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第六章 栗垣知子の偽物現れる

ある日、同級生の明子から着信があった。

「静子、ちょっと聞きたいんだけれども、超一流バレーダンサー栗垣知子って静子の事だよね。」と確認された。

「そうだけれどもどうしたの?明子。何かあったの?」と心配していた。

「実は、毎年わが社で、お得意様を招待してパーティーを開いて歌手など呼んでいるけれども、今年は今注目されている超一流バレーダンサー栗垣知子を呼ぶことにしたのよ。インターネットで栗垣知子のホームページを総務が見つけて、そこに記述されているアドレスをクリックしてメールで依頼すると、すごい金額を要求されたそうなのよ。それって本当なの?」と確認された。

「明子、私がパソコン音痴なの知っているわよね?私個人のホームページなんかないわよ。」と指摘した。

「嘘でしょう?静子はパソコン担当として入社したのではなかったの?」とパソコン音痴なのは昔の話で信じられない様子でした。

「そうだけれども、業務はエクセルやワードで資料やデーターを入力するだけの単純作業だったわ。だから、エクセルやワードの特訓をしたのよ。」と疑問に答えた。

「特訓はどうでもいいけれども、結局、栗垣知子のホームページはないの?」とパソコンの話になったので主題に戻した。

「だから、そういっているじゃないの。私が所属する大日本食糧のホームページの中に栗垣知子のページがあるのよ。バレーダンスと食料とは特に関係ないから、ほとんどの人は見つけられないようね。それ、詐欺よ。警察に通報して。確信が持てないのだったら、明子なら会社の人と直接大日本食糧に来てもいいわよ。」と栗垣知子の名前に傷がつかないように、詐欺の被害が大きくなる事を防ごうとした。

明子は驚いて、「わかったわ。ありがとう。すぐ上司に報告するわ。」とお礼して電話を切った。

    **********

明子は慌てて会社の上司に報告した。

「上村部長!栗垣知子は私の親友なので、バレーダンスの依頼料が異様に高額な事を携帯で直接本人に確認しました。栗垣知子のホームページはないそうです。信用できなければ、私なら会社の人と職場に直接きても良いよと言っていたので、アポをとって行きましょう。都合のいい日を教えてください。栗垣知子は顔が名刺のようなものだから、会えば本人だと判明するわ。納得すれば、インターネットのホームページは詐欺として警察に通報すればどうですか?そこで、バレーダンスの依頼は本人に直接しましょう。」と進言した。

その後、上村部長は経理が予約金を振り込もうとしていたためにストップさせて、総務部長に事情を説明した。

総務部長は、「それは本当ですか?わかりました。常務に報告して今後の対応を相談します。」と驚いていた。

総務部長が常務の指示でスケジュール調整して、明子と部長と常務と総務部長の四人で、私を訪ねてきた。

名刺交換して、そこで私がそんなホームページはないと断言して、ホームページは大日本食糧の中にあるとノートパソコンを操作しながら教えた。

「総務が見つけたホームページとは別だ。本人が言うのだから間違いない。」と明子たちは納得した。

明子から、会社のパーティーで踊ってもらいたいと依頼された。

「明子の頼みだと断れないわね。いつなの?スケジュールを確認して可能だったら、引き受けるわ。」と返答した。

現在日程調整中で、後日総務部長から連絡する事になった。

    **********

明子たちは帰りに警察に立ち寄り詐欺として通報した。

警察で対応するとの事でしたが、今回の場合、詐欺罪は成立しないそうだ。

なぜ詐欺にならないのか不審に感じて警察官に確認した。

「詐欺罪は、金品などをだまし取られて成立します。あなたがたは途中で詐欺だと気付いて通報したために金品はだまし取られていません。詐欺罪は成立しません。詐欺未遂ですね。私たちは、ほかに被害者がいないか確認して、被害者がいれば、そこで初めて詐欺罪として捜査できます。」と説明された。

「被害者がいなければ何もしないのですか?」

「ホームページを削除して、栗垣知子さんに名誉棄損で告訴して頂く事になります。」

「詐欺未遂として捜査できないのですか?」とだまされそうになったので不満そうでした。

「これは詐欺だけではないでしょう。例えば、人を殴ろうとして握りこぶしを振り上げただけでは暴行罪は成立しません。同じ事です。実際に被害はなかったので、お金の動きがなく詐欺を証明できません。ただの冗談だと惚けられたら終わりです。先ほど説明したように名誉棄損で告訴するまでです。」と説明された。

