出会い_1
彼、サーノこと、佐野明人を私が見つけたのは本当に偶然だった
その日、店で使う一部のハーブを切らして
夜の仕込みの前にと日が陰り始めた中、急いで町の外へ出た
ここらはダンジョンがあるため、冒険者が多く
そのおかげで昼間に町のそばの森で魔物を見かけることはない
太陽が完全に落ちなければ、門前傍ならウロウロできる程だ
さすがに闇に支配されれば、
武力を持たない者が結界のない町の外にいるのはもちろん自殺行為だ
だから、その日、私は急いでいた
でも、見つけてしまった
いかにも、事故にあいました、というような風体で
でも、ここらでは決して見ないような、しっかりした服を着た男を
いつも通りに対応するなら
町の外で人が倒れている状態を見つけたなら
門前の衛兵にそのことを告げるだけで終えただろう
でも、男の恰好に私はそれを躊躇した
迷いは一瞬、覚悟を決める
万が一の備えであるポーションを男の傷にかけ
かすかに反応を示した男に残りを飲ませる
まだ、朦朧とした様子の男の上着をはぎ取り、
真っ白なシャツを肘までまくり上げ、万が一のため
首元を広げ、そこらの泥で汚す
シャツ同様、ズボンと靴をなるべく汚すとマントを被せ
何もしゃべらないで、と言い聞かせ、門に向かう
門兵に私の商業カードを見せ
知り合いの行商が殴られ、周りに荷物もなく捨て置かれていたと
血がべったりはりついた頭部を見せる
門兵は手順通り、罪過の水晶を触らせ、白い光を確認すると
入門税を払わせ、普通に通してくれた
そのまま、店兼自宅に戻ると
ようやく緊張から力んでいた全身から無駄な力が抜け
男を壁際にある長椅子に凭れ掛かすように座らせる。