火の国の王子①
「ガッハッハ!皆の者ォ!集まれィ!」
屋敷中に響き渡る銅鑼のような声。
身体を見れば筋骨隆々。
その腕まるで巨木の如く。
問題は全て筋肉で解決。
漢の中の漢。
火の国の王子、フレイ。
「――坊ちゃま!お呼びでしょうかッ!」
「応ッ!聞いてくれ!」
ひと度号令を掛ければ、駆け寄り集まるその集団は、
フレイに負けず劣らずの体躯を屈め、跪く。
「此度かぐや姫は消えることのない炎を所望したぞッ!誰ぞ心当たりのあるものはおるかッ!」
フレイが問いかけるが、集まったもの皆が首を傾げる。
「はてさて…?炎とはいつかは鎮まり消えるもの。消えない炎とはこれ如何に…」
皆が頭を悩ます中、一人年老いた老家臣がぽつりと呟く。
「そう言えば昔聞いた話に、『蒼炎なる焔、一度付けば消える事なく燃え続けるもの也。』という言葉を聞いたことがあるような…」
「でかした爺!!して、その蒼炎なる焔は何処にッ!」
「何ぶん昔のことでしてなァ…」
爺と呼ばれた老家臣はなんとか思い出そうと唸る。
唸るがなかなか出てこない。
そこに痺れを切らしたフレイが上衣を脱ぎ老家臣の目の前に立つ。
「爺!見よ!この上腕二頭筋をッ!大胸筋をッ!この筋肉たちの衝撃でッ!思い出すのだッ!!」
すると唸っていた老家臣の目がカッと開く。
「お、おぉ…!その筋肉…完成された美…!大胸筋はさながありとあらゆるものを支える大地の如き雄々しさッ!そして上腕二頭筋は、まるでそびえ立つ二つの連山………。」
ふと、老家臣の言葉が止まる。
「連山…山…お、思い出しましたぞ!言い伝えによればある山に御わす仙人から授かれると!そしてその山の名は霊峰、不死山…!火の国最北端に位置する山でございますッ!」
「ガッハッハ!でかした爺ッ!やはり全てを解決するのは筋肉よッ!!」
そう言ってポージングをとり始めるフレイを誰が止められるだろうか。
こうして火の国の王子、フレイ一行は『蒼炎なる焔』を求め、火の国最北端へ向けて旅立ったのである。
「我等の前に困難などありはしない!全ては筋肉と共にッ!」