第二話 始まりの街
実質ここからが本編です!
目を覚ますと、見慣れた女が俺の顔を覗き込んでいた。
「お目覚め――」
「よーいドン!!」
さあ始まりました魔王討伐タイムアタック!実況はこの私、勇者がお送りします!
などとふざけるのはお約束。とりあえずベッドから飛び降り全速力で部屋から逃走!
目的地は王城の中央にある王座の間。
直線距離としてはそこまで遠くないけど、曲がり角や階段が多いから道順を間違えないよう脳をフル稼働しつつインコースを攻める。
結構な頻度で兵士やお手伝いさん的な人たちとすれ違うが、向こうが戸惑っている間に逃げてしまえば問題ない。
「王様!魔王の事は聞いたんで早く武器ください!」
と、いうことで着いたぞ王座の間ぁ!体感で前々回より五秒ぐらい遅い気がするけど巻き替えしゃぁいいんだよ!
白い髭をもっさもっさと蓄えた爺さんが驚いた顔でこっちを見てくる。
驚いてねぇでさっさとチャカよこせやゴラァ!
「な、何の――」
「勇者です!今女神さまからもう時間が無いってお告げがきたんですよ!」
あんたが『何の話だ』とか『お前は誰だ』とか言ってくるのは進〇ゼミでやったから知ってる。先にこう言えば大体納得してくれるのもな。
まあ女神のうんたらかんたらは嘘だけど。
とりあえず第一段階は好タイムでクリアしたから一度深呼吸。荒くなった息を整えクラウチングスタートの姿勢に移行する。
「勇者よ。お主に――」
「託されました!」
部屋の脇から進み出てきた男からヒノキの剣をひったくり、爺さんの話をぶった切りながら部屋を後にする。
次の目標はオークの森だ!待ってろよカモども!ヒャッハァ!
目覚めてから5分23秒経過
ちなみに王は
王「勇者よ。お主に人類の命運がかかっておる…!かの憎っくき魔王を…!どうか…!討ち倒してくれ…!!」
的なことを言おうとした。
もし全部聞いてたら約1分のロスですね。
・・・このぐらい聞いてやれよと思わなくも無い。