26
さて、時刻も夕方になったので
自宅へと戻って食事も済ませて寛いでいたら
ジュネが慌ただしくやって来た。
いったいどうしたのかな?
「主様、聞きましたわ! 私との夜の営みの為に、薬を買われたとか――」
なんでそうなる。ジュネは相変わらずぶれないなぁ。
というか誰がジュネにそんなことを。
「すみません、マスター。
マスターがプレゼントといっていたので、誰に上げようとしているのか
心当たりがないかなと皆に聞いて回ったんです」
エンテ……。たしかにプレゼントとはいったけどね。
まぁみんなに言ってもいいかな。
「この薬はね、
私のスペシャルスキルの力を
回復させる事が出来るかもしれない薬なの」
私はエンテ達にスペシャルスキルの説明と、
それが一日一回しか使えない事。
その一日一回という制約を、
この薬を飲めば打ち消すことが出来るかもしれないということを説明した。
「そうだったんですね。……安心しました」
エンテが最後ぼそりと呟いてたけど、
私が夜の営みに使おうとしてると心配してたんだね。
うん……そんな人に心当たりはないな。
もちろん日本にいたときだってそんな――悲しくなるからこの辺にしとこうね。
「ただ本当に使えるかどうかはわからないからね。
試すには五十万ヴェールは高いし、
また入手できるとも限らないし……」
悩ましいところではあるね。
「まぁそれはそれとして、とりあえずはジャジャーン」
私は竜骨斧を手にとる。うん、重いぃぃ。
「主様、ひょっとしてその斧が?」
ジュネが期待を込めた視線を斧に送る。
「新しい仲間ですね!」
ウイナが微笑んで斧を見つめる。
うんうん、なんだか待たせちゃったけどやっと買うことが出来たよ。
アドナも興味深そうにこちらをみつめる。
アドナはまだ武具が乙女になるのを見たことがないからね。
「ますたー楽しみです」
アドナがにっこりとする。
ふふっ、それじゃあもったいぶるのもなんだし、呼びだしちゃおうか。
みんなが集まっているのを確認して、私は力ある言葉を紡ぐ。
「秘められし魂よここに………サモン!」
わたしが言葉を紡ぐと手に持つ斧の感覚が消え去る。
重かっただけにすごく軽くなった気がするよ。
そして私の前には竜骨斧をかついだ尻尾の生えた女の子が立っていた。
「あたしの名前はディナーナ。お嬢よろしくお願いするよ」
★★竜骨斧 ディナーナ 斧タイプ
竜の骨を用いて作られた石斧。
その特性は斧というよりも鈍器に近い。
使い手に竜の如き力を授けると言われるが、
そもそも使うこと自体に腕力が必要となる。
竜族の血を引く少女だが、リザードマンに間違えられる。
アビリティ
・攻撃時、確率でダメージを+20%する : Lv-1
・攻撃時、確率でクリティカル攻撃が発生する : Lv-1
スペシャルスキル
・ドラゴンパワー 味方全体の攻撃がクリティカル攻撃となる
初めての人間以外の女の子じゃないかな。
エンテ達も武具乙女だから、純粋な意味での人間じゃないけど。
ディナーナの姿でやっぱり一番目につくのはその尻尾だね。
トカゲの尻尾のようなものが生えている。
説明では竜族の血を引くとあるけど、この世界のリザードマンと姿は同じだね。
ちなみに萌えゲー所以か、男のリザードマンは普通に蜥蜴な顔なのに対して
女のリザードマンは人間の女性とあんまりかわらないんだよね。
ただ尻尾があるのと、舌が長いのと、
所々に鱗がついてるっていう違いはあるけど。
髪は純白だね。肌もまた白い。美白ってレベルじゃないね。
その雪のようなサラサラとした髪をツーサイドアップにしてまとめている。
キリッとした表情だけど身長は私と同じくらい。つまり小柄なほうだね。
でも身体の割には大きな斧を軽々とかついでいる。流石は武具乙女だ。
服装は……ジュネに近いね。つまりは露出がすごい。すごいんだけど……
身体つきは私に近いね。つまりは控えめなお胸だ。
「お嬢……なんだか失礼なこと考えてない?」
ディナーナが胸元を手で押さえて不審気な顔をする。
「そ、そんなことない…よ?」
「どうしてそこで疑問形……」
さて、ディナーナの特徴といえば、やっぱりクリティカルかな。
属性選ばずのダメージアップとともに、
クリティカルが発動することで単体の敵にたいして高い効果を発揮する。
クリティカルが発動するとダメージの最終値が二倍近くなるからね。
その分攻撃力以外のステータスが低いから使いこなすのは大変だけど。
「武具乙女」では序盤の戦力が揃うまでの間は使う人が多かったけど、
戦力が揃ってきてからはあまり使う人がいなかったんだよね。
一部の魔物娘萌え~な方たちは好んで部隊に入れてたみたいだけど。
もちろん現実の世界になった今は、使う使わないなんて話はない。
みんな大事な仲間だからね!
そういえば部隊はどういう扱いになってるんだろう。
エンテとジュネとメビウスもいるからこれでフロントは四人になってるけど。
私はステータスを確認してみる。
フロント 3/3 バック 2/3 部隊数 2
フロント 1/3 バック 0/3
予想通りの形になってるね。
部隊として分かれてるけど、同時に存在することはできるみたい。
部隊単位で効果が発揮される力は制限されるだろうけど、
それ以外は大丈夫な感じかな。
ふふっ、やっぱりみんなでワイワイとしたいからね。
呼んだり戻したりとかしなくてよかったよ。
「ちょっ、尻尾はくすぐったいからやめて」
見るとエンテ達が興味深そうにディナーナの尻尾をつついている。
ディナーナは顔を赤くして尻尾をブルンブルンと揺らしているね。
「やんっ!」
ジュネが尻尾の付け根を強く触ると、ディナーナが変な声をあげた。
猫が尻尾の付け根が弱いように、ディナーナも尻尾の付け根が敏感なのかな?
