十一 家族と離れて
「あ、そう言えば、母様」
「どうしたの?」
「王都へは、どうやって行けばいいんですか?」
「あぁ……もう間もなくだものね。王都は、馬車に乗って十日もあれば着くかしら。
ロイグからは街道が整備されているから、道程としては楽よ」
「そっか、ありがとうございます」
サンダーゲート領は陸上交通の要衝だ。
乗り合い馬車もあり、商人たちも多く行き来している分、安全でもある。
十一月の二週目が試験の開始日で、人数にもよるけれど、試験自体は一週間程度。
年末年始が近い事もあって、遠方から試験に行く子は、かなり忙しい日程になりそうだ。
受験の申し込みは父様が王都へ出張した時にお願いしていて、既に受理されている。
試験受付は試験の一週間前までに申し込めば問題ないが、前もって申し込める貴族家は混乱を避ける為に、早めに申し込むのがマナー……らしい。
「緊張はしているかしら?」
「えっ?……あー、はい、少し」
母様はくすりと笑って、肩を竦めた。
「あまり、していなさそうね」
「えへへ」
人事を尽くして天命を待つ、とでも言うのだろうか。
そもそもスタートラインから違うし、慢心せずに、出来得る限りの努力はした。正直なところ、これで落ちるようなら逆に諦めが付くというものだ。
「そうねぇ……うーん、うん。決めた」
「何をですか?」
「本当はグローミュートまで私も一緒に行くつもりだったけど、一人で行って、合格して帰って来なさい!」
「は、ええっ!?」
ええぇ、母様、そりゃ流石にスパルタ過ぎやしませんか?
……そんな僕の心の内が表情に出ていたのか、母様はケラケラと笑った。
「うふふふ、一人、は言い過ぎたわね。ちゃんと一緒に行ってくれる人は付けるわよ?」
あぁー、すげー吃驚したよ……。
六歳の身で初めての一人旅、更に十日間の道程とか、少しばかり洒落にならないよね。
ここが日本だとしても、見知らぬ人達とバスの乗り継ぎで、試験申し込み日までという期限有りの十日間の旅。
行き先は初見、大雑把な地図のみで携帯電話やGPSはなし。
宿は現地で見付けて場合によっては野宿、道中は野生動物との遭遇も有り得る、と。
そんで僕の見た目は六歳児だ。余計なトラブルに巻き込まれる可能性も高い。
こちらでは更に危険が多いわけで……やれと言われればやるけれど、出来るならちょーっと遠慮したい。
「ただね、今までミアンには、いつも親しい人が近くに居たわよね?
ここから遠く離れた王都の学校に入れば、私やジーア様、ガイル、セリーヌ……誰も近くには居られない。
──だから、今回の旅で周りに慣れ親しんだ人が居ない環境に、少し触れてみて欲しいの」
そう言えば、今まで何をするにも、大体は誰かが側に居てくれていたっけ。確かに不安はあるかな。
……でも、僕の中身は良い歳をした大人だ。
それに、本当に不安なのは、送り出す父様と母様に違いない。
「はい」
だから二人に心配を掛けまいと、しっかりと頷いた。




