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日常_3


「これは昨日説明した迷い人が、

後に現れるだろう同胞のために書いたこの世界の手引書、のようなものなの」


その紙束は当たり前だが、私にも読める


この世界の種族や民族、風習、宗教、環境といった基本的な

ここで生きていくために抑えておくべきことから始まり

魔法についての概要や

身に降りかかる可能性のある

元の世界では考えられないような危険についての警告まで幅広い


特に、身分制度というものについての考え方をよくよく理解するように

注意している点が目立つのは、かの人が惑ったことだからなのだろう



ザっとでも全部読めば、

数か月はかかるだろうソレを男に預け、私は言う

「とりあえず、コレを読んでみて

書いた迷い人とは時代も違うし、相違点はあるけど

大まかでは間違っていない


この世界を把握するにはいい材料だから

理解するためにも一度読んでみて」



コクリと頷いた男だが、部屋に下がろうとしない


それどころか、アワアワと

身振り手振りを使って何かを訴えようとしているが

中々伝わらない


時間をかけ、お互いに何とか意思疎通をすると

要は、何か手伝わせてくれ、ということらしい



だが、男を表に出すことはできない


現状では誰かに存在を認知されることすら危ういと言える


魔力視というのは、珍しいスキルではあるが

この町、バルトクーラに関して言えば、そうとも限らない


ここにはダンジョンがあり、

冒険者としても、また、その冒険者を対象とした商売のためにも

魔法使いが多くおり、魔力視やそれに類する能力を持つ者も

たぶん、少なくない


だから、男の魔力が塗り替わるまで決して誰にも会ってはいけないのだ



それでも、申し訳なさそうに身を縮める男を見れば

何もしなくていいとは言えない


なので、私は考えた

「じゃあ、とりあえず、生活訓練ついでに家事、覚えましょう」

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