「うぅっ……」
ジュネが悪戯気な笑みを浮かべている。
というか、勝気そうなディナーナが顔を赤くして涙目になってるのは
なかなかにくるものがあるけど、そろそろ止めてあげないとね。
「はいはーい、ストップ。
ディナーナも人型になったばかりでとまどってるだろうし、
悪戯しないようにね」
私の声でディナーナが私の後ろに回り込む。
背中に張り付いてちょこんと顔を出してみんなを見ている。
ふふっ、なんだか子猫みたいで可愛い。
「お嬢様のいうとおりです。
ちょっと珍しかったので悪戯が過ぎましたね。
ディナーナ、ごめんなさい」
ウイナの謝罪を皮切りに皆がディナーナに謝る。うんうん、みんな仲良くね。
触ってなかったアドナも何故か謝ってるけど……。
「ついついディナーナの反応が可愛くて
やり過ぎてしまいましたわ。ごめんなさい」
ジュネもしおらしく頭を下げる。うんうん、そうだね。
「今度はお互い気持ちよくなりましょう」
いや、それはおかしいね。ディナーナが再び顔を引っ込めた。
ジュネはまた正座をしてもらわなきゃだね。
ディナーナの部屋はウイナと同じ部屋ということになりました。
ディナーナもウイナはなんだか安心できるみたい。
ジュネを凄く警戒してたけど、ジュネの心外ですと言う顔は自業自得だよね。
それからの数日は警備巡回の仕事をしつつ、次のダンジョンの目的地を考えていた。
やっぱりまとまった額のお金を入手するためにはダンジョンに行く必要があるからね。
次は馬車を借りる予定だから、少し遠くてもいいかな。
ちなみに警備巡回の依頼は二手に分かれて受けるようにした。
エンテ、ジュネ、ウイナ組みとメビウス、ディナーナ、アドナ組みだね。
私は日替わりで行ったり来たりしてます。ううっ、戦力にならなくて申し訳ないよ。
そんな日々が過ぎていくある日のこと、私の家に思わぬ来客がありました。
「よう、お嬢ちゃん久しぶりだな」
ドアを開けるとニカッと笑う山賊みたいな男の人。ガムンさんだね。
なにごとだろう?
私はリビングに招き入れるとガムンさんがソファにドカッと座る。
「どうかしたんですか?」
いちおうティーレさんとガムンさんには場所を教えていたけど、
訪れるのは初めてだね。
ウイナが紅茶を入れてくれる。
良い香りだね。流石は万能メイドさんだよ。
「クンクンクン。なんだかいい匂いがするな。
やっぱり若い女の子ばかり住んでる家っていうのは、
男くさい騎士団寮とは全然違うな」
そういって鼻をヒクヒクさせる。すごくデリカシーがないんですけど……。
「姫の前でその態度。
騎士どのはもう一度騎士道と紳士としての嗜みを身につけたほうがいいのでは?」
メビウスが静かな、それでいてかなりのプレッシャーを瞳に込めて言う。
ちなみに今はウイナとメビウスが部屋にいる。他の子たちはギルドだったかな。
「お、おぅ。すまねぇ」
ガムンさんは背中をピシっとして座り直す。
そこまですることはないんだけど、
ティーレさんに普段からこんなこと言われてるんだろうなと想像はつくね。
「実はお嬢ちゃんが精力薬を探してるって情報を聞いてな」
ブーーーッ
私は紅茶をおもいっきりガムンさんに浴びせる。
「ご、ごめんなさい」
急いでタオルを持ってきてガムンさんに手渡す。
申し訳ないけど、流石にこれは噴き出さずにはいられない。
「いや、別にかまわねぇぜ」
ガムンさんは涼しい顔をしてタオルで顔を拭う。
そ、それよりも聞かないと。
「あの、どこでその話を?」
たしかに行商のお爺さんに探してほしいと頼んだし、
露店でも何件か尋ねたりしたけど……。
「いや、騎士団の情報網は並みじゃねぇからよ」
質問の答えになってないけど、騎士団が変な情報網を持ってるのは理解できた。
「まぁ探しているというかなんというか……。
使うってわけじゃないんですけど」
「ふむ、安心したぜ……」
「えっ?」
安心したって、やっぱり私が精力薬を使うっていうのはおかしいんだろうね。
そりゃそうか。
「ん…ゴホン。まぁそれはそれとしてだ、今日来たのはそっちの要件じゃないんだ」
ふむふむ、流石にそれだけ聞きに来るほどガムンさんは暇じゃないだろうからね。
「今度お隣のメレテクトで武技大会が行われるんだ。
お嬢ちゃん達は結構な実力があるから、どうかと思ってよ」
竜骨斧 ディナーナ
見た目 十五歳前後
髪型 ツーサイドアップ 髪の色は純白
服装 トップス さらしのような布をまきつけたもの(露出高)
ボトムス 布を巻き付けた服(露出高) パレオ
性格 すこしツンデレ気質。 尻尾の付け根が弱点。
口調 お嬢




