出会い_2
その頃には意識もはっきりしてきたんだろう
私にしゃべりかけようとする男に、まだダメ、と止める
戸惑うような顔をする男に私は言う
「とりあえず、声を出さずに聞いてほしい
肯定は頷いて、否定は首を横に、分からない時は手を挙げて」
男は頷いた
私は基本的なことから確かめる
「ここは貴方の世界ではない。それは分かるかしら?」
男は頷く
それはそうだろう、今日の門兵はトカゲ獣人だった
それも、獣要素の強い半獣型の獣人
門兵を見た瞬間、
碌に力も入らないはずなのに、男の体がとても強張ったから
きっととても驚いたのだと思う
良かった、と頷いて、私は続けた
「貴方の世界には魔力、魔法はない?そうでしょ?」
男はまた頷く
「この世界には魔力があり、魔法がある
そして、極々たまに
迷い人という別の世界からの来訪者が迷い込むの」
私は一息付き、覚悟を決めてから
男が傷つくだろうことを知りながら
それでも、今一番知りたいだろうことを
なるべく感情を込めず、一番最初に告げる
「迷い人がどこから現れ、どうして現れるのかは分かってない
そして、迷い人が帰還できた記録はないと聞いているわ
……ごめんなさい」
男は、クッと唇を噛み、必死に声を押し殺し涙を流した
そんな男の隣で、私はただ、男が落ち着くまで寄り添った。