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【完結】使うモノ語り  作者: イヤマナ ロク
なんでも本舗オープン!
13/307

第13話 何もかもが、もう………

「どーだ!さっぱりするだろ。」

浴場でバカ医者はチェンジャーに尋ねる。

バカ医者はずっとバカ医者の身体全てを洗っていた。


「……確かに、何か違う感じだ。」

チェンジャーは今まで陥った事のない感覚に陥っていた。

その感覚で心地良と思っている事に疑問も覚えていた。

2人は湯船に浸かる。


「風呂ってモノはいーだろ。それになんせ1時間も洗ってるしな。シャンプーなんて4+3回、もしくは9-2回くらいやったんじゃないか?まーとりあえずお前の体は温泉卵どころかゆで卵くらいピカピカツルツルにしてやるぞ。」

彼の言う通りチェンジャーの体から汚れは消え去り、肌は光を反射する程輝いていた。


「あのさぁー、」

「何だ?」

「キミ、付喪神の事何処で知ったの?」

バカ医者は手を止める。


「あーそっか知らないよな。アレはユーザとの出会いからだな…もしかしてお前もユーザに会ったのか!」

「ユーザ?いや知らないなー。」

バカ医者は目を丸くする。

「そう?知ってそうな顔なんだけどなぁ…………やっぱ知らなそうな顔だわ。」

「……?」

バカ医者の奇言に首をかしげる。

「まぁつまり、ユーザって人に会って付喪神を知ったんだねー……面白そうじゃん。ボクも会ってみようかな!」

「ホント!じゃあユーザ探してくれるってことだな!爆速でキレイにするぜよー!」

 


