表:看視_16
事件の後、ブランと共にこの町を陰日向から護ってきた
冒険者ギルドや商業ギルドのギルドマスターなどの町の重鎮たちが
事件の報復のために、己の権限を越えて、己の全てを使い
事件の首謀者たちを叩きのめし、引責辞任することになった
その後を頼まれたウルドはエリーと相談ののち、受けた
マクロムはバルトクーラを出るつもりがなかったというのも
エリーの気がかりだっただろう
何より
エルムがバルトクーラで冒険者になると言って聞かなかった
そんな流れで、ウルドは冒険者ギルドのギルドマスターとなった
ブランが亡くなる少し前
事件前のルアを知る者たちが集められ
ブランに頼まれた
「どうか、あの子の心がこれ以上閉ざされないように見守ってほしい」
己を中心に害の有無を把握する直感に優れていたブラン
そんなブラン以上に、ルアは感知力が強く
害の有無処か、人の穢れ具合まで感じ取ってしまうらしい
ソレは半魔人として覚醒し、休眠からようやく目を覚まし
全てを忘れた無垢な幼いルアに
人は大なり小なり恐ろしい闇を抱えた化け物だと否応なく突きつけた
清廉潔白な存在だけで成り立つ集落など
きっとどの国、町に逃げようが存在しない
感知を緩める魔道具や呪いは施したらしいが
スキルでない、生来のモノを完璧に制御することなど不可能だ
ルアの精神負担を考えれば、多くの者と交流させる訳にはいかない
だが、鳥かごに閉じ込め、誰かに飼われるような生き方をさせたくはない
だから、ブランはルアの調子を見ながら、その苦痛を知りながら
店を運営できるまでに育て上げた
そして、己が命の限界を悟ったブランは
ルアを託せる信頼のある者たちにルアの事情を話し、協力を要請した
ただ、ルアと交流を持とうとしても、ルアは受け付けない
多分、ブランを失ったら、余計に頑なに他者と距離をとるだろう
とブランは予想していた
だが、そんなルアに交流を強制すれば
きっと、ルアはココから消えてしまう
ブランのいないバルトクーラは
もう、ルアにとって未練のある場所じゃない
今のルアの心は人に対する忌避と不信で一杯だ
そんなルアに人が纏わりつけば、それが善意であろうが
大きな負担になり、いっその事と思い、ここから出て
それこそ、人に見つからない場所に、と逃げてしまうだろう
半魔人として覚醒したルアなら多分
アンスーラの森のような特殊な場所でなければ
きっと森の妖精のように
人との交流を最小限にして、森の中で一人生きていけてしまう
だから、ルアの心が人を受け入れられる程成長するまで
ルアがそう望まない限り、直接関わらず、外から見守ってほしい
そう、ブランは皆に頭を下げた
ウルドを含め、ブランに助けられた者たちは協力を約束し
迷いなく、破れば様々な代償を払う誓約を受け入れ
ルアを見守るにした。




