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第四章 忘年会でバレーダンスを踊る

私たちの部署の発表順番は野田修二が、「どうせ練習もしていないから、たいした事はないだろう。真面目に練習していた部署を優先するのは当然だろう。お前たちのような不真面目な部署は最後だ。」と幹事に依頼して、私たちの部署の発表は最後になった。

他部署の発表が終わって最後に私たちの部署が発表した。

他部署の社員が、「自信たっぷりの踊りを見せてもらおうか。時間がないから途中までだ。」と修二が中心になりヤジを飛ばしていた。

まさか、超一流バレーダンサーが踊っているとも知らずに、「おっ、衣装だけは本格的だな。馬子にも衣裳とは、よく言ったものだ。衣装でごまかすな!」とヤジを飛ばしていた。

ヤジを飛ばしている社員が少なくなってきた。

修二は、「みんな、どうした。急に静かになってなに真剣に見ているんだ。」

「いや、まるで妖精のようで、この世のものとは思えない。」

プロ級の素晴らしい踊りだったので社長が、「野田君、こんな素晴らしい踊りを最後にして途中までだとは何を考えているのだね?踊りだけではなく彼女の指先やつま先を見ろよ。先ほど誰かが言っていたように、まるで妖精だ。一流バレーダンサーじゃないのか?」と修二を睨んだ。

「いや、特に練習している様子がなかったので、たいしたことはないと思ったものですから・・・」と慌てていた。

「こんな素晴らしいバレーダンスを踊れるから専用のバレーダンス場があり、そこで練習していたんだろう。きっと名のあるバレーダンサーじゃないのか?」と誰が踊っているのか気になりバレーダンサーに注目した。

やがて、栗垣知子だと気付いた。

    **********

「栗垣知子じゃないか!」と自分の目を疑っていた。

ヤジを飛ばしている修二にマイクを取って、「野田君、静かにしろ!踊っているのは超一流バレーダンサーの栗垣知子だ。静かに、超一流バレーダンサーの妖精のような踊りを鑑賞しろ!時間がないと言っていたが延長しろ!最後まで鑑賞しろ!こんなチャンスは二度とないぞ。栗垣知子のバレーダンスを鑑賞するのにいくらかかると思っているのだ!数千円ではなく数万円だぞ。」と警告した。

社員たちは酔いがさめて急に静かになった。

栗垣知子のバレーダンスを最後まで鑑賞したい社長は幹事に、時間延長を宴会場と交渉するように指示した。

他部署の社員たちは、たまたま栗垣知子のパンフレットを持っていた社員のところに集まって確認していた。

「確かに栗垣知子だ。彼女は超一流バレーダンサーで予約もなかなか取れない。そんな彼女が何故一般企業の忘年会で踊ってくれるのだ?」と驚きを隠せない様子でした。

総務部長が、「そういえば、栗垣知子さんは熊川静子君に頼まれると断れないと言っていたが、まさか、熊川君が頼んだのかね?」とそれしかないと考えて確認した。

中西課長が、「そのまさかですよ。わが部署の熊川さんが依頼すれば、栗垣知子さんはなんでも引き受けて頂けます。」と鼻高々に自慢していた。

総務部長は、「やはりそうか。ところで熊川君はどこですか?その話を聞きたいですね。」と捜していた。

超一流のバレーダンサーが、一般企業の忘年会に参加して頂けるとは考えられず、脅迫など何か問題はないか心配して確認したい様子でした。

中西課長は、「えっ?あっ・・・、あの~、実は、栗垣知子さんがバレーダンスを踊る条件は、熊川さんを栗垣知子さんにつける事でしたので、ここにはいません。」と慌てていた。

脅迫するために、ぴったりとついているような気がした。

やむを得ず社長に相談する事にした。今は社長も栗垣知子に釘付けなので、後日相談する事にした。

    **********

幹事が時間延長を交渉した。

宴会場スタッフも、栗垣知子のバレーダンスを途中で中止させたと噂が広がると困るので時間が延長になった。

私用がある社員もいたが、社長が栗垣知子に釘付けで他の社員に、「こんなチャンスは二度とない。皆さんも超一流ダンサーの踊りを鑑賞しなさい。」と促していた。

どうしても外せない用事がある社員は理由を説明して帰宅したが、それ以外の社員は雰囲気的に帰れなかった。

他の社員たちは、「野田!お前がつまらんことを幹事に要求するから時間通りに帰れなくなったじゃないか!どうしてくれる!」と苦情を訴えていた。

修二はいまさらどうにもならず、「アハハハハ・・・」と笑ってごまかしていた。

やがて、栗垣知子のバレーダンスも終わった。

気のせいか野田修二を困らせるためか、少し長かったように中西課長が感じて熊川静子に確認した。

その結果、中西課長が感じたとおり、フルバージョンでテンポは少し遅めに設定していた。簡易バージョンで少しテンポを速くすれば延長なしで時間内に終わっていた事が判明した。