「凄い!こんな短時間で怪獣3匹釣り上げるなんて凄すぎます!」

ザッドは既に3体の怪獣全てを釣り上げていた。

「海の男として、当然の仕事をしたまでだ。」

「えぇとても感謝……してるゼェ!」

職員は突然豹変しナイフを取り出す。


「フン!」

ザッドは相手がナイフを振り上げる前に、ツイート相手の腕に絡ませてきつく縛り上げる。

「ぐぅぅ!」

職員に扮していた男は悶絶し再起不能になってしまった。

「突然どういう事なんだ?」

職員の豹変に疑問を浮かべるザッドの耳に聞き慣れた声が聞こえる。


「ザッドー!大丈夫か?!」

「いつもより多めに転がしておりまするー!!」

声の主はユーザとリンだった。

ユーザは慌てた様子でザッドに状況を説明する。

「オレ達騙されてたんだ。怪獣のせいで資源の発掘が進まないなんて全部ウソ!今すぐ怪獣を逃してやれ!釣り上げたんならできるだろ?」

「え?全部ウソ?」

突然の告白に唖然とするしかなかった。


「そうはさせんぞ。」

バブルの職員の服を着た男女が、どこからともなく現れた。

彼らはユーザの顔を見るなり、眉間に皺を寄せるのだった。


「なんで死なないワケ!ホンットムカつく!女心分かれよバカ!」

「おっかない女心だなぁ……」

すると今度は男が

「キョヒョヒョヒョヒョ。ここまでタフだと笑けてきますな。キョヒョヒョヒョヒョ!」

「笑い方のクセ!」

ユーザは次々とツッコむ。

「全く貴様は……何処までも何時までも我々の計画を狂わせてくれる!」

リーダー格の男が叫ぶ。

「お前の取り巻きも充分狂ってるぞ?」

ユーザは彼らの言動に一々ツッコんでしまっていた。


「お前さ、おかしいだろツッコミキャラじゃなかっただろ!」

リーダー格の男がユーザに食ってかかる。

「悪いね。奇人変人どころか奇物変物と絡んでたらこうなっちまった。それにその時の記憶無ぇんだわ。」

ユーザの言動は明らかに嫌がっているが、今の状況を満更でも無い表情を浮かべながら答える。

「大体おかしいのはお前らだろ?何だよオレ殺すついでに怪獣暴れさせるって!地味に怪獣よりオレの優先順位のが高いし…」

ユーザは声色を低くしてわざと大声で呟く。


「文句なら、そんな命令を下した上に言うんだな。そもそもお前が今生きてる時点で計画は失敗した。オレ達に、生きる道はもう無い」

リーダー格の言葉に、他の部下たちがどよめき出す。

「だから……最後に一泡吹かせてやる…!起きろペキオラ!」

男は、おもむろに鏡を取り出しそう叫んだ。


鏡を見てリンが反応する。

「ペキオラちゃん!ペキオラちゃんじゃないの!なんであそこに!?」

「は〜い。な〜んで〜すかぁ〜」

気の抜けるような声でペキオラが喋り出す。


「鏡よ鏡。世界で最も怪獣を怒らせられるのはだーれ?」

「そ〜れは〜この人〜!」

鏡にはある人物の顔が写し出される。

男はその顔を凝視する。すると男の顔が鏡の中の男そっくりになって言ったのだ。

それだけでは無かった。

変貌した顔面は彼らをに、特にユーザ個人に衝撃を与えた。

「……オッオレ?」


目の前の顔は間違いなくユーザであってユーザでは無かった。

彼の風貌は灰色の目に髪は紫と黒と金が混ざったロングヘアなのに対し、ユーザの髪色は黒で目の色は金だからだ。

でもそれ以外の作りは本人が見ても違いが見当たらなかった。


「また謎が増えたな……ハハ…」

ユーザはこの状況に苦笑いするしかなかった。


「ふふふ……これで終わらせる。」

リーダー格の男は完全に呆気に取られているユーザ達をよそに釣り上げられた怪獣達の前に仁王立ちになる。


「見ろ怪獣共!よく知らんが、お前らが怒る顔なんだろオォン!やって見ろよデカブツが!怒ってみろやボケェー!」

男は自らの顔を誇示する様に見せつけ精一杯吠える。だがその姿は小物感満載で実に直視しがたいモノだった。

そのおかげでユーザ達も正気に戻る事が出来た。

テロリストの子分達もその姿を見て呆気に取られていたので、ザッドもいつの間にか戻る事が出来た。


「ユーザの顔と声で小物ムーブすなー!」

ハーズが怒る。

「海の男の耳聞くに足る言葉を喋れー!」

ザッドも怒る。

「どうでもええわ!とにかく金を搾りとりゃそれでいいんだー!」

付喪神達とキンノミヤはあまり関係ないツッコミを繰り返していた。

そんな中リンだけは感傷に浸っていた。

「ペキオラちゃん…何でテロリストなんかの味方になってんだよ…?オレっちが引き戻してやるう!うおおぉ!」

リンは単身でテロリスト達に向かって行く。


「さっさと起きろよ怪獣さーん!!」

「この場の温度感どーなってんだよー!?」

ユーザと男が同タイミングで叫ぶ。

すると声が共鳴し、怪獣達が目を覚ました。


「グラルゥゥガー!」

「キャウラー!キャラー!」

「バアァリュルルゥガァー!」


三体の怪獣は立ち上がりだしそれぞれ咆哮を上げる。バブル全体を包み込む透明な幕にヒビが入り水が僅かにだが漏れ出し始めた。

「「ウソだろー!?」」

リーダー格男を始めとして、取り巻き達はパニックに陥る。

「お前も驚くんかい!」


「こっこれは非常にマズイ!」

さっきツッコミに参加しなかった本物の市長が馬車の中で取り乱し始める。

