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武具乙女  作者: ふきの精
第一章
7/41

6

 「はじめまして、私のことはヤトと呼んでね。よろしく」


 「私はエンテと申します。よろしくお願いします」



 私とエンテもウイナに挨拶をする。

ウイナはカチューシャにロングスカートのメイド服姿をしている。

「武具乙女」はやはり男性のプレイヤーが多いのか、

女の子の露出は高めなんだよね。


 女主人公である私の着ているスカートも膝上丈とはいえ、ショートに近いくらい。

エンテなんていわゆる絶対領域と呼ばれる太ももが眩しい姿だし。

それに比べるとウイナの姿は逆に珍しいといえるかもしれない。

肌色部分が極端に少ないしね。

「武具乙女」にはかなりの数の女の子が登場するし、

イラストを担当する人は、露出を減らすことで個性を出そうとしたんだろうね。

髪はブラウンに近い金髪で、サラサラとしたロングだ。

かなりの美人さんだし、

こうやって楚々として佇んでいるとTHE・メイドってかんじだね。



 「そういえばウイナはその姿になって違和感とかあるの?」


ウイナは不思議そうに首をかしげるが、ゆっくりと微笑んで首を振る。


 「いえ、不思議とそのような違和感はございません。

 このような人の形をとるのは初めてですが、まるで当たり前のようにかんじます」


 ふむふむ、エンテの時と同じみたいね。変に混乱されたりするよりは良いんだけど、

この力って「武具乙女」で当たり前だったからなのかな。

現実の世界になった今、何か別の大きな力が働いているような気もするけど。

まぁわからないことを考えてもしかたないか。



 「とりあえずはウイナの力が見たいから、このあたりの魔物退治をしましょうか。

 エンテは数が多い時以外はウイナにまかせてね」


 「はい、マスター」


 「かしこまりました、お嬢様」



 私に対する呼び方にも個性があるね。

たしか男性アバターの時はご主人様呼びだったっけ。

それはそれとして、お嬢様呼びするお付きのメイドがいるとか、

ほんとに貴族のお嬢様と間違えられそうだ。




 魔物はほどなくして見つかる。あれは森子鬼が二体か。

まだ距離はあるから、こっちに気が付いてない。


「それじゃあ、あの魔物をお願い」


「はい、ではいきます」



 ウイナが森子鬼に向けて弓を引き絞る。んん…結構胸があるな。

「武具乙女」のイラストでもそこそこあるようには見えたけど、

実際に間近で見るとなかなか…。


「マスターから色欲を感じます」


「お嬢様、目線がイヤラシイです」


二人から同時に突っ込みが入りました。いやごめんごめん。戦闘に集中だよね。



 気を取り直したウイナが再び魔物に狙いを定める。

何もない空間から引き絞った弓に輝く矢が生まれる。

次の瞬間弓から矢が放たれた。


フォォン


 そんな音を残して輝く矢が森子鬼の頭に突き刺さる。

おぉ、ヘッドショット!

もう一匹の森子鬼が突然の襲撃に警戒する。きょろきょろと頭を巡らせ……

こっちに気が付いた!

けどその時は再びウイナの弓に輝く矢が生まれていた。


フォォン


 再び放たれる矢。こちらに向かってこようとした森子鬼の頭部に命中する。


 結局その場から動くことなく、二体の魔物は地に倒れ伏した。

しかしウイナも強いね。

「武具乙女」ではそこまで攻撃力が高いキャラではなかったんだけど。

エンテにしてもそうだけど、どうも「武具乙女」達は基本スペックが高い気がする。

それに矢が自然と生み出せるっていうのは強いよね。

普通は矢切れの心配もしないといけないし、費用も馬鹿にならないもんね。


 「すごいね、ウイナ。 こんな遠くから頭に命中させるなんて」


 「いえ、メイドの嗜みですから」


 いやいやどんなメイドですか、それ。異世界のメイドは物騒なの多いな。



 その後私達は順調に魔物退治を行っていく。

エンテ一人の時と違って安定感が違うね。やっぱり数は力だよ! 

まだ二人だけど。

実質私は戦力になってないからなぁ。

一日限定の「スペシャルスキル」があるとはいえ、対象が悪魔・アンデッド限定だし。


 そういえば死人使いがいるんだっけ。

死人使い本人には効果ないだろうけど、使役するアンデッドに対しては攻撃できる。

仲間になった二人ともアンデッドに対して強い力を持ってるし、

死人使いと戦うフラグじゃなかろうか。

危険人物とは会いたくはないけど、三人の力があれば、

アンデッドなんてなんぼのもんじゃい!

ばっちこいってかんじだね。







 「おやまぁあんたたち心配してたんだよ!」


 私達が宿に戻ると女将さんからすごく心配された。ひょっとして死人使いかな?


 「北にある洞窟で岩鬼のもっと強いやつが発見されたそうだよ。

 あんたたちが遭遇したんじゃないかと、気が気じゃ無かったよ」


 岩鬼の上位種――というと岩大鬼と岩魔鬼あたりだろうか。

岩大鬼は岩鬼をさらに大きくしたような…

ゴブリンにたいしてのオーガ的なかんじなやつだね。

「武具乙女」でも最初は小人のような岩子鬼が

だんだんとモンスターのごとくなっていってたし。

岩魔鬼は岩鬼と同じくらいの大きさだけど、魔法を使ってくるんだよね。

「武具乙女」と同じ感じだとすると、それらが思い当たるけど

この世界じゃ私の知らない種類もいるかもしれない。

というか、ビンビンに対死人使いのフラグが立ってた気がするけど岩鬼ですか。

私の活躍の場はまだ先になりそうですね。活躍できる機会があるとすればだけど……。


 「おや、そういやそこのメイド服を着たお嬢ちゃんは初めてみるね」


 「はい、お嬢様を追いかけて参りました、ウイナと申します」


 そう言って綺麗なお辞儀をする。その設定今考えたよね?


