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Injured Heart  作者: かがりいずみ


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6/6

保健室

【A wounded healer】


「じゃあな、また来いよ」


金守先生が、セーラー服姿の生徒に手を振っていた。

保健室の前、多分、泣き腫らした目をしていたところをみると、

彼女も先生に相談をしに来たのだろう


「ん?⋯えっと、高村くん⋯だっけ?相談?」

不意に先生が振り向いたので、

高村は身を固くしてしまう。


相談をしに、来たわけではなかった。


「いや⋯」

そういう高村に対して、少し目を細めると、

先生は彼を相談室に招き入れた


「お茶でも飲んでいけよ。相談なくて、暇だからさ」


ことん、とペットボトルのお茶をガラスの湯呑みに入れて出してくれる。


「別に、悩みがなくちゃきちゃいけない場所じゃないしな」

そう言って、笑った。


――傷が⋯視える


心臓の上、まるで赤い花が咲いたように

ジクジクと血が滲み

肉が剥き出した、癒えていない、生々しい傷


金守先生が着任した日、

全校集会で彼を見たときはすでに、視えていた。


きっと、深い、深い、傷


「ん?どうした?」

出されたお茶に手を付けずに、じっと見つめていたのを奇妙に思ったのか、

先生が首を傾げた。


柔らかい笑み

落ち着いた、態度


いろんな生徒たちが、悩みを話そうと思う気持ちが分かる気がした。


「あ⋯っと⋯」

高村は、こうなることを予想していなかったので、なんと言っていいかわからない。

でも⋯


「先生の相談は⋯誰が、聞いてくれるんですか?」

そう言っていた。


金守先生はきょとんとして、自分を指差す。

少しだけ間があって、

高村の言わんとしたことを理解したのか、

薄く笑った。


「いろいろ⋯かな?

 同僚に話したり、自分で考えたり、

 先生にも先生がいるから、その人に相談したり」


そして、

なにか気になるの?

と。


「いや⋯先生は、悩んだらどうするのかなって

 傷ついたら、どうしているのかなって」


はは⋯金守は軽やかに笑う。


「高村くんは、随分優しいね。

 そりゃ、無理していることもあるよね

 しんどいなと思うことも

 そういうときはジタバタするかな

 ああ、そうだ、

 でもね⋯」


ここにいる時は、仕事だからさ

 仕事でいるときは、

  自分のことは、後回し⋯かな?


高村は、少し驚いたような顔をしていたかも知れない。

ぽかんと、していたかもしれない。


先生の傷はとても痛そうで

 きっと歯を食いしばって耐えていて

それでも笑っていて

 笑って人を助けようとしている


大人になるっていうことは

 もしかしたら、こういうことなのかもしれないと


そう思った。

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