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武具乙女  作者: ふきの精
第二章
19/41

18

 翌日の朝、目が覚めるとジュネは布団の中にいなかった。

まどろむ頭をなんとか覚醒させて身体を起こすと、

エンテ、ウイナ、メビウスが並んで私を見ていた。



 「おはようございます、マスター」


 「おはよう、みんなどうしたの?」



 エンテがみんなを代表してか、一歩前に出る。


 「昨晩のジュネとの会話、私達皆聞き耳を立てていました。

 まずそのことを謝罪します」


 そういって三人とも頭を下げた。

たぶん聞き耳たててるんだなぁと思ってたけど、

謝ることでもないんじゃないかな。

でも、エンテ達が謝りたいのなら、素直に受けておこう。


 「それと、昨晩ジュネが言ったことは私達皆の気持ちです。

 私達は皆マスターと供にありたいのです」


 うん、そうだね。私は一人一人の顔を見つめる。

エンテの緊張した顔。ウイナの微笑んだ顔。メビウスの真面目な顔。


 「ありがとう。私も昨日ジュネに言った通りだよ。

 みんなといつまでも一緒にいたいと思ってる。それが私の本心」



 エンテの顔が輝く。エンテも不安だったんだね。

そのままベッドで半身を起したままの私に抱きついてくる。


 「わっとと……もう、これじゃあどっちがお姉ちゃんなんだか」


 私はエンテの背中をポンポンと叩く。


 「あれ。そういえばジュネの姿がないけどどうしたの?」



 ベッドにもいなかったし。どこにいったんだろう。


 「お嬢様、ジュネは部屋の隅で反省中です」



 反省中? 私は部屋の隅を見ると、正座しているジュネを発見する。


 「うぅっ、足が痛いですわ。もう反省していますから、許してくださいな」



 聞けば、どうやら私に対する過剰すぎるスキンシップへの罰だとか。

まぁ聞き耳たててたのならばれるわね。

私達は足の痺れで涙目になっているジュネとともに朝食へと向かった。





 「アンデッド討伐の援軍募集?」


 私達は依頼を探すべくギルドに入ると、

リゼルさんからそんな話を聞いた。


 「騎士団からの依頼よ。任意だけど報酬は高めだから、

 受ける人もそこそこいるわよ」


 どうも以前にガングァがいた城塞跡に

かなりの数のアンデッドの姿が確認されたとのこと。

百体は越えてるそうな。

第二騎士団の半数と第四騎士団とで討伐に向かうみたいだけど、

その援軍要請がハンターギルドに来たみたい。

百体とかまた多いね。ひょっとしたらマグノさんが

慌ただしく話を聞きに来たのと何か関係があるのかもね。

私達は援軍としてはいけないけど

(アンデッドが光の粒子になるのみられるからね)

この間の加護の力を使うのは良いかもしれない。

あとで騎士団に寄ってみようかな。



 私は★★ダブルになったのもあって、

新しく受けれるようになった護衛や輸送の依頼を見て回る。

でもお金稼ぎを第一に考えたら、

どこかのダンジョンに潜るのが一番なんだよね。

この間の塔でそれを実感した。

メンバーも五人に増えたし馬車か何かを借りて、

ダンジョン探索に行くのもいいかもしれない。

ギフトシンボルが見つかるかもだしね。


 そんなことを考えながら、私達はギルドを後にした。

とりあえず騎士団へと向かおうか。


 

 騎士団本部に着くと、かなり慌ただしくなっていた。

出撃の準備とかなのかな。

私が建物に近づくと、見知った騎士さんが見えた。

マグノさんだ。何人かの騎士さんに指示を出している。

たしか分隊長っていってたね。



 「こんにちは、マグノさん」


 私は微笑んで挨拶する。


 「これはヤト様。お久しぶりです――

 というほどでもありませんでしたね。どうかされましたか?」


 私は城塞跡にアンデッド討伐に向かうという話を聞いたので、

この間の加護をかけましょうかと話をもちかけた。

マグノさんは一度体験しているぶん、すぐに意味がわかってくれて助かるね。


 「本当でございますか! 