この件は専門家の警察に任せる事になり、私たちは帰った。

    **********

帰社後、明子は栗垣知子の親友なので、パーティーのバレーダンス関連の責任者に任命された。

パーティー当日、何が必要かなどの打ち合わせを行い、その準備に追われていた。

パーティーでは歌手のほかに、今話題になっている超一流バレーダンサーの白鳥の湖を鑑賞できてお客様は喜んでいた。

その解説を静子から聞いて、栗垣知子が踊る前の紹介で明子が説明した。

「優雅に踊る白鳥とは対照的に、悪をイメージした黒鳥があります。踊り方が異なるために、以前は違うバレーダンサーが踊っていましたが、現在では、その対照的な踊りを一人で踊り分けられるバレーダンサーが一流だと言われています。みなさんも、その踊りの違いを鑑賞してください。ちなみに、白鳥も黒鳥も栗垣知子が踊ります。」と説明して、栗垣知子が白鳥の湖を踊り始めた。

やがてパーティーも無事に終わりお客様も帰った。

    **********

後片付けをしていると社長がきた。

「石田君、バレーダンスの前の君の説明がよかったと、お客様から高評価を受けました。確かに黒鳥の踊りは優雅とはいえなかった。優雅に踊る白鳥とはくらべものにならない。同じバレーダンサー、それも栗垣知子が踊っているとは信じられいと仰っていた。あの説明を聞かなければ別人だと思っただろうとの事でした。私も今話題のバレーダンサーに興味があり鑑賞していました。確かに私もそう感じました。あの内容は前もって調べたのかね?」と感心していた。

「いいえ、静子に教えて頂きました。」と説明した。

「静子とは誰だね?」

「あ、申し訳ございません。静子は栗垣知子の本名です。」と説明した。

社長は、「事前打ち合わせで教えて頂いたのかね?それにしても、なぜ本名を知っているのだね?」

「静子は私の親友よ。」と説明していると、総部部長が来た。

    **********

「社長、例のホームページの件、石田君が栗垣知子さん本人に直接確認して詐欺だと発覚しました。石田君のおかげで詐欺に引っかからずに済みました。高額でしたが、栗垣知子さんは超一流のバレーダンサーなので当然だろうと予約金を振り込む寸前でした。警察が動いてくれたようで、そのホームページは削除されていました。」と明子に感謝していた。

「それはお手柄でしたね。しかし、栗垣知子さんが妖精だとの噂がありましたが、栗垣知子さんが踊り始めると、お客様全員の動きが止まり、栗垣知子さんに注目したのには驚きました。私も一瞬、妖精が舞い降りたのかと感じましたよ。」と社長に褒められた。

帰宅後、総務部長の話を静子にラインで伝えた。

その後、静子とラインでやり取りした。

「ということは、私が劇場で踊っている入場料を倍額にしても、お客様は来てくれるのかしら。毎回、入場できないお客様がいて、入場料値上げの話もでているのよ。」と明子に意見を求めた。

「当たり前じゃないの。栗垣知子のバレーダンスは超一流なので、値上げしても大丈夫だよ。前売り券はすぐに売り切れて、当日券目当てに何時から並んでいると思うのよ。妖精を一目見たくて徹夜で並んでいるのよ。前売り券をインターネットで入手するために、スペックの高い高額なパソコンを購入するファンも少なくないのよ。」

「社内でもそんな話があるけれども、なかなか検討する時間がなくて・・・」と相談した。

「静子の事だから、時間があってもさぼっているから検討する時間がないのでしょう。栗垣知子の大ファンは大勢いるわ。急に値上げするのではなく、一度相談すればどうなの?栗垣知子としては安いといっても、他のバレーダンサーと比べても結構高額よ。」

「ファンにどうやって連絡するのよ。メディアで発表すればファンが一斉におしよせて収集つかなくなるよ。」と具体的にどうするのか疑問でした。

「静子が学生時代にバイトしていたパブに、大ファンが集まっているそうよ。何でもオーナーが栗垣知子の名付け親で、以前、ここでバレーダンスを踊っていたとPRしているそうよ。」

「栗垣知子はパブのオーナーの死んだ恋人の名前よ。」と栗垣知子の名前の由来を説明した。

「えっ!?そうなの?それは初耳よ。名前の由来はわかりました。話を元に戻すと、バレーダンス修行中の女学生が栗垣知子にあやかりたくて、そのパブでバレーダンスを踊っているそうよ。修行だから出演料は無料だそうよ。オーナーは女学生に、お客様の前で踊る場所を提供しているだけのようね。バレーダンスを踊れば仕事として残業代でるのでしょう?」

