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第五章 専属バレーダンサーの契約する

その数日後、中西課長と私と総務部長が社長室に呼び出された。

社長が、「君、本当に栗垣知子なのかね?」と超一流バレーダンサーが身近にいるとは信じられずに確認した。

私はメガネとヴィックを外して笑顔で社長に対応した。

社長から、「本当に栗垣知子だ。君が超一流バレーダンサーの栗垣知子だとは驚いたよ。この事は秘密にするので、今後、各種イベントなどに協力して頂けませんか?」と依頼された。

中西課長が、「イベントとは具体的に、展示即売会などですか?そこでバレーダンスを踊るイメージが浮かびません。社長は何を考えておられるのですか?」と確認した。

社長は、「いままでの展示即売会などで、お客様に記述して頂いたアンケートを分析した。子供がいれば行動が制限される。子供を一時預かってくれる場所がほしいとの意見が多かった。競合他社との差別化を考慮してバレーダンス教室を同時開催すれば、小さな女の子がいるお客様は来て頂けると思います。少し大きな女の子がいれば、逆に親を連れてきてくれると思います。教室といっても、一時的な事なので、本格的なものではなくバレリーナ体験のようなものでいいと思います。ただ、指導が栗垣知子だとPRすれば効果覿面だと思います。」と私に何をさせようとしているのか伝えた。

「社長、それだとバレーダンス教室ではなく、栗垣知子が指導するバレリーナ体験とPRすればどうですか?」と提案した。

社長は、「それもそうだな。よし、それで行こう。」と乗り気で、次回のイベントから実施される事になった。

中西課長は、「小さな子供たちを私たちに預けられると予想されます。熊川君はバレリーナ体験を担当していますので、その間女の子たちがケガしたり、外に出て迷子になったりしないように社員数名でその子供たちを見守る必要があります。可能であれば他部署の女性社員数名協力願えれば助かります。」と当日他部署の女性社員をスムーズに借りられるように社長に体制を整える依頼をしておいた。

社長は孫娘にバレリーナの体験をさせたくて、理由をこじつけた様子でした。

総務部長が、「予約を取るにも困難な超一流バレーダンサーにそこまで協力して頂くと、社内だけではなく社外でも、脅迫など何かあるのではないかと噂が広がる可能性があります。ここは不信感を抱かれないように、栗垣知子さんと専属バレーダンサーの契約を結ぶ事を提案します。」と助言した。

定期的に、専属契約の入金が期待できるために了承した。

社長も了承して総務部長に、弁護士と契約に関して相談するようにと指示した。

中西課長が、「栗垣知子がバレーダンスを踊っている間、他の社員がなぜパソコン入力はしないのかと不審に感じる可能性があり、熊川君の負担を減らすためにも栗垣知子の専属マネージャーになって頂くことを提案し配置転換希望します。そうすれば彼女は栗垣知子の事だけを考えればいい事になります。」と進言した。

全員納得して、それぞれ社長室を退出した。

    **********

課長が部署内で発表した。

「わが社は、超一流バレーダンサーの栗垣知子さんと専属契約を結ぶ事になりました。皆さんも知っているように、栗垣知子さんは熊川静子さんと仲が良く、お互いの事は知り尽くしています。栗垣知子さんからの指名でもあり、わが社と専属契約を結ぶ条件でもありますので、今後、熊川さんに栗垣知子さんのマネージャーになって頂きます。栗垣知子さんが劇場などでバレーダンスを踊れば入金が発生するため、今後、熊川さんは営業社員に転属になります。この事は明日社長から正式に発表されます。発表前に皆さんに伝えたのは、マネージャー業務準備のため、パソコン入力業務は本日までで、明日から栗垣知子さんのマネージャー業務に就きます。急な話でみなさんも何かと予定があると思いますので早めに伝えました。社長発表まで、この事は極秘でお願いします。」と説明した。