馬車から飛び降りた市長はユーザに呼びかける。

「ユーザさん!今すぐ逃げましょう。こんな事に巻き込んでしまって本当に申し訳ない!バブルの事はバブルで何とかしますから、ですから」

市長の忠告は本気だった。

だがユーザは


「大丈夫。ここで逃げても依頼遂行出来なかったってキレるキンノミヤと殺し合いになるだけですし。どっちにしろオレに平穏は待ってないんです。」

「そんな……」

「オレ、怪獣1人で倒した事あるんですよ。それに今は仲間もいる。何とかやりますよ。ですから逃げてください。」

ユーザは不自然な程ひょうひょうとした微笑と声色で語りかける。市長はここで聞き入れてはいけなかったが、何故か聞き入れてしまった。


「……分かりました。でも我々もやれるだけの手は使わせて貰います。」

そう言うと、市長は返事も待たずに馬車に乗り込む。馬車の付喪神に呼びかける。

「バッロ!お前のやりたい仕事を与えるぞ。職員たちを救出するんだ。」

それまでぬぼーっとした顔だった馬車の付喪神バッロはシャキッとし出す。

「そうそうキタヨキタヨこういうのだよ!こういうカッコイイ系がやりたかったのよ!」

バッロはハイテンションで走り出した。


バッロは囚われた職員たちを救出するべく、市庁舎を一心不乱に走り回っていた。

「バブル職員の皆さーん聞こえますかー!聞こえるなら返事お願いしまーす。」

車内でキンノミヤに市長が答えていた。

「数日前から付喪神として覚醒したんですけれど、突然こんなつまらない仕事は嫌だと駄々をこね始めまして。どうやらこういう形がやりたかったようです。」

「なるほど……つまり依頼解決と言う訳ですね。依頼料はきっちり後日振り込んでもらえればと。」

「えっえぇ、勿論です。(この期に及んでがめついな。)」


「助けてくれー!ここにいる!」

「今行きまーす!」

SOSをキャッチしバッロは救助者の元へ向かう。

「させんぞー!」

テロリスト兵達が追ってきた。

するとバッロの中から影が飛び出す。


「……全部で3万カレンか。テロリストって意外と稼げないんだねぇ。」

「はっまさか…オレ達の金が!」

テロリスト達の所持金はキンノミヤによって全て抜き取られていた。

「金にモノを言わせて仕事をしてるんだ。チョチョイのチョイよ。」

「ふざけんな、やっちまえー!」


その頃ユーザは怪獣と対峙していた。

3匹の怪獣達は彼に目もくれず暴れていた。そんな怪獣の姿を見てユーザは

「さっき市長にあんな事言っちゃったけどこれは………はっきし言って無理だ。」

ため息混じりに言う。


「はっ?さっきイケそうな雰囲気出してたじゃん!正直カッコいいと思ったのに。じゃあどうすんの!」

ユーザの本音にハーズは愕然とする。

「いや無理なのは倒すって事だ。元いた場所に返すんならギリギリ何とかなるかもしれない。だからここはあまり怪獣を興奮させずにだな……」

「いや、今更それは無いし。こっちはもう臨戦体制何だけど。」

冷静なユーザに対しハーズは怒りのこもった声で徐々に左腕のコントロールを奪っていく。


「待て待て!無いしじゃない。本当に無理なんだってちょいちょい待って!ちょ待てよ!」

ハーズはもう我慢出来なかった。

ユーザの左腕を完全にマインドコントロールしてユーザの体ごと宙に浮き上がる。

超常大陸で始めた会った時のように。


「やい怪獣!食らえーーッ!」

「待てェ!よりによってジラーガかよ!?」

ハーズが狙いを定めた深海怪獣ジラーガは大きな口で全て飲み込んでしまう。

その上額の発光体から高圧かつ高熱の水を噴射する上、水の中でも走れる程の強靭な脚力を持つ厄介な相手だ。

でもハーズはそんな事は気にしなかった。


ジラーガの口に飲み込まれても気にしなかった。

「いや気にしろー!」

「破壊!」

ハーズはジラーガの前歯の後ろ側に拳を叩き込んだ。


「キャ?……ギギキャァーーーァーーーーァ!」

ハーズの一撃は口内に穴を開け、黒い血が噴き出す。激痛に悶絶するジラーガはユーザを吐き出す。

「もう1発!」

今度は頭部の発光体に追撃を叩き込んだ。

「ギャラァァルラァアアア!」

発光体にヒビが入り光を失った。

そして、そのまま硬直し動かなくなってしまった。

「どう?倒せちゃったけど。」ハーズは笑顔でユーザに語りかける。

「ハハッ……そうだな。倒せちゃったなぁ………よりによってぇ!コイツを!1番!やってはいけない!やり方でなぁ!」

ユーザは今までに類を見ない程の怒声で激昂した。

その後、10秒以上ため息が続いた。


「はっ……え?」

あまりの事にハーズは呆然とするしか無かった。

「はぁ〜。やったモンは仕方ないよな。見ろ。怪獣逃げてるだろ。」

ユーザが指を指すと残りの怪獣2匹が元いた場所に逃げているのが見える。

「……ボクの強さに恐れ慄いて?」

「違う。ジラーガが爆発するからだ。」

先程の平常心に戻って彼は説明し出した。


「ヤツの発光体はある一定の強さの攻撃は全く通用しない。が、その一定のラインを超えれば簡単に破壊できてしまう。だがあそこは高濃度かつ衝撃に弱いのエネルギーの塊でもある。そんな所にあんな攻撃仕掛けたらどうなる?」

