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聴力の誘惑

作者: マイケル

 

 恵美と付き合いだしてから、およそ一週間。

 塾で知り合った恵美は、ぼくの通っている高校とは違う所に通っていて、聞くところによると、どうやらそこはかなりのエリート校らしい。

 たしかに、塾でも恵美はかなりテストの成績が良かったし、塾長が出かけてる間に、他の塾生と雑談に興じていたぼくとは違い、恵美はいつもノートとにらめっこして、問題を解いていた。

 そんな恵美の家にお邪魔してみると、外見はかなり大きめの二階建てだったにもかかわらず、部屋はお姉さんと共同らしい。恵美に手を引かれて部屋に這入ると、部屋の中央では、恐らく恵美のお姉さんらしき人が、うつぶせで肘をついて本を読んでいた。

 今日の恵美は、ぼくと家でのデートだからか、かなりオシャレな服を着ていた。しかし対する恵美のお姉さんは、背中の中程まである髪を後ろでゆるく一つにくくり、服装も部屋着らしいショートパンツと、すこしゆるめのシャツを着ていた。

 そのゆるめのシャツは、普通に座っている時でもかなり胸元がだらけているのに、その状態でうつぶせで本を読んでいたお姉さんは、部屋に這入って来た僕の角度からは、恵美より大きめな胸の谷間が見え、淡い桜色のブラジャーまで見えてしまった。

 申し訳ないという気持ちより、ただ単純に興奮してしまった。しかしそれをひた隠しにして、お姉さんを交えて三人で恵美の卒業アルバムを見たり、お姉さんに茶化されたりしている内に、そんな気持ちはいつの間にか収まっていた。

 しかし、遊び始めて一時間後。

 恵美の電話が鳴り、それに出た恵美は、どうやら部活の事を忘れていたらしい。青ざめた様子でぼくに謝り、だいたい三時間で帰って来るから。といって、家を飛び出した。

 飛び出す前に、着替えるからと言う理由でぼくが部屋の外に出されたのだが、その時もお姉さんは、

「メグの彼氏なんだから、着替えくらいで恥ずかしがることないでしょ」

 と、ニヤニヤと笑いながら茶化していた。

 恵美が体操服姿でバッグを担いで部屋から出て行くのを見送った。本来ならここで後日改めて来るために、今日のところは帰るべきなのかもしれない。しかし、時刻は午前十時。三時間後の午後一時からでも十分に遊べるし、それに今日は、恵美に言われて、泊まることとなっていた。

 そのため、なし崩し的にお姉さんと二人っきりで部屋に取り残された僕は、どうしたものかと考えつつ、緊張の面持ちで、年上のお姉さんからある程度の距離を取りつつ、ボードゲームを片付けていたのだが。

「ねえ、彼氏くん」

 と、いつの間にかぼくの背後に回っていたお姉さんは、後ろからぼくに抱き着いて、右肩に顎を乗せて来た。

 思い返せば、この人はスキンシップが結構大胆で、恵美に対しても、初対面のぼくに対しても、かなりスキンシップは激しい方だった。だから、この人にとってはこの程度、何のことも無いのかもしれない。

 ぼくは、動揺に震える声で、何とか応対する。

「は、はい、なんですか、お姉さん」

「いや、君の名前、そういえばまだ訊いてないなーって。何て名前?」

 前後にゆさゆさとゆっくり動きながら、お姉さんは首の後ろから回した両腕を、僕の脇腹辺りに這わせる。

 酷くくすぐったがりということは、どうやら恵美によって流布されていたらしい。ぼくはお姉さんに危害が及ばない程度に身体を動かして抵抗する。

「あ、ちょっと、脇腹をくすぐるのは止めてくれませんか。そこ、駄目なんですって」

「知ってるよ、くすぐったがりなんでしょ? 言ってくれたらやめる」

 くすぐるように、素早く指を掻き立たせるような動きでは無く、按摩に近いような手つきであばらの間をなぞられているため、ぼくは喘ぎそうになるのを必死で堪えて、名前を口にする。

「礼二です、鹿島、礼二」

「ほほお、礼二くん、か。よろしくね」

「はい、言ったので放して下さい、お姉さん」

「そのお姉さんって呼び方、ヤだなあ」

 と、耳元で囁いたお姉さんは、更に僕の耳元へ唇を近づけた。

「二人っきりの時は、ゆかりって呼んでね。いい?」


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