「わかったわ。一度オーナーに連絡してみるわ。」

    **********

久しぶりに、オーナーに連絡した。

劇場入場料値上げの件などいろいろとファンに相談したいので、パブの営業時間にお忍びで一度御伺いしたいと依頼した。

オーナーは、「栗垣知子が来れば踊ってくれると期待される。踊ってくれないか?そのあとで、栗垣知子の大ファンを紹介するよ。栗垣知子が踊ってくれると事前に連絡すれば、何をおいても必ずくるよ。」と依頼した。

「そうね。栗垣知子はオーナーの恋人だから当然引き受けるわ。」と交渉成立した。

オーナーは早速、お得意様に、「栗垣知子さんが来月二十日、お忍びできて、久しぶりにここで踊って頂けます。その後、お話する時間もあります。この事は内緒にしてください。でないと大混乱して栗垣知子さんは踊らずに帰ってしまいます。」と連絡した。

張り紙などすれば、一般客も大勢来て大混乱する事が予想されるために、お得意様で栗垣知子の大ファンにだけ伝えた。

口頭で伝えれば、近くの客に気付かれる可能性があるために、メモをそっと渡した。

当日、以前のようにパブでバレーダンスを踊り、その後、ファンや、その日バレーダンスを踊る予定だった女学生などと雑談した。

しばらく雑談して、劇場入場料値上げの件を相談した。

ファンたちは口をそろえて、「現在の入場料は、他のバレーダンサーより高額ですが、栗垣知子としては安すぎる。妖精を見られるのだから、倍以上にしてもおかしくない。しかし急に値上げするといろんな噂が広がる可能性がある。何か理由をつけて一割程度値上げすればどうでしょうか?その後、物価高騰など何か理由がある毎に一割程度値上げすることを勧めるよ。」との意見が多かった。

その後、ファンと握手や雑談やサインをしていると、やがて閉店時間になり、お客様も帰った。

    **********

私も帰ろうとしているとオーナーから、定期的にここで踊ってほしいと依頼された。

私はスケジュールを確認して、後日連絡すると前向きの返答をして帰宅した。

帰宅後、ラインで明子に相談した。

明子から逆に、今回のような相談事は、どの程度の頻度であるのか確認されて、その間隔で引き受けて、いろんな事を相談すればどうかと勧められた。

翌日出社して、今までの資料をいろいろと調べた。

大きな問題はほとんどないが、小さな問題はいろいろとあった。

いろいろと考えて、問題になる前に雑談で解決すれば良いと考えて、毎月一回程度と考えた。

オーナーに連絡した。

「栗垣知子の発祥の地なので、毎月一回程度を目処にして検討させて頂きます。毎月スケジュールを調整して連絡します。」とオーナーの期待に応えた。

「毎月踊ってくれるのは嬉しいが、年一回程度と考えていた。金銭的に、超一流バレーダンサーを毎月依頼する金銭的余裕がない。」と、出演料の話になった。

「私とオーナーの仲なので、当時の学生アルバイト出演料でいいわよ。」と私もいろいろと相談したかったので、当時の価格で提案した。

「本当にそんな出演料でいいのか?」と喜んで了承された。

    **********

私が出演する日には、多くのファンがパブにきた。

なぜ、栗垣知子が来るとPRしないのか不審に感じたお客様からオーナーが確認された。

「それは栗垣知子さんからの依頼です。このパブは栗垣知子さんの発祥の地なので、当時の出演料で毎月出演したい。場所的に劇場のように広くないので、次回出演日はお客様に伝えるだけにしてと依頼されたので。」と返答した。

その日にパブにいないと気付かないと判断したお客様は、栗垣知子が出演する以外の日にもパブにくるようになり、そのパブは大繁盛した。

近くのバーやスナックからも、踊る場所を確保するので是非きてほしいと依頼された。

「今更、どの口がそんな事を言うの?数年前、私がそこでバイトでバレーダンスを踊りたいとお願いした時は、話も聞かずに断ったのは誰よ。今、踊っているパブのオーナーだけが私のバレーダンスの実力を認めて、そこで踊っていたのよ。バレーダンスを見る目がない人のところで踊っても無駄だわ。だから、今もそのパブで、当時の学生アルバイト出演料で踊っているのよ。」と断った。

「えっ!?あなたは、あの時の・・・」となぜ、超一流バレーダンサーを毎月呼べるのか疑問だったが、今の説明で納得して、当時の事を思い出して後悔している様子でした。

やがて、週末の劇場公演は第二土曜日に固定されたが、パブでの踊りは、お客様が集中しないように不定期に変えていた。

ファンの意見はパブで聞いて、他のファンの意見も、いろいろと聞いてきてくれたので、ファンの希望に沿った活動ができて人気もますます上がった。


次回投稿予定日は、2月2日を予定しています。

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