裏:出会い_2
フラフラとでも確実に歩く中
徐々に周りがはっきり見えてくる
俺は確かに社内の自席のデスクにいたはずだ
周りは同じような高いビルと街路樹以外、植物のない
そんな普通のオフィス街の一角にある、普通のビルの中に……
なのに、今、なぜか俺がいるのは
鬱蒼とした森を背後に広がる広大な草原
どういうことだ、とパニックになるし、叫びたい
だが、できない
だって、さっきからずっと、小さな女の子が
しゃべらないで、とずっと呪文のように繰り返しながら
必死に汗だくになって、俺を支え、歩いてくれている
目がはっきり見えるようになって
彼女をみたら、あまりの幼さに本当に驚いた
落ち着いたしゃべり方や救助の迷いのなさから
小柄な同年代の、俺は今年28になる、女性だと思っていた
でも、どうみても
彼女はよくて中学生、最悪、小学生くらいにしか見えない
そんな彼女が必死に一つの事を言い続けるんだ
しゃべらないで、と
それに何の意味があるのかは聞けないから分からない
でも、それぐらい叶えなければならない気がして
俺は必死に訳の分からない状況を飲み込み続けた
今、きっと、この場で唯一の味方と思われる彼女が
声をだしていい、というまできっと黙って見せると誓いながら
必死に彼女が進む方向へ覚束ない足で進む
でも、誓いを放りだしたくなるのはすぐだ
歩きながら、遠くからも見えていた
ゲームでしか見たことないような石作りの堅牢な壁
そこまで辿り着くと、大きな、
こんなデカイ意味あんのかって聞きたくなるような
大きな木でできた門を見たとき、マジかよ、とまず言いたくなった
それは飲み込めた
でも、その門の脇に立っている存在を見た瞬間、ムリだと思った
なんてったって、
俺の身長より大きなトカゲが立って、しゃべっている
本能的に全てを振り払って、叫びながら、逃げたかった
そんな体力なかったし、走ろうとすれば、崩れ落ちるだけで
叫ぼうとすれば、咳き込むしかなかっただろう
でも、そんなの関係ない
あまりの恐ろしさにただ、逃げたかった
でも、それでも、できなかった
強張った俺の体にしがみつくようにして立っている女の子がいるから
彼女は必死に俺の衝動を抑えるようにしがみついていた
先ほどまでとは全く違う、支えるようにじゃない
離さないように、離れないように
震える手で必死に俺にしがみついていた
それが俺を正気に戻した。




