第一話 出会いと後悔
「ちょっとあんた!大丈夫!?」
僕の今の状況は知らないおばさんに心配されているところだ。知らない村で。
確か僕は屋上から飛び降りて死んだはずである。なのに気づいたらどこかの田舎村のど真ん中に倒れており、通りすがりのおばさんに心配されていたのだ。
僕は空間移動でもしたのだろうか。だとしたらなぜ言葉が通じるのだろうか。僕が飛び降りたのは夜中だ。なのに今は昼間だ。外国に来たというのが自然な考えだろう。でも、実際に日本語が通じるのだ。外国なわけがない。
「いきなり空から落ちてきたからびっくりしちゃったじゃない!怪我はないわよね?どこの人?」
「えぇと・・・東京・・・です。」
とりあえずここがどこなのか確かめる必要がある。
「トーキョー?聞いたことないわね・・・どこの国かしら?」
・・・東京を知らない。このことからここは日本ではない可能性がある。
「日本っていう国なんですけど・・・」
「ニホン?知らないわよそんな国。まだ世界には明らかにされてない所があるけど、そこにあるのかしら・・・」
「あ、あの!」
このままではおばさんの話が終わりそうにないので、ここで自分の居場所を確認することにした。
「こ、ここってどこなんですか?」
「ああ!ごめんな。ここはナイティヴェ王国のビギン村だけど・・・あんたもしかして住むとこないのかい?家に泊めようか?」
予想外にも今日の宿までみつけてしまった。
「じゃあ、よろしくお願いします。」
東京
私は思う。なぜもっと早く自分の気持ちに素直になれなかったのかと。
目の前には棺がおかれており、中には私が大好きな人が・・・神谷君が眠っていた。
感じていたはずなのに、私が照れ隠しに彼にかける言葉が彼を傷つけていたことを。
でも、彼は死んでしまった。私の目の前で。
地面に落ちてグチャグチャになる寸前、彼が笑っていたような気がした。
きっと神谷君なりの復讐だったのだろう。
「畜生・・・なんでこのタイミングで死んじまうんだよ・・・せっかく今までのこと・・・謝って・・・ダチになろうとしたのに・・・」
同級生の一人は、神谷君へのいじめを後悔し、彼との関係を良いものにしようとしていたらしい。
今となっては遅すぎたのだが。
神谷君の父親は葬式費用も出さなかった。むしろ死んで清々したというのは親の言うことではない。
けど、それに気づくのも遅すぎた。
私は周りからツンデレとか言われていたのだが、神谷君は完全に嫌われていると思い込んでしまったのだろう。
「行きたいな・・・」
「・・・る、瑠奈?」
「私も神谷君のところに行きたい。」
「ハハ・・・天下のツンデレ女王がようやくデレたってか?」
「行きたい・・・」
私の心にぽっかり空いた穴は、多分一生ふさがることはないだろう。