 もしヤト様の加護を頂けるのであれば、我らに敗北はあり得ません。

 団長の元へ案内いたします。どうかこちらに」


 うん、なんだかすごくキラキラした目で見られてるけど、

あくまでサポートだからね。過信が油断に繋がらないと良いんだけど。



 「ティーレ団長! ヤト様をご案内いたしました」


 私は団長の執務室へと案内される。

そこでは束になった書類と格闘しているティーレさんの姿が。


 「これはヤト様、話はきいております。

 加護を頂けるとのこと、騎士団を代表して感謝いたします」


 「あっ、それはいいんですけど、私の加護はあくまで補助ですからね。

 それで油断とかはしないでほしいんです」


 私は実際にアンデッドと戦う事はないから、心配しちゃうんだよね。

そう言うとティーレさんは微笑んだ。


 「もちろんでございます。ヤト様はお優しいですね。

 騎士団の皆は油断も慢心もしないでしょう。

 逆にヤト様のお力を無駄にしないよう、いつも以上に張りきるでしょうね」


 それならいいんだけど、そこまで言われると逆にむず痒いね。

エンテがとなりで当然ですねとか言ってるけど聞き流すとしよう。



 「それでいつ頃出発されるのでしょうか?」


 あまり早く掛けすぎても効果がきれちゃうからね。

ハンターギルドで依頼をだしているなら、すぐに出発ではなさそうかな。


 「出陣は二日後を予定しています。城塞跡に動きがなければですが」


 なるほど。じゃあ二日後にまた来た方がいいみたいだね。


 「それでは二日後にまたこちらに伺いますね」


 「ありがとうございます。この謝礼は必ずいたします」



 ティーレさんは前回にカンテ村で掛けた

加護のものも含めてお礼をしてくれるとのこと。

前回のは私が勝手にしたことだし、

別にいいんだけど先だつ物は必要だからありがたく頂こうと思います。


 さて、二日ほどはこの町に留まってた方がいいね。

警備の依頼くらいなら問題ないだろうけど。



 私達は朝は警備の依頼を受け、

その後は自由に過ごすという事で二日間を過ごすことにした。

私は露店を回ったり、掘り出し物がないかと道具屋さんを回ったり、

ギルドの資料室で情報を仕入れたりとなかなかに忙しい。

あと馬車も見に行ってみた。五人で遠出するならあると便利だからね。

でもダンジョンに入る時どうするかという問題があるんだよね。

みんなダンジョンに入ってる間に馬が魔物に襲われる危険があるし、

私が留守番をするとギフトシンボルがあったとしてもわからないし。

第二部隊を編成出来るようになったら

二手に分かれることもできるんだけどね。


 エンテも私と一緒に過ごしたりすることが多いけど、

いつのまにか青い薔薇の髪飾りを頭につけてた。

やっぱり気にいってたんだね。予想通りというか、

予想以上に似合ってたよ。

そう言ったら、はにかんだように笑顔を浮かべて……

めちゃくちゃ可愛かったわ!


 ウイナはいつも私と一緒にいた。

前だったらもっと自由に過ごせばいいのにと思っただろうけど、

今は一緒にいてくれることが嬉しいかな。

資料室なんかはウイナも色々と調べ物をしてくれて、

次の目的地を話し合ったりした。


 ジュネもよく一緒にいたんだけど、

たまにフラッと消えたりすることがあるんだよね。

詳しく聞いても「悪い虫を追い払ってるだけですわ」

とかいってはぐらかすだけだし。

悪い虫って言葉から変な男が良い寄ってきてるのかな?

ジュネは美人だしスタイルもいいもんね。

男の人もほおっておかないんだろうな。


 メビウスも私と一緒にいることが多かったけど、

ギルドでは自主訓練をしていた。

そうそう、メビウスもハンターギルドに登録をしておいた。

作れるものは作っておかないとね!

ハンターギルドにはハンターの為の訓練所が併設されていて、

ハンターだったら自由に使っていいとのことだった。

何かしら思うところがあるのか、複数のハンターを相手取って

防御を重点的に訓練していたね。

たぶん私をいかに護衛するかと考えてのことだと思う。

一対一なら大抵の敵なら問題ないんだろうけど、

複数を同時にとなると防ぎきるのは難しいんだろうね。

私の体力もかなり上昇してるから、

多少抜けてくるぐらいは問題ないんだけど

メビウスのプライドが許さないんだと思う。

ほんと、私のことを大事に思ってくれてるんだね。

 余談だけど、メビウスの訓練にかなりのハンターの人が参加したがってた。

それも男性ばかりか女性のハンターまで。

スタイル良いし美人だし長身で凛々しい雰囲気も持ってるメビウスは、

男女ともから色んな意味で慕われてるんだなぁと思ったよ。



 そして二日後の朝、私は騎士団本部の広場にいるんですけど

………なにこれ? 

目の前に整列する騎士、騎士、騎士のみなさん。

第二騎士団の半数と第四騎士団と志願したハンターのみなさん。

壇上の上から彼らを見下ろしてるわけですけど、すごい迫力です。

元はただのアラサー女子OLですからね。

会社の朝礼だってこんなに人いなかったし。

私こっそりと加護をかけようと思ってたんですけど……。

たぶん出陣前の鼓舞の意味合いもあるんだろうけど。

全部で二百人以上はいると思う。

ただのおせっかいのはずが、どうしてこうなった!?


 「皆、静粛に。これより聖女様より加護を授けていただく」


 ティーレさんの言葉にシーンとなる広場。

ううっ、緊張するけどやるしかない。

私は手にスキルの力が集まっていくのを感じる。

みんなにかかるかなぁ……かからないと恥ずかしいなぁ……

そんなことを思いながら、両手をみんなに降り注ぐように広げる。

次の瞬間、騎士のみなさんとハンターのみなさんが

キラキラとした輝きに包まれる。

この人数が一斉に輝くなんて壮観だわ!


 カンテ村で経験してない人が多数だったから、

最初は騒然とした感じだったけどしだいに私を称えるコールに変わる。


 「聖女様!!」

 「姫っち愛してる!」

 「聖女様に勝利を!」

 「姫様に勝利を!」


 聖女だの姫だのやめてください。

私は顔を真っ赤にしながらトコトコと壇上を降りる。

うん、加護の仕事はこれで最後にしよう。


 「嬢ちゃんの力は相変わらずだな、

 もっと胸を張ってもいいんだぜ。

 この力があれば俺の剣も冴え渡るってもんよ!」


 ガムンさんが恥ずかしさにうつむいてる私の姿を見て声をかける。

一般人には荷が重いんですよ。

ちなみにガムンさんが総指揮官として出陣する。

ティーレさんからは突撃は控えるようにといわれてたけど、

絶対突撃する気満々だこれ。



 「出陣!!」



 ティーレさんの声で第二騎士団を先頭に

騎士さん達が行軍を開始する。数的には優位だし、加護の力もある。

でも相手も数が多いし、なによりガングァが占拠していた場所だ。

何があるかわからない。

私はティーレさんの横で皆の無事を祈った。


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