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「姫、その石になにかついているのですか?」
私のにっこりとした顔にメビウスが不思議そうな顔をする。
そういえばメビウスは知らなかったっけ。
「メビウス、その石にはマスターしか見えないマークがあるのです。
そのマークに触れることで、
私達のような存在を見つけることが出来るのです」
うんうん、エンテがメビウスに説明をしている。
さて、説明はエンテに任せて、私は武具を入手しよう。
何が入手できるかは分からないけど、被らなければいいかな。
そういえば被ることってこの世界であるのかな?
私はエンテが二人並んでいる姿を想像する。………
うん、これはこれで可愛いしいいんじゃないかな。
「マスター?」
私がエンテを見てほわぁぁとした顔をしているのを
不思議そうに見つめ返すエンテ。ごめんごめん。
私はギフトシンボルに手を沈めていく。
刃が剥き出しの武器とかあると怖いから、ソロソロと探っていく。
うーん……見つからないなぁ。
ひょっとして空っぽなんてことはないと思うけど――っとあった!
この感触は棒?
私はその棒を握り締めてギフトシンボルから手を抜きだす。
私の手が抜けると同時にギフトシンボルが消え去る。
私が握りしめているそれは一本の杖。
古めかしいゴツゴツトした古木の枝をそのまま杖にしましたってかんじだね。
というかこれってまさか………私の意識に武具の情報が流れ込んでくる。
★★★★万年樹の杖 アドナ 杖タイプ
一万年の長い時を魔力を蓄えながら成長した万年樹の枝。
それをハイエルフの技術によって加工したもの。
見た目はシンプルな木の杖だが、宿る魔力は膨大で
並みの魔術師では扱う事さえできない。
気弱な性格だが、物事を冷静に見きわめる思考力は高い。
アビリティ
・奇数ターンの攻撃が 風属性の横列攻撃となる : Lv-1
・ターン開始時確率で味方全体の速度、回避率を上昇させる : Lv-1
スペシャルスキル
・魔力の奔流 指定ターン数発動のアビリティを毎ターン発動させる
おひょょぉ★★★★がキマシタワー。
★の数での能力値の違いはそこまで大きなものではないんだけど、
やっぱり高レアリティを引くとうれしいね。
まぁレアリティ高いとレベル上げるのも大変になってくるんだけどね……。
アビリティの奇数ターンの攻撃が――
というのは魔法攻撃タイプの武具乙女に多いアビリティだね。
たしか奇数ターン、偶数ターン、三ターンごと、五ターンごとがあったと思う。
そのターン数の攻撃が範囲攻撃になるんだよね。
範囲も全体だったり横列だったり縦列だったりランダムで数体だったりと様々。
このアビリティの特徴はそのターン数になると100%発動すること。
奇数と偶数を組み合わせて毎ターン範囲攻撃とか編成してたなぁ。
スペシャルスキルはその範囲攻撃を毎ターンできるようにするものだね。
正直いって一度も使ったことがない。
便利だとは思うけど、いまいち直接的な効果がでないから地味なんだよ……。
でもこの世界じゃどういった効果になるんだろうね?
「それじゃあ洞窟の外に出てから呼び出すね」
私達は魔物と遭遇することもなく洞窟の外に出る。
洞窟の中だと時間の感覚がわからなかったけど、もうすぐ夕方だね。
このまま野宿することになりそうだし、
街道の途中にあった小屋まで戻って夕食を食べてから呼び出そうか。
周囲がぼんやりと暗くなってきた頃、私達は小屋へと辿りつく。
相変わらず誰もいないね。
積もった埃などをある程度はたいてくつろげるようにする。
「どのような方なんでしょうね」
エンテが興味津津といったかんじで杖を見つめる。
アドナはたしか子供っぽい外見だった気がする。
ひょっとしたら私もついにお姉ちゃん風をふかせれるようになるかも。
これは楽しみだね!
「また個性の強い方なんでしょうか……」
ウイナが不安そうに聞いてくる。
「うーん……たぶんね」
「武具乙女」ではキャラ数が多いから、
見た目だけじゃなくて性格やその他諸々で個性を出そうとしてたから……。
ウイナはそんな中で希少な普通の人だと思うんだよね。
いやウイナも十分個性的か。
食事も終わり、皆が期待を込めた目をして杖を見る。
もったいぶるのもなんだし早速よびだすとしましょうか。
「秘められし魂よここに………サモン!」
杖を持ち力ある言葉を紡ぐ。
言葉が終るとともに私の手から杖が消えるのを感じる。そして………
「求めに応じ参りました。アドナと申します。
ますたーの進む道に幸せが訪れますよう」
私の目の前には万年樹の杖を抱えた少女が立っていた。
目線が同じ位置にあるから、身長は私と同じくらいだね。
金色に輝く髪は肩でそろえられており、幼さを感じさせる。
パッチリとしたエメラルドグリーンの瞳で興味深げに私の姿をみている。
おもわず頬ずりしたくなる可愛さだね。
服装はゆったりめの薄緑色のローブ。
ローブなんだけど、なんでそんなにスリットが深いんですかね。
スリットからは白磁のような肌の足がスラリと伸びている。
おまけにローブを持ち上げる胸元。
萌えゲーだもんね、男の人はこういったの好きだよね……。
幼げな顔だちなのにナイスバディとか絶対絵を描いた人狙ってるよね。
いや、気持ちはわかるけどさ。
「可愛い!!!」
ジュネがアドナに抱きついた。
可愛いもの好きなジュネなら絶対に反応すると思ったよ。
思ったけど、どうして私も巻き込まれて抱きつかれてるんだろう?
これは予想外だよ。
というか、ジュネとアドナの胸が私の呼吸を邪魔してるんだけど。
く……苦しい……。
「ジュネはまたですか!