ある社員が、「今後、パソコン入力は誰がするのですか?」と確認した。

「新たに、パソコン入力補助職員を採用します。それまで皆さんには負担を掛けますが、よろしくお願いします。」と協力依頼した。

私はバレーダンス関連の責任者に抜擢され、パソコン入力補助職員から営業社員に転属になった。

補助職員ではなくなったので給料もあがった。

私の正体を知った社長の指示で少し多いようだ。

引き抜き防止だとか、特殊能力があるだとか、天使だとか色々と理由をつけたようだ。

ばれないように他の社員と給料の話は避けた。

私の社内での立場は栗垣知子のマネージャーになったので、社内で堂々と栗垣知子のバレーダンスの話をしても誰も不審に思わなくなった。

パソコン入力補助職員として、以前、私に苦情を訴えた、パソコンに自信のある女性に決定した。

    **********

中西課長から、再度正社員にならないか打診された。

私が断る理由にしていたアルバイトは、劇場などでバレーダンスを踊っている事だったら、それも業務の一環にするように助言された。

劇場でバレーダンスを踊る事も仕事の一環にすると、劇場公演の収益は、私個人に入るのではなく会社に入る事になる。

正社員の給料のほかに専属バレーダンサーの契約料も定期的に入金されるので、それでもいいと判断して了承した。

劇場でのバレーダンスは、今までプライベートのアルバイトだったが、今後、業務の一環にすれば、勤務時間中に堂々と打ち合わせや準備が可能になる。

少し時間が空けば、栗垣知子との打ち合わせだと称して喫茶店でさぼっていた。

偶然社員に見つかれば、打ち合わせは終了して栗垣知子は帰ったと告げた。はっきり言って体力的には楽でプライベートの時間も増えて喜んだのも束の間。うっかりとその事を母に喋ったために、その時間に母からバレーダンスの特訓をされる事になった。

    **********

社内では、根暗な私に栗垣知子のマネージャーが務まるのかとの噂が広まり、栗垣知子の正体がやがてばれた。

正体がばれると、いままで栗垣知子との打ち合わせだと称して喫茶店でさぼっていたが、今後できなくなる。

正体がばれたので、根暗なださい女を演じる必要がなくなった。

私が出勤する様子を見て最先端のファッションに社員たちは驚いた。

私はファッションに敏感ではなかったが、栗垣知子が時代遅れのファッションで出勤できないので、ファッション誌などで色々と研究した上でブティックの店員と相談して、それなりの服装を購入して出勤した。

毎日、同じ服装で出勤できないので、定期的に服をブティックで購入していた。

ファッションに鈍感な私は、いろんな意見を聞きたかったので、いろんなブティックで意見を聞きながら服を購入していた。やがて、行きつけのブティックができた。

これからはファッションにも気を付けないと栗垣知子の名前に傷がつく。

今月は服装以外にも、各種小物なども色々と購入したので出費がかさみ赤字だ。

今まで使っていた服は、お忍びで外出する時に使う事にした。

    **********

社長がバレーダンスに興味があるため、社内にも興味を持っている社員が多く、私は社内で妖精さんと呼ばれて人気者になった。

社長の指示で、社内に同好会バレーダンス部が新設されて、勤務終了後、入部した女性社員に、バレーダンスをはじめいろんな踊りを指導した。

やがてわが社のバレーダンス部は、専属契約を結んでいる栗垣知子が指導しているとのうわさが広がり、バレーダンスに興味のある女子学生が入社希望してバレーダンスのレベルもあがり、栗垣知子軍団と呼ばれて全国的に有名になり、毎年何人かはプロのバレーダンサーとしてデビューしていた。

他人の事だけではなく、私自身も色々と変わった。

私は週末の劇場でバレーダンスを踊っていた。

その日は休日出勤扱いになり平日に代休をとっていた。

中西課長から、毎週休日出勤や代休の届を出すのも大変だろうからと、私だけ休日を変更しようかと打診があった。

確かに大変だが、休日を変更すると休日の曜日が固定される。届を毎回提出すれば休日の曜日は毎回変更できる。

銀行に行ったり歯医者に行ったりする予定がある時は便利だ。

「私だけ特別扱いされるのは気が引けます。」と休日変更の件は断った。

中西課長の本音は、私のその届を受理して処理するのが大変だからだったが、それを表にだせずに仕方なくあきらめた。

平日は会社関係で、バレリーナ体験などを行い、そのスケジュールや準備などに振り回されて、週末の劇場公演の打ち合わせや準備もあり、さらに社長が立ち上げた、会社内部の同好会での指導もあり、多忙な会社生活を送っていた。

    **********

バレーダンスのレッスンは、両親の特訓だけで充分なので、少し時間が空けばバレーダンスのレッスンだと称して喫茶店でさぼっていた。

やっと仕事が終わり、帰宅してゆっくり休めるかと思えば両親のバレーダンス特訓が待っていた。

帰宅後も両親の特訓があり、ゆっくりと休めないので勤務時間中に休憩しているのだ。決してサボッているわけではない。勤務時間中だから給料が発生する。やはりサボッている事になるのだろうか。

そんな事はどうでもいい。毎回代休届を出すようにしたのは便利な事もあったが、それ以外に、両親が仕事で不在の日に代休を取得すれば、その日は、ゆっくりと休めるからだ。


次回投稿予定日は、1月26日を予定しています。

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