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水の国の王子①



「――水は無くなるもの、(あふ)れるものだ。いったいどうしたら…。」



水の国の王子、アクアに求められたもの、『尽きることの無い水』。



水の国は周囲を水に囲まれた巨大な水上国家である。



昔は大地に囲まれていたらしいが、雨が振りやすい土地柄によるものか、いつしか地面は水に埋まり人々は水上で過ごすようになったという。



だからこそ水に困った事など一度もなかった。



それ故に、どこから、何から手を付けたらいいのかも分からなかった。



「魔法を使えばいくらでもでるが、誰だって魔力には限界がある。常に保つことなどできはしない…。」



アクアが頭を悩ませていると不意に声が響く。



『オイラの出番かいッ!?』



ポンッという音と煙と共にアクアの顔の横に現れた生き物。

その姿は古くから(おそ)れられ、(あが)められ、そして(まつ)られてきた。



『龍』



そう形容するのが一番近い生き物だ。



――ただ、その体躯はとても小さいが。



「アクア!何か困りごとならオイラに頼りなよッ!オイラはすごいぞ!何でもできるんだぞ!



――ニンゲン1人くらい、連れ去ってこようか?」



「ポンスケ…それはダメだよ。」



アクアはポンスケと呼んだ存在、龍に諭す。



「人には超えてはならない線というものがあるんだよ。それを超えて行動することは獣と何も変わらないんだ。


ポンスケの事を獣って言ってるわけじゃないよ!


ただ、してはならないことがあるってことさ。ポンスケも龍同士してはならないことってあるだろう?」



「あるぞッ!なるほどなぁ…。ニンゲンは奥深い!だから好きだッ!アクアは特別好きだ!


――ネーミングセンス以外は大好きだ!」



「うんうん。という訳で姫を連れ去るとかそういうのはナシだ。


それでいて僕の困りごとは『尽きることの無い水』なんだけど、ポンスケは何か思いつくことはあるかい?」



アクアが聞くとポンスケは首を傾げる。



「オイラなら勿論いくらでも出せるけどニンゲンにはムリだよなぁ…。むむむ…」



「やっぱりポンスケでもいい方法はでないかぁ…」



二人で頭を悩ませているとポンスケが何かを閃いたような顔で言う。



「そうだッ!水の国の人に聞くのはどうだッ?水のことなら水の国じゃないかッ!?」



すると、今まで和やかだった雰囲気に亀裂が走る。



「――ポンスケ…。僕は、あの国の人達が、嫌いだッ…!あの人達は自国の利益しか考えていない…!それこそ、獣なのさッ…!」



語気を荒げて話すアクアに、ポンスケは泣きそうになりながら話す。



「アクアぁ…ごめんよぉ…。でもアクアも手詰まりなんだろ…?せめて書物とかだけでも一回見に行かないかい…?」



アクアはポンスケが謝る様子をみて反省したのか、少し落ち着きを取り戻した様子で言う。



「ポンスケ…八つ当たりのようなことをしてごめん。


――そう…だね…。書物に何かヒントが書いてあるかもしれないし、一旦戻ろうか。」



「――ようし!そうと決まれば善は急げ!オイラの背中に乗っていきなッ!」



ポンスケはそう言うと窓から外に飛び出る。

そしてアクアが外に出ると、そこには御伽噺で語られるような龍が顕現していた。



「――ちなみにだけど、ポンスケってそんなに嫌……?」



こうしてアクアたちは水の国へ向かったのである。

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