不食人1
無茶をきたす長岡の体に不可思議な変化、身近に起こる奇妙な事件。友人を信じながらも、柏木は奔走するはめになるのだがーーー。
限界を越えたその先。最後に柏木が目にしたものとは?
探偵不在の読み切りミステリー。謎を解き明かすのは、あなたかも知れません。
男は左拳を前方に突き出した。素早く戻し、右の拳を斜め下から上方に突き上げる。程なくして軽く走り出し、夜のコンビニの前で男の足はステップに変わった。
左右に体を揺らしながら、外から丸見えのレジの様子を伺っていた。店員がレンジから何かを取り出していた。それを若い女性客が受け取っている。
男はその場にしゃがみ込むと、シューズの紐を結び直した。
ランニングを始めて一時間。男がこのコンビニの前を通るのは、今日五度目だった。店のドアが開き、若い女性が姿を現す。店の前で跪く男を気にする様子は無い。
女性は温められたものを持って、コンビニ近くの公園西口へ向かって歩き出した。
「いい空き具合だ」
男は胃の辺りを擦ると足を延ばす。ウェアフードを目深く被り、唇の端を歪ませた。そして若い女性の後を追うように、男もまた夜の帳へと溶けていったーーー。