メビウスはそちらを持ってください。せーので引き離しますよ」
エンテとメビウスが二人がかりでジュネをひっぺがす。
ふぅ、窒息するとこだったよ。
男の人なら豊かな胸に埋もれて窒息するのも本望かもしれないけど、
私は女だからね。
でも柔らかかったね。
なんだか良い匂いもしたし……。
「マスター……色欲を感じるのですが……」
おっと、エンテはなぜ気が付くのかな?
「お嬢様、顔に出やすいですから」
ウイナが苦笑して教えてくれる。そんなにわかりやすいのかな?
「マスターがお望みでしたら、私の胸でいくらでも……」
エンテが赤面しつつ服を脱ごうとしてる。
いやいやなんでそうなるの?
エンテがジュネ化している気がする。これは由々しき事態だね。
「主様、なんだか失礼な事を考えてられませんか?」
ジュネが心外ですという顔をする。そんなことないと思うけどなぁ。
「クスクスクス。みなさん楽しい方たちですね」
アドナがそんな私達を見て顔をほころばせる。
ふふっ、アドナもみんなと馴染めそうでよかったよ。
私達はそのまま談笑しつつ夜を過ごす。
夜の見張り当番は私が最初にすることになったんだけど、
結局みんなも起きてたから意味がない気がするよ………。
そんなわけで帰ってきました、バルーザの町。
仲間も増えたし、湖岸の洞窟に行って良かった。
帰る途中にアドナの戦闘能力を確認してみたけど、
流石に★★★★だけはあるね。
レアリティの差は数値ではそれほどないんだけど、
アビリティの強さに出てくるんだよね。
たとえばエンテとウイナは同じ効果の悪魔・アンデッドに攻撃ボーナスを持ってるけど、
ウイナの+30%に対してエンテは+50%なんだよね。
アドナのアビリティの範囲攻撃は奇数ターンに発動する。
これって毎ターン確定発動スキルが無い
「武具乙女」ではもっとも発動回数が多いタイプなんだよ。
その分横列攻撃になるので範囲は狭くなるけどね。
ちなみに★★★★★には奇数ターンで全体攻撃持ちがいたりする。
属性の相性なんかもあるから、一概にどれが強いとはいえないけどね。
そんなアドナの風魔法は、
牙バッタを複数まとめて光の粒子へと変えていましたよ。
連発は出来ないみたいだけど、
そこまでチャージする時間は長くないとのこと。
これが偶数ターンやそれ以上のターン数必要なアビリティだったら、
もう少し時間が長くなるのかもね。
さて、仲間も増えたしもう家を借りてしまおうか。
流石に部屋を二つとるとかは経済的じゃないからね。
ジュネだったら私とアドナを自分のベッドに寝かせようとするかもだけど。
「な、何もたくらんでないですわ」
私がジュネの顔を見ると、何か企んでた顔をする。
うん、アドナの為にも早々に家を借りよう。
私達は商業ギルドへと向かう。
この間だいたいの目星はつけてたから、
後はまだ物件が残ってるか確認して
契約を交わすだけだね。
私が目星を付けてたのは、
町の中心部から少し離れた場所ではあるものの部屋が五部屋ある大きめな家。
その五部屋とは別にキッチンやリビングルームなどがある。
借家の中ではそこそこ高めだけど、
宿代を二部屋払うのに比べたら安いからね。月払いだし。
「ここが私達の拠点になるんですね」
エンテが家を前にしてちょっと感動したような声をあげる。
外観はまさにファンタジーな家ですってかんじだね。
レンガの屋根に木造の壁。
ちょっと年季がはいってるけど、みすぼらしい感じはしない。
雑多なこの町にしては珍しく周囲に家が密集していない。
大通りから離れてるから、そんなに建物も建ってないんだよね。
それがこの家を選んだ理由の一つでもあるし。
「主様と私の新居ですわね」
「ジュネ、お嬢様と"私達"の新居ですよ」
ジュネの言葉をウイナが修正する。
ふふっ、ウイナには弱いんだよね、ジュネって。
エンテとは張り合おうとするんだけど。まぁそれはお互い様か。
「拠点というのはちょっと大袈裟だけどね。
でもこれでようやくスタートラインに立てた気がするよ」
思えばこの異世界に突然転移してからあっという間の日々だったなぁ。
エンテとの出会い、行商のお爺さんや宿の女将さんとの出会い。
ウイナやジュネ、メビウスにアドナとほんとにいい子達とも出会えたし。
ガムンさんやティーレさんや騎士団のみんなにリゼルさんやハンター仲間の人達。
たぶんすごく運がいいと思う。だって会う人達みんな良い人だったからね。
魔人とか危ない奴もいたけど、みんなとの絆がより深まった気がするよ。
これからもいろんな出会いがあると思うけど、
この子達と一緒なら頑張っていけると思う。ううん、絶対頑張れるね。
よしっ、今日はみんなとこの家で騒いじゃおう。
今ならジュネの行動も大目に見てあげられる気がする。
ついでにこっそりとお酒も飲むんだぁ。ふふっ、楽しみだね。
この時ヤトはまだ知るはずもなかった。
騒ぐどころではないということを……。
お酒など飲むことができるはずがないということを……。
ヤト達は家に入って愕然とする。
家の中にはまともな家具が揃っていなかったことに。
「間取り確認しただけで満足してた……」
ヤトと仲間達の新たな出発となる、最初の大仕事は大掃除となるのだった。
万年樹の杖 アドナ
見た目 十四歳前後
髪型 ボブカットに近い金髪
服装 トップス 薄緑色のローブ
ボトムス 薄緑色のローブ
性格 気弱な性格。あどけない。庇護欲をそそられる。
口調 ますたー