「まっまさか」

「オレ達全員ドッカンだ。でそれを防ぐには」


「我の力が必要という訳だな。」

ザッドが名乗りを上げる。

「正解!」

「元はと言えば、我が調子に乗って嘘の依頼を見抜けなかった事がそもそもの原因だ。ここからの後始末はさせて欲しい。」

ザッドは自分に問い詰めるように一つ一つ噛み締めるような声で言う。そして踵を返し、怪獣のいた所に向き直る。


「これから最終奥義を使う。お前達はリンを連れて早く逃げろ!」

「え、リン…あっすっかり忘れてた!どこぉ!リンドコォ!」

ユーザとハーズはリンを探すため走り回っていた。


「あそこだ!」

ハーズが指さすとそこにはテロリスト達に轢き逃げアタックを繰り返すリンの姿が。

ターンを繰り返し、ベルを掻き鳴らしている彼の姿は側から見れば完全に族車その物だった。

「おい落ち着け!」ユーザはやっとの思いでハンドルを掴む。

「ペキオラちゃん見つけるまで帰えんねぇかんな!」

「もう無理だ!逃げるぞ!」

「嫌だ!オレっちまだ認めてねぇから、悲劇のプリンスだから!」

「自分で悲劇とか言ってる時点で無理だと思うよ!」

「あっ見つけた!」


リンは何とかペキオラを見つける!

「ユーザ、アレとって、アレ!とって!」

「駄々っ子か!」

なんだかんだ言いながら、ユーザはペキオラを回収する。

「お前はこういうのホント甘いからな〜。」

したり顔でリンは指摘する。

(くっ否定できん!)


「最終奥義!《わたつみ》海神網の陣!」

ザッドが唱えるとザッドの釣り糸は縦横無尽に走り始めた。

そしてある一定の長さになるとある一定の規則に従って収縮し始めた。

収縮した糸は、やがて大きな1枚の網となる。

「ダアアアアアッ!」

ザッドは自分自身を大きく振り上げ、すべての力を込め振りかぶる。

網はジラーガの巨体に丸ごと覆い被さって包み込んだ。

「フウゥンンンァアア!」

そしてザッドはそれを持ち上げ自分が釣り上げた穴に持っていこうとする。


一方ユーザは一心不乱にペダルを漕いで市庁舎の中を走っていた。

「あれ?キンノミヤいない!クソッ後で引き返さなくちゃいけねぇのか」

「いいよいいよペキオラちゃんの方が大事!」

ああでも無いこうでも無いと問答を繰り返しながらも確実に出口に近づいていた。


「良いよなクロスバイクはよぉ、馬車じゃ降りるのも一苦労だよ!狭いし。」

キンノミヤは職員全員を助け出しとっくに市庁舎から出ていた。

バブルの市内はこれといった異変は起きていない。


「……ホントにこの建物内だけの事件だったってワケか。」

「怪獣のいる場所も本来の立ち寄らない場所ですからね。後処理も何とかなるでしょう。」

市長は上手いこ処理するといって、職員と共に市庁舎に戻る。

「公務員も大変だねぇ。ってまだ依頼料金の見積もりしてない!ちょっ」


キンノミヤは市長を追いかける。

その瞬間とてつもない衝撃が彼を吹き飛ばした。

彼はそのまま動かなくなってしまった。


それから一週間程の月日が経った。


バブルの診療所の一室で目を覚ましたキンノミヤは呟く。

「はぁ〜、ユーザも目を覚さないし、一文の付喪神は行方不明。まだ初めて1ヵ月も経ってないっていうのにこのままじゃ倒産だ。」


その目と顔は考えることを放棄していた。

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