十四 旅は道連れ
グレンの鍛錬を終えて、僕達は宿の中へと戻ってくると、丁度カウンターで宿の主人と雑談をしていたアンロさんと出くわした。
「おかえりなさい、ミアン様……と……?」
アンロさんの目線は、僕の隣にいるグレンに固定された。
「あ、こっちはグレン。さっき知り合ったんだ。
グレン、僕がお世話になっている人で、アンロさん。
グローミュートまで一緒に向かってくれているんだよ」
「グレン君ですね。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「グレンも王都の学校に行くんだそうです」
「ほう、そうなんですね。ご両親と一緒ですか?」
「はい。父が付き添いで。今は部屋に居ます」
「ふむ……」
アンロさんは僕をちらりと一瞥した。
僕はその視線の意図が組めず、首を傾げて返した。
「折角ですから、ご挨拶に伺っても宜しいですか?」
「え?はい、大丈夫だと思います」
「おぉ、ありがとうございます」
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「──そうですか、うちの息子と同い年ですか」
「はい。それでですね、ここで会ったのも何かの縁。
二人の仲も良いみたいですし、道中ご一緒しませんか?」
あぁ、さっきの視線はそう言うことか。
確かに、同年代の友達なんて初めて出来たし、一緒に行けたなら退屈はしないだろうなぁ。
「ふぅむ……」
グレンの父親、カイさんは呟くと、並んで立つ僕とグレンを見比べた。
「しかし、ミアン様は貴族のご令嬢でしょう。
うちの息子が一緒で良いのでしょうか?」
カイさんの言葉を聞いたアンロさんが、アッという顔をした。
まぁ、間違える人もいるだろうとは思っていた。
僕の顔立ちは母様譲りだし、髪も長いから、間違えられても仕方がないって自覚はある。
「えっと、僕も男なので大」
「えっ!?」
「丈夫ですよ……って」
と驚いたような声を出したのは隣に立つグレンだ。
おお、整った顔が見事な間抜け面になっている。
しかしブルータ……違った。グレンお前もか。
カイさんも驚いた顔をしたけれど、さすがに再起動が早い。
「これは……失礼致しました」
「いえ、僕は母様に似ているとよく言われますので、仕方がないと思っています」
まだ小さいしね。
おおよそ見分けは付くようになるものの、このくらいの年だと男女で差がない子も多い。
「はぁ、いやしかし……可愛らしいですな」
「あは……ありがとうございます?」
つい疑問形になってしまったが、まぁ、歳が歳だから褒め言葉としてはありなのかな。
それと、グレンはいつまで固まっているんだろうか。
「グレン?」
「……あ?あー、悪い、ミアンって男だったのか」
見えねー……なんてボソボソと喋っているのは、聞こえているから気を付けた方が良いよ。グレン。
なんか耳はいいんだよね。
「まぁ、それはそれとして。
話すのもお恥ずかしい話ですが、旅費の問題がありまして……」
グレン達は普通の乗り合い馬車に乗って移動をしているんだろう。
確かに、アンロさんの馬車は一般的な乗り合い馬車に比べて割高である。
まぁ地走竜やら椅子の質などにコストが掛かっているから致し方のないところだ。
「そこは、ミアン様のためにも勉強をさせて貰いますよ!」
アンロさんは張った胸をどん、と叩いた。
敏腕の商人であり馬車のオーナーであるアンロさんなら、価格の設定はいくらにでも出来る。
父様が溺愛している僕に恩を売っておけば将来的にも得になるという少しの打算と、仲良くなった幼い子供達の出会いを大切にしたいという善意だろう。
これは、父様にアンロさんに良くして貰った事をしっかりと話さないといけないなぁ。
「そうですか……グレンはどうだ?」
「そりゃ、一緒に行けたら嬉しいけどさ。
判断は父さんに任せるよ」
「ふむ、そうか。それではお言葉に甘えても良いですか?」
こうして、四人で王都に向かう事になった。
少し賑やかになって道中の楽しみが増えたね。