 「へぇ…やっぱり貴族の方なのかねぇ

………言われてみれば気品があるかもしれないねぇ」


 女将さんはマジマジと私の方を見てつぶやく。聞こえてますからね、女将さん。




 とりあえずもう一部屋取りたい旨を伝えるも

あいにく今は部屋がいっぱいなんだとか。

昨日は誰も泊ってなかったよね…と考えてたらおっさんの顔が思い浮かんだ。

あぁ、おっさんとあと騎士の人合わせると十人くらいいたもんね。

騎士団の人ならVIP待遇で村長のとこに泊れそうなものだけど、

今は行商の人が来てるし場所がないのかもしれないね。

しかし…この宿屋ってたしか部屋が六部屋くらいだったし男二人同じベッドで………

うん想像したくないな。

一部の人は喜びそうだけど、私はそっちのほうの趣味はなかったからなぁ。


 まぁいざとなれば武具に戻せば寝れないこともないか……と思い、

そのまま一部屋ぶんの宿代を支払った。


 「そういえば騎士の方たちはいまどこに?」


 「それなら村長のとこに集まってるみたいだね。

 討伐の計画を立ててるんじゃないかねぇ。なんにせよ、

騎士の人達がいてくれて助かったよ」


 死人使いの件で来たとはいえ、目の前の魔物は無視できないもんね。

村の人達にとってはラッキーなタイミングだったのかもしれない。




 ということで私達はお昼を済ませて村の南の方へきてます。

魔物討伐の手助け? いやいや魔物を倒して光になってるところを

見られるのは不味いし、なにより私達は戦力とみなされないと思う。

私はもちろん戦えないし、エンテ達も騎士さんにしてみれば保護対象だろうからね。

実際はエンテ達の方が強いとは思うけど。

いやおっさんはひょっとしたらエンテ並みに強いかも……




 「とはいえ、魔物が南のほうに来てる可能性もあるし、慎重にいきましょ」


 「マスター、昨日のような無茶はしないでくださいね」


 エンテから釘を刺される。昨日の私をみてたら慎重などと、

どの口がいうのかってかんじかもしれない。


 「ふふっ、お嬢様はエンテと私の間で待機していてくださいね。

 くれぐれも魔物に近寄りませんように」


 ウイナからも釘を刺される。むぅ……そんなに過保護でなくても。

ちなみにウイナが加入したことで、私の強さも少し上がり体力も増加している。

まだまだ微々たる程度だけど。



 村の南のほうは木々や岩場が少なくなり草原が広がっている。

見晴らしが良い分、魔物にも見つかりやすくなるがこちらにはウイナがいる。

ほぼ先制はこっちのものだろう。


 現れる魔物は「武具乙女」に登場した魔物もいれば、初めてみる魔物もいた。

犬に近い姿をした飢狼犬。犬なのか狼なのかはっきりしろというかんじの名前だけど、

俊敏なうえに数体でチームを組んで襲いかかってくるので結構な強敵だ。

エンテは軽くその動きに対応していたけど…。


 名前は知らないが巨大なバッタの魔物も襲いかかってきた。

こいつは「武具乙女」で見たことがない魔物だ。

驚異的な跳躍から牙を剥いて躍りかかってくるけど、

ウイナにとってはいい的だったみたい。

空中で矢を射られてそのまま撃退していた……。



 つまるところエンテ達にとってはこのあたりの魔物は相手にならないようだ。

まだ二人のレベルをあげてないというのに。

いったい200レベルとかになったらどれほど強くなるのだろう。

結構な勢いでお金が貯まっていくし、今晩にでも少しあげておこうかな。


 「マスター、あの岩陰に不自然な空洞があります」


 狩りの途中、エンテがそれを発見した。


 「ほんとだ。岩陰になってて気が付きにくいけど、奥は結構深そうだね」



 岩場の間の岩陰。まるで洞窟のように地面へと続いている穴がある。

ひょっとしてこれがダンジョンなのかな?

たしか辺境にはよくあるっていってたし。


 洞窟付近には魔物の姿はない。奥のほうには何か住み着いてるかもしれないけど。

入ってみたいけど、何も準備してないなぁ。それにそろそろ夕方になるくらいの時間だ。


 「今日はもう村に戻りましょ。明日準備を整えて再挑戦ということで」


 「たしかにそれがいいかもしれません」

 「明りのような物も必要かもしれませんね」


 ウイナが言うように、明りがないと中を進むのも大変そうだ。



 私達はこの場所を記録しながら村へと帰って行った。


閃光弓 ウイナ

見た目 二十歳前後

髪型 ブラウンに近い金髪のロングヘア

服装 トップス メイドのブラウス  

   ボトムス メイドスカート(ロング)

性格 責任感が強くしっかりもの。主人に奉仕するのが生きがい。

口調 お嬢様


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