幹事が忘年会終了宣言をして、最後に社長に閉めの挨拶を依頼した。

その間に私は着替えて、熊川静子として宴会場に戻った。

社員たちは、「女房、子供に合わせる顔がない。」とか、「浮気を疑われる。」などと野田修二に苦情を訴えながら帰った。

週初めに出勤した。

午前中、役員・社長で忘年会の出し物の評価をして、午後に結果が発表された。

私たちの部署の出し物が栗垣知子の白鳥の湖だったので、他部署で女子社員に白鳥の湖を躍らせた部署を大きく引き離して、社長は無料で栗垣知子のバレーダンスを間近で鑑賞できたと大喜びしていた。

宴会幹事が収支報告書とコメントを社内で回覧した。

そのコメントには、宴会が延長になり延長料が必要になりました。あの宴会場は舞台もある高額な宴会場の上、宴会場スタッフの残業代が上乗せされて、通常より高額になりました。その結果、新年会の予算がなくなり中止するとの事でした。

そのコメントを見て全社員から修二に、「延長料はお前が支払え!おかげで新年会が中止になったではないか!」と苦情が相次いだ。

修二は、このままだと下田義三と同じ運命をたどり、延長料を支払う羽目になると焦って、各部署に頭を下げて謝っていた。

その後、私は課長に、「私たちの仲を疑う社員もいますので、このようなお話は今後、控えて頂けませんか?」とお願いした。

中西課長は、「会社関係以外だったら問題ないですよね。私の弟が君の大ファンだと先日伝えた。個人的に踊りを披露するような広い場所は確保できない。せめて、弟の誕生会に出席していただいて、握手や雑談など弟のお相手をお願いできませんか?弟に話をしておくよ。」と頼まれた。

今後、中西課長の会社以外の交友関係に振り回されそうだと嫌な予感がした。

    **********

ある日、総務部長がきた。

中西課長が会議室に呼び出された。

「予約するのも困難な超一流のバレーダンサーが、一般企業の忘年会で踊ってくれたので社長も喜んでいたが、その後、なぜ踊ってくれたのか疑問に感じて問題になっています。熊川君と君と栗垣さんはどんな関係なのですか?脅迫など問題があるようなら君を移動させる話もでています。」と確認された。

「わかりました。確かに、私しか知らない事があります。部長は職務柄、熊川君や栗垣さんに携帯で連絡する事もありますよね。」と確認した。

「それはあります。私個人の携帯ではなく、会社から貸与されている携帯ですがね。それとこれと、どういう関係があるのだね?」と不思議そうでした。

「今、説明します。さすがに全社員の電話番号は携帯に登録していませんよね?毎年更新するのが大変だから。しかし、栗垣知子さんの携帯番号は登録されていますよね?」と携帯の登録状況を確認した。

「確かにそうだが、君、話題をすり替えて逃げようとしてないか?」と不信感を抱いた。

「決してそんな事はありません。部長に直接確認して頂こうとしただけです。先日社員名簿から熊川さんに電話していましたが、携帯の履歴に名前はどのように表示されていますか?」と確認した。

総務部長は、「熊川君の携帯番号は登録していないので、名前は表示されずに電話番号が表示されるだろう。私に何を確認させるつもりかね。」とポケットから携帯を取り出して確認していた。

総務部長は、「えっ!?栗垣知子になっている。なぜだ?」と怪奇現象が起こったような顔をしていた。

中西課長は、「部長、怪奇現象が起こったような顔ですね。それでは、私がその怪奇現象を解き明かしましょう。二人の携帯番号は同じだからですよ。栗垣知子の本名は熊川静子です。つまり、うちの部署の熊川さんが栗垣知子です。一部の社員が、忘年会の出し物に部外者を使うのは卑怯だとささやかれていますが、栗垣知子はわが部署の社員で部外者ではありません。マスコミなどに追いかけられるのがいやで、わざと根暗な、ださい女を演じているだけです。彼女は決して根暗なださい女ではありません。この事を黙っているかわりに私の依頼でバレーダンスなど、いろいろと協力して頂いています。」と説明した。

総務部長は、「それは君の指示でバレーダンスを踊らなければ正体をバラすと脅迫しているともとれますね。」と確認した。

中西課長は、「それは、熊川君が課長の力になりますから黙っていてほしいと依頼されたので協力して頂いているだけです。」とそんな依頼はされてないが、何とかごまかそうとした。

「わかりました。」と総務部長も納得して帰った。


次回投稿予定日は、1月18日を予定しています。

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