裏:相互理解_3
その事に、体が総毛立つほど苛立ちと焦りと怒りを感じ
思わず飛び出ようとした
でも、それまで黙って男を見ていたルアが一言
ダメ、と言った
きっと、それは俺に向けていったのだと思う
結界で見えないし、音も聞こえない、気配も伝わらないはずなのに
なぜか、店内にいるルアは俺を感知していた
ルア自身には結界の妨害を阻む魔道具があるのかもしれない
それについて聞く気はない
ただ、こちらに背を向けたまま
ルアはその小さな背で当たり前のように俺を護ろうとしていた
だが、俺に向けたルアの言葉を
自分への侮辱と取った粗野な男はさらに激高した
そんな男を見ながら、ルアは淡々と言う
「貴方はコレ以降、この店に関する全てから出禁とします」
その瞬間、男が外へはじき出された
疑問いっぱいで頭も混乱しているが
ルアはそれまでのことなど何もなかったように
他の客の相手をするし、他の客たちもルアを気遣うこともなく
淡々と己の注文を済ませ出ていく
理解を超えているができることはないし
ここにいると、ルアが気を使ってしまうだろうと
部屋に戻った
店を閉めてから、めちゃくちゃ叱られたのは言うまでもない
で、ルアがいうには
ルアの敷地には
他者は入口のある正面の門からしか入れないように
なっていて、一度出禁登録されると
以降、門を通ることは絶対にできないらしい
しかも、ルアの結界石は店の結界石と連動しており
出禁された者が店の外でルアを待ち構えても
決して傍に寄れないらしい
というか、一度、視界から消えると
見つけることもできないらしい
もちろん、そんな凄い性能の魔道具はソコラにない
でも、ルアの店にはそんなレベルの魔道具がゴロゴロしている
そして、それらはルアの魔力登録がしてあって
ルア以外の誰にも触れないし、使えないらしい
ルアの祖母にそれだけの伝手があったらしいのだが
ルアの祖母が一人残るルアを心配して
出来得る限りの護りを残そうとした気持ちは理解できた。




