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アイリーン侯爵令嬢が王太子殿下に婚約破棄されるって本当? 浮気相手はいる? 本名は何? 調べてみました

作者: nullpovendman

『アイリーン侯爵令嬢が王太子殿下に婚約破棄されるって本当? 浮気相手はいる? 本名は何? 調べてみました』


 アイリーンがふと思い立って、情報検索するサイト“アーカル”で自分の名前でエゴサをしてみたところ、真っ先に表示されたサイトがこれだった。


「え? なんですの? このサイト」


 アーカルはアカシックレコード(すべてが記録されているといわれる概念的なもの)にアクセスして情報を抜き出し、表示するという画期的な発明である。

 大賢者がこれを作ったおかげで、魔法世界にもIT革命が起こった。

 アーカルは独自の検索方法が実装されており、サイトとして公開されている情報を関連度に合わせて表示しているらしい。


 アイリーンは、婚約者のエドヴァルド王太子殿下が火遊びしても咎めることなく、広い心でどっしりと構えていた。

 政略結婚であるから愛がなくても仕方ないし、王太子殿下には影と呼ばれる監視がついているから、間違いが起こることもそうそうない。


 ただ、婚約破棄するほどに本気で入れ込んでいる女性がいるとなると、少々変わってくる。

 独断で婚約破棄などしようものなら、王太子殿下が廃嫡される可能性がある。


「これは確認をしてみる必要がありますわね」


 アイリーンは、件のサイトを開いた。


 ====

『アイリーン侯爵令嬢の婚約破棄まとめ!』


 アイリーン嬢は侯爵令嬢で、エドヴァルド王太子殿下の婚約者。


 エドヴァルド王太子殿下とは最近不仲みたいだと最近話題です。

 婚約破棄も近いとの噂です。

 殿下は浮気をしているのでしょうか。

 浮気相手がいるとしたら、誰でしょうか?


 エドヴァルド王太子殿下はイケメンで家柄もいいうえ、浮名も多いですね。

 子爵家の令嬢や、男爵家の未亡人とも噂がありました。


 残念ながら、婚約破棄してまで結婚しそうな貴族令嬢は、調べてみましたがわかりませんでした。

 いかがでしたか?


 王太子殿下を狙っている方は多いですし、アイリーン侯爵令嬢の態度次第では、学園の卒業までに、もしかしたら婚約破棄までするかもしれませんね。

 ====


「……。なんでしたの? 中身がありませんわ?」


 最近は検索汚染により、こういったサイトが上位に表示されることが多くなってきたのだが、侯爵令嬢たるアイリーンは知る由もなかった。


 アイリーンは困惑したまま、“アーカル”でのエゴサを続けた。

 八番目に表示されていたのは、アカシックちゃんねる、通称“アちゃん”だった。

 さすがのアイリーンも、アカシックちゃんねるは、お便所のお落書きを寄せ集めたものであることくらいは聞いたことがある。

 悪鬼羅刹、魑魅魍魎が住んでいて、罵詈雑言が並ぶアングラなサイトであるため、積極的にのぞいてみようとは思わなかった。

 アイリーンのエゴサに引っかかったのは、ありとあらゆる実況スレジュピター、通称ありJのスレであった。


 ====

【王太子の婚約者】アイリーン侯爵令嬢スレ 98【浮気に寛容】


 39 名無しのお嬢様

 今日もアイリーンの目を盗んで王太子殿下といちゃついてやりましたわ!


 40 名無しのお嬢様

 >>39

 はいはい。ポーラ乙


 41 名無しのお嬢様

 >>39

 今日も湖畔でお茶してたの見たわ。たまげたなぁ


 42 名無しのお嬢様

 >>39

 到底許されることではないと思う


 43 名無しのお嬢様

 >>40

 特定するのやめてくださいまし!

 いや、わたくしはポーラじゃないですけど、ポーラって子はとっても美人ですわよね!

 王太子妃向きですわ!


 >>42

 バレなければセーフですわ!


 44 名無しのお嬢様

 むしろ自分でバラしてるんだよなぁ……


 45 名無しのお嬢様

 >>39みたいなのに浮気されても許しているアイリーン様まじぐうの音もでないほど聖女


 46 名無しのお嬢様

 それにくらべてポーラの残念さよ


 47 名無しのお嬢様

 >>46

 だから特定するのやめてくださいまし!

 ====


 どうやらポーラという貴族令嬢が浮気を自慢しているようだった。もちろん、お便所のお落書きなので、本当のことを書いているかはわからない。


 アイリーンは執事を呼んで確かめてみることにした。


「セバス! セバスはおりますの?」

「お呼びでしょうか、お嬢様」


 専属執事のセバスがどこからともなく現れた。


「ポーラという令嬢について調査してくださいな」

「かしこまりました。なお、すでに調べはついております」


 そう言うとセバスは一度部屋を退出し、書類を持って戻ってきた。

 セバスが優秀すぎてアイリーンはちょっと引いた。


 ポーラという令嬢がどこの誰で、いつ王太子殿下と密会し、“アちゃん”に何回、どんな書き込みをしたかまでが書類にまとまっている。

 アイリーンはドン引きしたが、気を取り直して、ふむふむ、と流し読みした。

 他の浮気相手と比べても殿下に対して積極的で、“アちゃん”にもアイリーンの悪口を大量に書き込んでいる。


「ちょっと度が過ぎていますわね。ポーラ嬢に慰謝料を請求しておいてください」

「かしこまりました」


 こうしてポーラ嬢は多額の金銭を支払うこととなり、彼女の実家は没落した。

 アイリーンが気まぐれでエゴサをしたことで、ポーラは身を滅ぼした。

 いかがでしたかサイトは特に役に立たなかったが、自ら悪行を書き込んでいたポーラの行いをお天道様は見ていたのかもしれない。

 悪いことはするものではない。



 なお、セバスがありJ常駐を日課にしており、常日頃アイリーンの悪口に対して開示請求をしていた、という事実だけは知られることはなかったンゴ。



 終わり


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― 新着の感想 ―
[一言] >いかがでしたか? 見るとイラつくこのフレーズ・・・! 最近はWordPressのテンプレが目に入った時点で回れ右ですわ
[一言] 「だから特定するのやめてくださいまし!」 「かしこまりました。なお、すでに調べはついております」 印象に残るフレーズが多く、スレがリアルで面白かったです! セバス有能だけど少し怖い(笑)
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