一番力を入れるのは、魔法試験に決めていた。

どの試験だって一番を目指しているものの、一つが良ければ受かるという性質上、やっぱり秀でたものを伸ばすべきだ、という結論で合致した。

普通の魔法だけでは芸がない。という事で、母様にみっちりと鍛えられたのは──舞踊である。

これはもし社交界に出るようになった時に困らないため、との理由もある。


踊りの経験が殆どなかったので四苦八苦したのは秘密だ。教える母様はご機嫌だったけれど。

それでも三ヶ月もすればマシになり、一年もすれば形になる。継続は力なり、という言葉はほんとに至言だ。


くるりくるりと舞い、ステップを踏み、踊る。

こういうものは自分が楽しまなければ人も楽しめない。まだまだ上手くはないけれど、精一杯の笑顔を見せて心を込めて踊ろう。

指の先どころか髪の毛先まで神経を通わせて、リズム良く、メリハリを付けて。


手を動かせば空気が動き、手を鳴らせば雷が走り、地を踏めば炎が巻き起こる。

音楽は僕の魔法が奏でる風のそよぐ音や、火の花弁が燃える音、または弾ける紫電。

火、水、氷、風、雷、光、複数の魔法を同時に行使して緻密な操作を繰り返しながら、踊る。

五分なんてあっという間だ。


最後の締めくくりは踊りの中で形にした物。

周りからすれば踊っている最中に、徐々に槍が出来上がったように見えるだろう。

紫電で作った槍。意匠にはサンダーゲート伯爵家の家紋。


空高く飛び上がって槍を手の中で回して逆手に取り、甲冑に向かって投げた。

命中と同時に、音と衝撃と光が周囲に広がる。

──音や光がそのままだとスタングレネードのような物になってしまうので、別の魔法で上手く低減させている。

当たった甲冑は魔法障壁が消し飛び、ドロドロに溶けていた。


無音の時間が流れる中、誰かが拍手をした。

最初は疎らだったそれが、周りに伝播して、最終的には万雷の拍手になった。

ううむ、目立つのは覚悟の上だったものの、少し恥ずかしいな。

まぁ、それ以上に誇らしいけれども。


「ふふん、どうだった?」

「うん、お前、目立ち過ぎ」


ふはは、と笑っていたら、苦笑を浮かべたグレンに頭をぐしゃぐしゃにされた。

おい、やめろ。

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